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北海道旅行 編

自分で思ってるより一万倍可愛いんだよ

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 体を弛緩させた私は、ボーッとして心地よさに身を委ねる。

 尊さんは私の体をベッドの上にちゃんと寝かせ、洗面所に向かってお湯でタオルを濡らす。

(……あれ……。終わり?)

 エッチになると思っていたのに彼が清拭の準備を始め、私は一人で盛ってしまった気持ちになり、恥ずかしくなる。

 戻ってきた尊さんが私の秘部を拭こうとしたので、「いい」と真っ赤になって止めた。

「……自分で、する」

「疲れてるだろ」

 けれど尊さんはそう言うと、赤ちゃんみたいに私の両脚を抱え上げ、秘部を拭き始めた。

「ううううー……」

 色んな意味で情けなくなった私は、枕を抱き締めて顔を埋めた。

 最後に尊さんは下着とズボンを穿かせ、ポンと私のお尻を叩く。

(……なんて言えばいいんだろう)

 枕を抱き締めたまま恥ずかしさを堪えていると、尊さんは私の体をうつ伏せにし、ふくらはぎを揉み始めた。

「ん、……や、大丈夫ですって」

「今日、沢山歩いただろ」

「尊さんだって同じだけ歩いたのに」

「俺はいいの」

 何となく、エッチできなかった事でボタンを一つ掛け違えてしまった感覚になり、私はしょんぼりとして脚を揉まれる。

 モヤモヤしたままは嫌だと思った私は、勇気を出して聞いてみる。

「……エッチしたくなかったですか?」

「一晩寝かせて熟成させる」

「え?」

 彼の言っている事が分からず、私は尊さんを振り向いた。

 尊さんは少し顔を紅潮させ、何かを押し殺した表情をし、今度は私の足の裏を揉み始めた。それから溜め息をつき、じっとりとした目で私を見てくる。

「……あのなぁ、お前自分で思ってるより一万倍可愛いんだよ」

「はい?」

 目を瞬かせると、尊さんはまるで職人のように足裏を揉みつつ言う。

「今回、朱里と初めての旅行だろ? 旅先で見る彼女っていつもと違う魅力があるんだよ。今日一日、すぐにでもホテルに連れ帰って押し倒したいのを、ずーっと我慢してた。朱里が旅行を楽しみにしてたの知ってたし、直前に嫌な思いをしたのも分かってるから、とにかく楽しんでほしかった。そのためなら自分の性欲なんて二の次だ」

「じゃあ……」

 エッチしても良かったのでは?

 おずおずと言いかけると、ジロリと睨まれる。

「あのな、いつもの性欲が百二十パーセントとして、今の俺は二百五十パーセントぐらいいってる」

「デフォが振り切ってるじゃないですか。●カウターが破裂しますよ」

「朱里に対してだけな。最近はエロ動画見ても三十パーもいかねぇよ」

「それはそれで、ちょっと心配です」

「あのなぁ……。そこは『私にだけ反応してくれるの?』って喜んでくれよ」

 尊さんはガクッと項垂れ、反対の足裏を揉み始める。

「そんな感じで、今の俺は触れたら大爆発な訳。今ここでスイッチオンしたら、朝まで止まんねぇ自信がある」

「……じゃあ、手とか口でしてあげましょうか?」

 そろりと尋ねると、尊さんは首を横に振る。

「そんなんされたら、朱里の中で達きたくなるだろ」

 しょんぼりすると、尊さんは私の脛をすべすべと撫でてきた。

「さっきも言ったけど、セックスも楽しみながら旅行する時って、もう少しゆっくりした行程のほうがいいと思うんだ。……そうだなぁ、最低でも国内で一週間から十日はほしいな」

「確かに二泊三日だと、観光もあるとバタバタしちゃいますね」

 理解を示すと、尊さんは申し訳なさそうな顔をする。

「朱里がムラムラしてくれたの、すげぇ嬉しいんだよ。観光も、恋人としての時間も楽しんでくれてるって思える。ありがとな。……でも、明日の夜まで待ってくれ。我が儘言って悪い」

「わっ、我が儘言ったの私だし!」

 とっさに尊さんの手を両手で包むと、彼は愛しそうに笑った。

「朱里は普通に求めてくれただけで、落ち度はない。俺の性欲がちょっとやべぇから、適度にストップかけないとお前に迷惑掛けちまうんだ」

 そういうふうに言われると、なんとも言えなくなる。

(というか、自分が悪いって事にして喧嘩にならないようにしてくれるの、大人だな)

 私はしみじみ思い、自分の単純さを反省した。

「じゃあ明日の夜、かなまら祭り待ってます」

「ぶふぉっ!」

 私がいきなり某珍祭をぶっ込んだからか、尊さんは噴き出した。
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