上 下
199 / 417
元彼に会う前に 編

姫と悪役

しおりを挟む
「ん……っ、む、ぅ……」

 彼は噛み付くようなキスをし、私の脚を広げると脛の辺りから手を滑らせ、スカートを捲り上げてきた。

 ストッキングの感触を楽しむように掌を擦らせ、ストッキングのウエストゴムに指を引っかけると、クルクルと丸めながら脱がせてくる。

(……ま、待って? 始まっちゃう?)

 シャワーとか、今何時とか、色んな事を考えないといけないはずなのに、柔らかな舌の感触を味わい、チュッチュッと唇をついばまれていると、次第に頭がボーッとしてくる。

 すぐにストッキングが脱がされ、尊さんは私の太腿をスベスベと撫でた。

「……やべぇ。すげぇ興奮してる」

 少し唇を離した尊さんは、そう言って私の手を握ると、自身の股間に導いた。

「ぁ……」

 スラックス越しにも、そこがすでに芯を持っているのが分かり、私はサッと赤面する。

「抱きたい」

 尊さんは私を見つめて、これ以上ないストレートな言葉を口にする。

「……押し倒してストッキング脱がせて、キスしておきながら言う言葉ですか?」

「じゃあ、いい?」

 彼は私の手をとり、上目遣いに見つめながらチュッと手の甲にキスをしてきた。

(~~~~っ、こういう事、サラッとやるもんなぁ!)

「……どうしてもというなら、シャワー後に応じます」

「じゃあ、一緒に入りませんか?」

 尊さんは私の手を握ったまま、再度手の甲に唇を近づける。

「は……、入って差し上げても宜しくってよ!」

 まるでお姫様みたいに扱うもんだから、照れくさくてつい、なんちゃって姫様になってしまった。

「では、姫。参りましょう」

 私の姫ネタにノッた尊さんは、ニヤッと笑ったかと思うと私を姫抱っこして立ちあがった。

「ちょ……っ、今の悪い顔、絶対お付きの騎士とかじゃない。悪役のほうだ」

「姫をさらう悪役でもいいんじゃないか?」

「当て馬?」

「そのまま、姫が調教されて快楽堕ちするパターンもあるだろ」

「どこのエロ漫画!」

 バシッと彼の胸板を叩いた時、ストンと洗面所に下ろされた。

「『月刊速水』じゃ駄目?」

 彼はふざけたまま、両手を洗面台について私を腕の中に閉じ込めてくる。

「……やらしくない雑誌名だから却下」

「『尊先生の教えてあ・げ・る』」

「ぶふぉおっ!」

 私は噴きだしてその場に崩れ落ち、肩を震わせて爆笑する。

「いやー……」

 しゃがんだまま尊さんを見上げ、彼が眼鏡を掛けて教鞭をとっている姿を想像する。

「……アリかも……」

 ボソッと呟いた私を見て、尊さんはクスクス笑う。

「どんな想像してるんだよ。スケベ」

「なにを~! 尊さんなんてドスケベのくせに!」

「ほう……」

 スケベと言われて恥ずかしく、言い返しただけなんだけど、ドスケベと言われて尊さんはニヤリと笑った。

 う……っ、これは今までになく悪い笑みだ。

「俺はドスケベだから、明日元彼に会う朱里を、前日にグチャグチャに抱くつもりでいるからな」

 言われて、明日昭人と会うのだと思いだし、ちょっとだけ気持ちが沈んでしまう。

 すると私の表情を見て、尊さんはしゃがんで目を合わせて微笑んできた。

「気持ちは分かる。でも側にいるから一緒に乗り越えよう。ちゃんと解決して、前に進むんだ」

「……はい!」

 側に好きな人がいると思うだけで、こんなにも勇気が湧いてくる。

(好きだなぁ……)

 しみじみと思った私は、尊さんに抱きつきしばらくそのぬくもりを堪能した。

 ……と、尊さんがポンと私のお尻を叩いてきた。

「さて、猫洗いするか」

 目の前で彼が悪戯っぽく笑ったので、私は赤面してジロリと睨みつつ、「にゃあ……」と鳴いてみせた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

男友達を家に入れたら催眠術とおもちゃで責められ調教されちゃう話

mian
恋愛
気づいたら両手両足を固定されている。 クリトリスにはローター、膣には20センチ弱はある薄ピンクの鉤型が入っている。 友達だと思ってたのに、催眠術をかけられ体が敏感になって容赦なく何度もイかされる。気づけば彼なしではイけない体に作り変えられる。SM調教物語。

【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!

臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。 そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。 ※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています ※表紙はニジジャーニーで生成しました

【本編完結】【R-18】逃れられない淫らな三角関係~美形兄弟に溺愛されています~

臣桜
恋愛
ムシャクシャしてハプニングバーに行った折原優美は、そこで部下の岬慎也に遭遇した。自分の願望を暴かれ、なしくずし的に部下と致してしまう。その後、慎也に付き合ってほしいと言われるが、彼の家でエッチしている真っ最中に、正樹という男性が現れる。正樹は慎也と同居している兄だった。――「俺たちのものになってよ」 ※ムーンライトノベルズ、エブリスタにも転載しています ※不定期で番外編を投稿します ※表紙はニジジャーニーで生成しました

処理中です...