190 / 417
実家に挨拶 編
家族への挨拶
しおりを挟む
「緊張してきちゃった」
吉祥寺の自宅前で車から降りたあと、私はタカタカとその場で足踏みする。
「自分の家族をじゃがいもと思えなんて、言えねぇしな」
「あはは! じゃあ、掌に『家族』って三回書いて呑みます」
彼と話すと少し気持ちが落ち着き、私は「たのもう」と言いながらインターフォンのボタンを押した。
少ししてスピーカーから母の声が聞こえる。
《いらっしゃい! ……って朱里、自分の家なんだから入ってきなさい》
私は尊さんと顔を見合わせて笑ったあと、玄関のドアを開けた。
「どうぞ」
尊さんに入るよう言った時、奥から「あらあらあら……」といつもよりワントーン高い母の声が聞こえる。
そちらを見ると、きれいめの服を着た母と父、亮平、後ろに美奈歩がこちらに歩み寄ってくるところだ。
「初めまして。速水尊と申します」
尊さんは家族に向かって微笑みかけ、丁寧に一礼する。
「娘から少しだけ話を聞いていました。も~、朱里ったらイケメン捕まえて!」
「お母さん、顔だけ見て選んだような事いうのやめてよ」
思わず笑うと、継父も笑う。
「どうぞ上がってください」
母に言われ、尊さんは「お口に合えばいいのですが」と手土産を渡してから靴を脱いだ。
亮平はもう尊さんを見ても敵対心みたいなものは抱いていないみたいで、むしろ好意的な雰囲気を醸し出している。
(美奈歩は……)
一番奥にいる継妹を見ると、彼女は少し驚いた顔をして、尊さんの顔をガン見してた。
(……あらら……。これは……)
何となく嫌な予感を抱きながら、私もブーツを脱いでコートを脱ぎ、リビングに向かった。
母はすぐにコーヒーを淹れ始め、近所にあるケーキ屋さんの焼き菓子がお茶請けに出された。
「速水さんは、部長さんなんですって?」
継父に話しかけられ、ソファに座った尊さんは感じよく微笑む。
「はい。朱里さんとは職場で出会い、お付き合いさせていただいています」
「ご家族はどのような方なんですか?」
きた!
私はジワリと冷や汗を掻き、ソワソワする。
この日になるまで覚悟を決めていたらいし尊さんは、穏やかな表情で話し始めた。
「私は速水尊と名乗りましたが、本当の名前は篠宮尊と申します」
「篠宮……?」
その名字を聞き、家族は私が務めている会社の名前、そして今ニュースになっている怜香さんの事を想像したみたいだ。
一瞬にして家族の表情が少し不安なものになり、私は祈りを込めて両手を組む。
「私は篠宮フーズ先代社長、篠宮亘の婚外子です。母親の姓は速水と言い、母方の家では音響機器メーカーを営んでいます」
その説明を聞いて、スピーカーなどで有名なメーカーだと理解したのか、家族の顔が驚愕に彩られる。
「また、いま世間をお騒がせしている篠宮怜香は、私の継母となります」
怜香さんのニュースは今ワイドショーなどでも流れていて、家族も知っているはずだ。
尊さんを迎えた時は緊張しながらもワクワクした雰囲気だったのに、すっかりシリアスな空気が漂っている。
彼が悪者みたいになるのを怖れ、私はフォローする。
「ニュースで報じられている事は大体本当だけど、尊さんは怜香さんとの関係を清算したし、篠宮家はこれから健全な方向へ向かっていくと信じてる。私が尊さんと結婚して篠宮家に入っても、変な立場になる事はないから大丈夫」
私の言葉を聞き、両親は少し安堵したようだけれど、その不安が完全に消えた訳じゃない。
「……朱里はそんな大きな会社に関わっても大丈夫なの? 速水さんを愛してるのは十分に理解するけど、ご両親はどちらとも大きな会社に関係しているじゃない。私は朱里をどこに出しても恥ずかしくない娘だと思ってる。でも……、速水さんには申し訳ないけど、意地悪な事を言われたりしない? 結婚って相手の家とも関わっていく事なのよ?」
母に言われ、私は小さく溜め息をつく。
その時、尊さんが母をまっすぐ見て言った。
吉祥寺の自宅前で車から降りたあと、私はタカタカとその場で足踏みする。
「自分の家族をじゃがいもと思えなんて、言えねぇしな」
「あはは! じゃあ、掌に『家族』って三回書いて呑みます」
彼と話すと少し気持ちが落ち着き、私は「たのもう」と言いながらインターフォンのボタンを押した。
少ししてスピーカーから母の声が聞こえる。
《いらっしゃい! ……って朱里、自分の家なんだから入ってきなさい》
私は尊さんと顔を見合わせて笑ったあと、玄関のドアを開けた。
「どうぞ」
尊さんに入るよう言った時、奥から「あらあらあら……」といつもよりワントーン高い母の声が聞こえる。
そちらを見ると、きれいめの服を着た母と父、亮平、後ろに美奈歩がこちらに歩み寄ってくるところだ。
「初めまして。速水尊と申します」
尊さんは家族に向かって微笑みかけ、丁寧に一礼する。
「娘から少しだけ話を聞いていました。も~、朱里ったらイケメン捕まえて!」
「お母さん、顔だけ見て選んだような事いうのやめてよ」
思わず笑うと、継父も笑う。
「どうぞ上がってください」
母に言われ、尊さんは「お口に合えばいいのですが」と手土産を渡してから靴を脱いだ。
亮平はもう尊さんを見ても敵対心みたいなものは抱いていないみたいで、むしろ好意的な雰囲気を醸し出している。
(美奈歩は……)
一番奥にいる継妹を見ると、彼女は少し驚いた顔をして、尊さんの顔をガン見してた。
(……あらら……。これは……)
何となく嫌な予感を抱きながら、私もブーツを脱いでコートを脱ぎ、リビングに向かった。
母はすぐにコーヒーを淹れ始め、近所にあるケーキ屋さんの焼き菓子がお茶請けに出された。
「速水さんは、部長さんなんですって?」
継父に話しかけられ、ソファに座った尊さんは感じよく微笑む。
「はい。朱里さんとは職場で出会い、お付き合いさせていただいています」
「ご家族はどのような方なんですか?」
きた!
私はジワリと冷や汗を掻き、ソワソワする。
この日になるまで覚悟を決めていたらいし尊さんは、穏やかな表情で話し始めた。
「私は速水尊と名乗りましたが、本当の名前は篠宮尊と申します」
「篠宮……?」
その名字を聞き、家族は私が務めている会社の名前、そして今ニュースになっている怜香さんの事を想像したみたいだ。
一瞬にして家族の表情が少し不安なものになり、私は祈りを込めて両手を組む。
「私は篠宮フーズ先代社長、篠宮亘の婚外子です。母親の姓は速水と言い、母方の家では音響機器メーカーを営んでいます」
その説明を聞いて、スピーカーなどで有名なメーカーだと理解したのか、家族の顔が驚愕に彩られる。
「また、いま世間をお騒がせしている篠宮怜香は、私の継母となります」
怜香さんのニュースは今ワイドショーなどでも流れていて、家族も知っているはずだ。
尊さんを迎えた時は緊張しながらもワクワクした雰囲気だったのに、すっかりシリアスな空気が漂っている。
彼が悪者みたいになるのを怖れ、私はフォローする。
「ニュースで報じられている事は大体本当だけど、尊さんは怜香さんとの関係を清算したし、篠宮家はこれから健全な方向へ向かっていくと信じてる。私が尊さんと結婚して篠宮家に入っても、変な立場になる事はないから大丈夫」
私の言葉を聞き、両親は少し安堵したようだけれど、その不安が完全に消えた訳じゃない。
「……朱里はそんな大きな会社に関わっても大丈夫なの? 速水さんを愛してるのは十分に理解するけど、ご両親はどちらとも大きな会社に関係しているじゃない。私は朱里をどこに出しても恥ずかしくない娘だと思ってる。でも……、速水さんには申し訳ないけど、意地悪な事を言われたりしない? 結婚って相手の家とも関わっていく事なのよ?」
母に言われ、私は小さく溜め息をつく。
その時、尊さんが母をまっすぐ見て言った。
37
お気に入りに追加
817
あなたにおすすめの小説
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!
臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。
そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。
※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています
※表紙はニジジャーニーで生成しました
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
男友達を家に入れたら催眠術とおもちゃで責められ調教されちゃう話
mian
恋愛
気づいたら両手両足を固定されている。
クリトリスにはローター、膣には20センチ弱はある薄ピンクの鉤型が入っている。
友達だと思ってたのに、催眠術をかけられ体が敏感になって容赦なく何度もイかされる。気づけば彼なしではイけない体に作り変えられる。SM調教物語。
【R18】鬼上司は今日も私に甘くない
白波瀬 綾音
恋愛
見た目も中身も怖くて、仕事にストイックなハイスペ上司、高濱暁人(35)の右腕として働く私、鈴木梨沙(28)。接待で終電を逃した日から秘密の関係が始まる───。
逆ハーレムのチームで刺激的な日々を過ごすオフィスラブストーリー
法人営業部メンバー
鈴木梨沙:28歳
高濱暁人:35歳、法人営業部部長
相良くん:25歳、唯一の年下くん
久野さん:29歳、一個上の優しい先輩
藍沢さん:31歳、チーフ
武田さん:36歳、課長
加藤さん:30歳、法人営業部事務
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる