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アクシデント 編
ワンコ系後輩
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尊さんの家から職場に向かう生活を続けているけれど、今のところ別々の交通手段を使っている。
彼は会社の地下駐車場まで車だけど、私は浅草線で一本だ。
『ぶっちゃけ、同じ車に乗って地下から時間差でエレベーターでもいいと思うけど』
彼はそう言っていたけれど、少しでもリスキーな真似はしたくない。
(……といっても、秘書の事もあるしいつかは公表しなきゃならないから、早いとこ覚悟を決めないとな)
そう思いながら満員電車に揺られていたけれど、いきなりグッと股間を触られてビクッと体を震わせた。
揺れで倒れてしまわないよう脚を開いて立っていたけど、それが災いとなった。
(ちょ……っ)
振り返って誰がやってるか確認したかったけど、身動きがとれない。
冷や汗をタラタラ流して体を強張らせている間、手は私の秘部をグリグリ撫でてくる。
(待って……? ちょ、あの……、やだ……っ、……やだっ)
私は歯を食いしばり、恐怖のあまり身を震わせる。
――と、カシャッとシャッター音がしたあと、「おい」と男性の声がした。
見えないけど、誰かが痴漢を止めてくれたみたいだ。
「おっさん、さっきからその人に痴漢してるだろ。バレバレなんだよ」
「な……っ、なんだ君は」
若い男性とおじさんがやり取りしている間、電車は日本橋駅に着き、ドッと人が吐き出されるように出ていくなか、おじさんは必死に人をかき分けて逃げだした。
「そいつを捕まえてください! 痴漢です!」
男性が叫び、車内でのやり取りを聞いていた人たちがおじさんを取り押さえる。
どんな奴かと思えば、眼鏡を掛けて髪が薄くなっている、小太りな普通のおっさんだ。
棒立ちになって取り押さえられたおじさんを見ていると、駅員さんが駆けつけてきた。
「僕も同席します」
申し出た声に聞き覚えがある……、と思って彼を見ると、なんと同じ部署の神輝征くんだ。
綾子さんや係長からは〝じんじん〟〝テリー〟と呼ばれている、ちょっといじられ気味な人だけど、やる時はやる、将来が楽しみな後輩くんだ。
身長はスラッと高くて、尊さんほどじゃないけど百八十センチメートル以上はある。
格好いいけれど大人っぽいというよりアイドルみたいな甘いマスクで、周りから〝ワンコ系後輩〟と言われていた。
「……あ、……ありがとう……。神くん」
「大丈夫ですか? 畜生、あいつ……」
神くんは忌々しげに言い、私の手を握ってくる。……あれ?
おじさんは項垂れて駅員さんに連行され、私たちはそのあとについて歩く。
その途中でさりげなく神くんの手を放したけれど、彼は何も言わなかった。
「さっき、証拠になると思って、あいつの手元を撮りました。上村さんのお尻も写り込んだと思いますが、すみません」
「えっ? ……い、いや。ありがとう。そんな近くにいたのに気づかなかったとは……」
「人を押しのけてスマホ弄ったので、ちゃんと写ってればいいんですが……。あ、そうだ。警察呼んで事情聴取とかあると思うので、会社に連絡しておきましょうか」
「……う、うん」
私は重い溜め息をつき、係長にメッセージを打つ。
そのあと尊さんにも連絡した。
【すみません、痴漢に遭ったので遅れます。神くんが助けてくれました】
【大丈夫か!? どこにいる?】
彼が動揺したのが分かり、申し訳ないと思いながらも日本橋駅にいると伝える。
【すぐ行く】
「えっ?」
係長への連絡は済んだのに、まさか尊さんが来ると思わず、私は声を漏らす。
「どうかしましたか?」
「……い、いや……」
……どうしよう。
頭の中を真っ白にして固まったあと、私は慌てて【来なくて大丈夫ですって!】と返事を打つ。
けれどそれに既読がつく事はなく、私たちは駅長室に向かったのだった。
神くんが撮った写真には、親指の付け根にほくろがあるおじさんの手が写っていて、バッチリ私の股間を触っているのが写っていた。
おじさんは「偶然当たっただけ」と言い張っていたけれど、私は何回もグリグリされて不快だった事を訴え、神くんもおじさんが執拗に何回も触っていた事を証言する。
その間、息を乱した尊さんが駆けつけた。
「えっ? 部長、なんで……」
神くんが呆気にとられている間、尊さんはジロリとおじさんを睨み、唇を引き結ぶ。
そしてガチガチに身を強張らせている私を――、抱き締めてきた。
彼は会社の地下駐車場まで車だけど、私は浅草線で一本だ。
『ぶっちゃけ、同じ車に乗って地下から時間差でエレベーターでもいいと思うけど』
彼はそう言っていたけれど、少しでもリスキーな真似はしたくない。
(……といっても、秘書の事もあるしいつかは公表しなきゃならないから、早いとこ覚悟を決めないとな)
そう思いながら満員電車に揺られていたけれど、いきなりグッと股間を触られてビクッと体を震わせた。
揺れで倒れてしまわないよう脚を開いて立っていたけど、それが災いとなった。
(ちょ……っ)
振り返って誰がやってるか確認したかったけど、身動きがとれない。
冷や汗をタラタラ流して体を強張らせている間、手は私の秘部をグリグリ撫でてくる。
(待って……? ちょ、あの……、やだ……っ、……やだっ)
私は歯を食いしばり、恐怖のあまり身を震わせる。
――と、カシャッとシャッター音がしたあと、「おい」と男性の声がした。
見えないけど、誰かが痴漢を止めてくれたみたいだ。
「おっさん、さっきからその人に痴漢してるだろ。バレバレなんだよ」
「な……っ、なんだ君は」
若い男性とおじさんがやり取りしている間、電車は日本橋駅に着き、ドッと人が吐き出されるように出ていくなか、おじさんは必死に人をかき分けて逃げだした。
「そいつを捕まえてください! 痴漢です!」
男性が叫び、車内でのやり取りを聞いていた人たちがおじさんを取り押さえる。
どんな奴かと思えば、眼鏡を掛けて髪が薄くなっている、小太りな普通のおっさんだ。
棒立ちになって取り押さえられたおじさんを見ていると、駅員さんが駆けつけてきた。
「僕も同席します」
申し出た声に聞き覚えがある……、と思って彼を見ると、なんと同じ部署の神輝征くんだ。
綾子さんや係長からは〝じんじん〟〝テリー〟と呼ばれている、ちょっといじられ気味な人だけど、やる時はやる、将来が楽しみな後輩くんだ。
身長はスラッと高くて、尊さんほどじゃないけど百八十センチメートル以上はある。
格好いいけれど大人っぽいというよりアイドルみたいな甘いマスクで、周りから〝ワンコ系後輩〟と言われていた。
「……あ、……ありがとう……。神くん」
「大丈夫ですか? 畜生、あいつ……」
神くんは忌々しげに言い、私の手を握ってくる。……あれ?
おじさんは項垂れて駅員さんに連行され、私たちはそのあとについて歩く。
その途中でさりげなく神くんの手を放したけれど、彼は何も言わなかった。
「さっき、証拠になると思って、あいつの手元を撮りました。上村さんのお尻も写り込んだと思いますが、すみません」
「えっ? ……い、いや。ありがとう。そんな近くにいたのに気づかなかったとは……」
「人を押しのけてスマホ弄ったので、ちゃんと写ってればいいんですが……。あ、そうだ。警察呼んで事情聴取とかあると思うので、会社に連絡しておきましょうか」
「……う、うん」
私は重い溜め息をつき、係長にメッセージを打つ。
そのあと尊さんにも連絡した。
【すみません、痴漢に遭ったので遅れます。神くんが助けてくれました】
【大丈夫か!? どこにいる?】
彼が動揺したのが分かり、申し訳ないと思いながらも日本橋駅にいると伝える。
【すぐ行く】
「えっ?」
係長への連絡は済んだのに、まさか尊さんが来ると思わず、私は声を漏らす。
「どうかしましたか?」
「……い、いや……」
……どうしよう。
頭の中を真っ白にして固まったあと、私は慌てて【来なくて大丈夫ですって!】と返事を打つ。
けれどそれに既読がつく事はなく、私たちは駅長室に向かったのだった。
神くんが撮った写真には、親指の付け根にほくろがあるおじさんの手が写っていて、バッチリ私の股間を触っているのが写っていた。
おじさんは「偶然当たっただけ」と言い張っていたけれど、私は何回もグリグリされて不快だった事を訴え、神くんもおじさんが執拗に何回も触っていた事を証言する。
その間、息を乱した尊さんが駆けつけた。
「えっ? 部長、なんで……」
神くんが呆気にとられている間、尊さんはジロリとおじさんを睨み、唇を引き結ぶ。
そしてガチガチに身を強張らせている私を――、抱き締めてきた。
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