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北海道旅行 編
大通り~すすきの
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「そうだ、あとですすきののちょっと面白いところ連れてってやるよ」
「え? SMバーですか?」
尋ねると、尊さんはお花の形をしたカップのコーヒーを飲んで――、噴きかけた。
じっとりとした目で睨まれ、私はケタケタ笑う。
「や、すみません。ディープなところらしいので、つい」
「朱里を連れてそういう店に行くのは、ちょっとマンネリになった頃にしておくよ。それまではお猫様に飽きられないように努力する」
「んふふ、マタタビとか?」
「色んな道具とかな」
しれっと言われ、私は赤面して目を剥く。
「猫じゃらしとか?」
けれどサラリとかわされ、一人でいやらしい事を考えてしまった自分に赤面する。
「そうやって虐めてたら、あとが怖いんですからね。引っ掻かれますよ」
「ベッドで?」
笑って受け流され、私はムキーッとなって拳を握る。
「ほれ、怒るな」
尊さんは自分のホットケーキをナイフで切ると、バターと餡子をのせて私に「あーん」してきた。
「えっ? えっ?」
「落ちる。早く」
恥ずかしくてうろたえていたけれど、そう言われて私は差しだされたホットケーキをパクッと食べる。
「うまいか?」
「んーふぃ」
私は彼にも自分のチョコホットケーキを……と思ってフォークとナイフを握ったけれど、「いいよ」と言われてしまった。
ピアノの生演奏を堪能しながら美味しいホットケーキを食べ、お店を出た私たちはまたプラプラと街歩きを始める。
札幌にはチ・カ・ホと呼ばれる地下歩行空間があって、札幌駅からすすきのまで、地下鉄駅二つ分、約五百二十メートルも続いている。
左右には駅前通りのビルの地下店舗が並び、札幌駅から大通駅まで行ったあとは、昔からあるポールタウンという地下街になり、すすきの駅に至る。
間違えやすいのは、オーロラタウンという地下街で、そちらは大通駅から東に向かって横に伸びている。
地元民は暑い夏や地面が滑る冬は地下を通って移動するらしい。でも私たちは観光客なので、ツルツル滑る地面に難儀しつつも地上を歩いていた。
「朱里、なるべく白いところ歩けよ」
「はい」
氷が混じっているところはやっぱり滑りやすく、踏み固められた雪の部分を歩くと、滑るリスクは低そうだ。
「結構みんな滑ってますね。地元の人ってコケないんでしょうか?」
慎重に歩きながら尋ねると、尊さんは例の知り合いの話をしてくれる。
「ペンギン歩きは身についてるみたいだな。あと知り合いはミツウマってメーカーの靴を愛用してるんだって。小樽の市場の人もヘビーユーズしてる老舗の長靴屋なんだけど、滑らなくて有名らしい」
「ほう」
「ま、俺たちみたいな一時的な観光客は……、これだな」
そう言って尊さんは足元を見て笑う。
札幌駅に着いたあと、駅前にある東急ハンズで雪道用の滑り止めスパイクを買った。
つま先と踵に引っかける一時的な奴だけど、そのお陰で雪道初心者の私はなんとかコケずに頑張れてる。
「転んで骨折する人もいるし、怪我する事を考えれば多少の見た目は構ってられねぇな」
「です!」
やがて狸小路に差し掛かり、昔ながらのアーケードを写真に収める。
「昔はかなり活気があったみたいだけど、札幌駅や大通り、すすきのに大きいビルができてからは少し寂れてしまったそうだ。今はレトロな雰囲気に目を付けて、飲食店とかリーズナブルなホテルとかができて、また注目されてるって」
狸小路をちょっと歩いてみて、次はすすきのに向かう。
「わぁ、ニッカおじさんだ」
すすきの交差点に差し掛かると有名な看板があり、私は雪がちらつくなか写真を撮る。
「本当はこの付近も美味い店沢山あるんだけどな。それこそラーメンもジンギスカンも」
「あぁ……、言わないで……。私の胃はお寿司のためにとってあるんですから……。浮気したくない……」
「朱里は一途な女なんだよな? 浮気はしないよな?」
「……いきなりネチネチ言うのやめてください」
「『雪風』ってラーメン屋がすすきのにあって、並ぶ人がいるぐらい美味いんだけど、浮気しねぇよな? 塩ラーメンのスープは透明で、チャーシューも大きめで……」
「あぁ~……。やめてぇええ……」
私は大きめの声で言い、両手で耳を塞ぐ。何プレイだ。
「え? SMバーですか?」
尋ねると、尊さんはお花の形をしたカップのコーヒーを飲んで――、噴きかけた。
じっとりとした目で睨まれ、私はケタケタ笑う。
「や、すみません。ディープなところらしいので、つい」
「朱里を連れてそういう店に行くのは、ちょっとマンネリになった頃にしておくよ。それまではお猫様に飽きられないように努力する」
「んふふ、マタタビとか?」
「色んな道具とかな」
しれっと言われ、私は赤面して目を剥く。
「猫じゃらしとか?」
けれどサラリとかわされ、一人でいやらしい事を考えてしまった自分に赤面する。
「そうやって虐めてたら、あとが怖いんですからね。引っ掻かれますよ」
「ベッドで?」
笑って受け流され、私はムキーッとなって拳を握る。
「ほれ、怒るな」
尊さんは自分のホットケーキをナイフで切ると、バターと餡子をのせて私に「あーん」してきた。
「えっ? えっ?」
「落ちる。早く」
恥ずかしくてうろたえていたけれど、そう言われて私は差しだされたホットケーキをパクッと食べる。
「うまいか?」
「んーふぃ」
私は彼にも自分のチョコホットケーキを……と思ってフォークとナイフを握ったけれど、「いいよ」と言われてしまった。
ピアノの生演奏を堪能しながら美味しいホットケーキを食べ、お店を出た私たちはまたプラプラと街歩きを始める。
札幌にはチ・カ・ホと呼ばれる地下歩行空間があって、札幌駅からすすきのまで、地下鉄駅二つ分、約五百二十メートルも続いている。
左右には駅前通りのビルの地下店舗が並び、札幌駅から大通駅まで行ったあとは、昔からあるポールタウンという地下街になり、すすきの駅に至る。
間違えやすいのは、オーロラタウンという地下街で、そちらは大通駅から東に向かって横に伸びている。
地元民は暑い夏や地面が滑る冬は地下を通って移動するらしい。でも私たちは観光客なので、ツルツル滑る地面に難儀しつつも地上を歩いていた。
「朱里、なるべく白いところ歩けよ」
「はい」
氷が混じっているところはやっぱり滑りやすく、踏み固められた雪の部分を歩くと、滑るリスクは低そうだ。
「結構みんな滑ってますね。地元の人ってコケないんでしょうか?」
慎重に歩きながら尋ねると、尊さんは例の知り合いの話をしてくれる。
「ペンギン歩きは身についてるみたいだな。あと知り合いはミツウマってメーカーの靴を愛用してるんだって。小樽の市場の人もヘビーユーズしてる老舗の長靴屋なんだけど、滑らなくて有名らしい」
「ほう」
「ま、俺たちみたいな一時的な観光客は……、これだな」
そう言って尊さんは足元を見て笑う。
札幌駅に着いたあと、駅前にある東急ハンズで雪道用の滑り止めスパイクを買った。
つま先と踵に引っかける一時的な奴だけど、そのお陰で雪道初心者の私はなんとかコケずに頑張れてる。
「転んで骨折する人もいるし、怪我する事を考えれば多少の見た目は構ってられねぇな」
「です!」
やがて狸小路に差し掛かり、昔ながらのアーケードを写真に収める。
「昔はかなり活気があったみたいだけど、札幌駅や大通り、すすきのに大きいビルができてからは少し寂れてしまったそうだ。今はレトロな雰囲気に目を付けて、飲食店とかリーズナブルなホテルとかができて、また注目されてるって」
狸小路をちょっと歩いてみて、次はすすきのに向かう。
「わぁ、ニッカおじさんだ」
すすきの交差点に差し掛かると有名な看板があり、私は雪がちらつくなか写真を撮る。
「本当はこの付近も美味い店沢山あるんだけどな。それこそラーメンもジンギスカンも」
「あぁ……、言わないで……。私の胃はお寿司のためにとってあるんですから……。浮気したくない……」
「朱里は一途な女なんだよな? 浮気はしないよな?」
「……いきなりネチネチ言うのやめてください」
「『雪風』ってラーメン屋がすすきのにあって、並ぶ人がいるぐらい美味いんだけど、浮気しねぇよな? 塩ラーメンのスープは透明で、チャーシューも大きめで……」
「あぁ~……。やめてぇええ……」
私は大きめの声で言い、両手で耳を塞ぐ。何プレイだ。
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