263 / 417
北海道旅行 編
三日目
しおりを挟む
「はー……」
「極楽、だな」
「です。個室露天風呂大好き!」
「おっ、じゃあ、次回の温泉旅行も個室露天で決まりだな」
「あっ、そういう意味じゃ……」
図らずも彼におねだりしているような言い方になってしまい、私は声を小さくする。
「いいんだよ。生きる金は使うべきだ。朱里と思い出を作るためなら、ジャンジャン使うから、頼ってくれ」
「もう……」
私はぷすっとむくれたフリをして、尊さんの腕を組み肩に頭をのせる。
でも、彼の愛情が嬉しくてすぐに微笑んだ。
「今日の夕方には東京にいるんだぜ。信じらんねぇ」
「ですねー」
返事をした私は、明日から仕事だと思うと、温泉から出たくなくなる。
「……でも、女子会楽しみだな」
春日さんとエミリさんとの約束を思い出すと、尊さんが微妙な顔になった。
「何を話すんだ?」
「んー、よく分からないけど……、恋バナ?」
「どこまで話すんだ? エミリがなかなかの性格をしているのは知ってるとして、あのお嬢さんが何に興味を示すかだな……。……女の下ネタはすげぇって言うし、……食われんなよ?」
尊さんはしみじみと言い、溜め息をつく。
「そこまで怖い事になると思ってませんけど……。うん、一応用心しますね」
「あと、俺らのベッド事情や過去については、お口チャックな」
彼は私の唇をつぅっとなぞり、軽く睨んでみせる。
「はい」
私も、彼との大事な事を話すほど、迂闊ではないつもりだ。
「タクシーで中心部に戻ったら……、カニ買って東京に送っておくか」
「やった! カニ!」
「タラバと毛蟹と、両方いっとくか。家のでかい冷凍庫なら保存できるから」
「尊さんだいしゅき!」
ガバッと抱きついて頬にキスをしたけれど、彼は私をしげしげと見て言った。
「……お前、いつか食い気に負けて誘拐されるなよ?」
「されません!」
思わず笑った声が、凜と澄み渡った冬の空気を震わせた。
**
またタクシーに乗って安全運転で札幌の中心部まで向かったあと、二条市場でカニやウニ、イクラ、トロを買い、冷凍で尊さんのマンションまで送ってもらう事にした。
そのあと地下歩行空間を使って札幌駅近くまで行き、ランチは『モリエールカフェ 降っても晴れても』で簡単なコース料理を食べた。
円山公園の側に星つきフレンチの『モリエール』があるらしいけれど、このカフェはそこの姉妹店らしい。
他にも東区にあるモエレ沼公園にも店舗があり、あとは道内あちこちにレストランがあるそうだ。
道産の素材にこだわった料理は、とても美味しかった。
泡がブクブクに立ったゴボウのポタージュから始まり、塩味が絶妙な帆立のフリットは、木の枝に載せられて出されるという、憎い演出だ。
そのあとはオリジナルのサラダ、バターまで美味しいパンに、メインは選べる中でまた牛肉を食べさせてもらった。
デザートも選べるなか、私はハスカップソースがかかったブラマンジェにしたけれど、その登場の仕方がまた映えた。
大きなお皿の上に松葉をふんだんにあしらい、その上にブラマンジェの入ったボウルが載っていて、スタッフがテーブルでよそってくれた。
「いちごジュース、めちゃ美味しかったです」
「そうか、そいつは良かった」
私たちはコーヒーを飲んでフィニッシュしたあと、建物の一階にある『六花亭』でしこたまお菓子を買い込んだ。
なにせ、『モリエールカフェ』は六花亭ビルの九階にあって、入る時もテンションが上がってしまって写真を撮ってしまった。
札幌駅に着いたあと、尊さんは例の知り合いと落ち合ってブツを受け取るらしく、私は大丸の地下で待つ事にした。
時刻はお昼過ぎだけど、出入り口付近にあるのがきっと例の人気のあるチーズのお菓子なんだろう。すでに売り切れになっていて、人気の凄まじさが伝わってくる。
尊さんは「すまん」と言ってすぐに戻り、例の人からよろしく伝えるよう言われたと、教えてくれた。
そのあとデパ地下を巡って『バターのいとこ』や『ショコラティエ・マサール』のブラウニー、きのとやの『札幌農学校』を買った。空港でもまだ買うつもりだ。
「極楽、だな」
「です。個室露天風呂大好き!」
「おっ、じゃあ、次回の温泉旅行も個室露天で決まりだな」
「あっ、そういう意味じゃ……」
図らずも彼におねだりしているような言い方になってしまい、私は声を小さくする。
「いいんだよ。生きる金は使うべきだ。朱里と思い出を作るためなら、ジャンジャン使うから、頼ってくれ」
「もう……」
私はぷすっとむくれたフリをして、尊さんの腕を組み肩に頭をのせる。
でも、彼の愛情が嬉しくてすぐに微笑んだ。
「今日の夕方には東京にいるんだぜ。信じらんねぇ」
「ですねー」
返事をした私は、明日から仕事だと思うと、温泉から出たくなくなる。
「……でも、女子会楽しみだな」
春日さんとエミリさんとの約束を思い出すと、尊さんが微妙な顔になった。
「何を話すんだ?」
「んー、よく分からないけど……、恋バナ?」
「どこまで話すんだ? エミリがなかなかの性格をしているのは知ってるとして、あのお嬢さんが何に興味を示すかだな……。……女の下ネタはすげぇって言うし、……食われんなよ?」
尊さんはしみじみと言い、溜め息をつく。
「そこまで怖い事になると思ってませんけど……。うん、一応用心しますね」
「あと、俺らのベッド事情や過去については、お口チャックな」
彼は私の唇をつぅっとなぞり、軽く睨んでみせる。
「はい」
私も、彼との大事な事を話すほど、迂闊ではないつもりだ。
「タクシーで中心部に戻ったら……、カニ買って東京に送っておくか」
「やった! カニ!」
「タラバと毛蟹と、両方いっとくか。家のでかい冷凍庫なら保存できるから」
「尊さんだいしゅき!」
ガバッと抱きついて頬にキスをしたけれど、彼は私をしげしげと見て言った。
「……お前、いつか食い気に負けて誘拐されるなよ?」
「されません!」
思わず笑った声が、凜と澄み渡った冬の空気を震わせた。
**
またタクシーに乗って安全運転で札幌の中心部まで向かったあと、二条市場でカニやウニ、イクラ、トロを買い、冷凍で尊さんのマンションまで送ってもらう事にした。
そのあと地下歩行空間を使って札幌駅近くまで行き、ランチは『モリエールカフェ 降っても晴れても』で簡単なコース料理を食べた。
円山公園の側に星つきフレンチの『モリエール』があるらしいけれど、このカフェはそこの姉妹店らしい。
他にも東区にあるモエレ沼公園にも店舗があり、あとは道内あちこちにレストランがあるそうだ。
道産の素材にこだわった料理は、とても美味しかった。
泡がブクブクに立ったゴボウのポタージュから始まり、塩味が絶妙な帆立のフリットは、木の枝に載せられて出されるという、憎い演出だ。
そのあとはオリジナルのサラダ、バターまで美味しいパンに、メインは選べる中でまた牛肉を食べさせてもらった。
デザートも選べるなか、私はハスカップソースがかかったブラマンジェにしたけれど、その登場の仕方がまた映えた。
大きなお皿の上に松葉をふんだんにあしらい、その上にブラマンジェの入ったボウルが載っていて、スタッフがテーブルでよそってくれた。
「いちごジュース、めちゃ美味しかったです」
「そうか、そいつは良かった」
私たちはコーヒーを飲んでフィニッシュしたあと、建物の一階にある『六花亭』でしこたまお菓子を買い込んだ。
なにせ、『モリエールカフェ』は六花亭ビルの九階にあって、入る時もテンションが上がってしまって写真を撮ってしまった。
札幌駅に着いたあと、尊さんは例の知り合いと落ち合ってブツを受け取るらしく、私は大丸の地下で待つ事にした。
時刻はお昼過ぎだけど、出入り口付近にあるのがきっと例の人気のあるチーズのお菓子なんだろう。すでに売り切れになっていて、人気の凄まじさが伝わってくる。
尊さんは「すまん」と言ってすぐに戻り、例の人からよろしく伝えるよう言われたと、教えてくれた。
そのあとデパ地下を巡って『バターのいとこ』や『ショコラティエ・マサール』のブラウニー、きのとやの『札幌農学校』を買った。空港でもまだ買うつもりだ。
116
お気に入りに追加
817
あなたにおすすめの小説
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!
臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。
そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。
※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています
※表紙はニジジャーニーで生成しました
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
男友達を家に入れたら催眠術とおもちゃで責められ調教されちゃう話
mian
恋愛
気づいたら両手両足を固定されている。
クリトリスにはローター、膣には20センチ弱はある薄ピンクの鉤型が入っている。
友達だと思ってたのに、催眠術をかけられ体が敏感になって容赦なく何度もイかされる。気づけば彼なしではイけない体に作り変えられる。SM調教物語。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
快楽のエチュード〜父娘〜
狭山雪菜
恋愛
眞下未映子は、実家で暮らす社会人だ。週に一度、ストレスがピークになると、夜中にヘッドフォンをつけて、AV鑑賞をしていたが、ある時誰かに見られているのに気がついてしまい……
父娘の禁断の関係を描いてますので、苦手な方はご注意ください。
月に一度の更新頻度です。基本的にはエッチしかしてないです。
こちらの作品は、「小説家になろう」でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる