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亮平 編
継兄の迎え
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亮平は港区の湾岸にあるタワマンに住んでいる。
彼はもともとゲーム好きで、ゲーム好きなら必ず知っている大手ゲーム会社に勤務し、独立したあとフリーのエンジニアになって、そこそこ稼いでいるらしい。
おまけに車はフォルクスワーゲンのティグアンだ。生意気な。
私の住まいは西日暮里で、車で迎えに来るのに二十分は掛かるのに、湾岸からわざわざ来るとか……。
というか、亮平の住まいは尊さんと物凄く近い。変わってほしいほどだ。
……というのはおいといて。
「はぁ……」
自宅にいた私は、ベッドの上でゴロゴロしながらスマホを睨む。
亮平の事を考えるとイライラする。
ギリギリ害にならない範囲で接近してくるのが、ムカつく理由の大半を占める。
そんな奴が悠々とした生活をしているんだと思うと、さらにムカつく。
亮平はちゃんと勉強して技術を持ち、頑張った結果として今の暮らしがあるのは分かってる。
でも気に食わない奴がいい暮らしをしていると思うと、なんだか腹が立つのだ。
加えて事あるごとに、お洒落なスイーツやデパコス化粧品をくれるもんだから、余計にムカつく。
勿論、美奈歩にも同じ物をプレゼントしてるから、それで継妹の不興を買う事はない。
向こうはもともと仲良し兄妹だったから、多分私の知らないところで美奈歩の事はもっと可愛がってると思う。ちょっと前は美奈歩の友人も連れて、一緒にテーマパークに行ったみたいだし。
その時、『一緒に行くか?』と誘われたけれど、美奈歩の友人がいるとはいえ、兄妹だけで出かけるのは気分的にキツかったので断った。
恵が一緒なら話は別だったかもしれないけど、亮平の奢りで行くのに私の都合で『友達もいい?』なんて言えない。
そういう事が何回もあり、あの兄妹とはずっとギクシャクしたままだ。
【既読無視すんなよ】
亮平からまたメッセージが入る。
「うるさいなぁ……。メッセージなんだからちょっと待ってよ」
私は乱暴に溜め息をつき、髪を掻き上げる。
毎回、亮平から何か誘いがあった時、なんて断ろうか言葉に困る。
『やだ』と言っても『なんで』って聞いてくるし、『あんたの存在がやだ』なんて言えないから、いつも苦しい嘘をついている。
「あー……、もう……」
【お母さんの好きなおやつ買ってくから、一人でいい】
【ついでだから寄ってやるよ。こっちは車なんだし、足があったほうがいいだろ】
「もおおおおお……」
私はながーくうなってから、ボスッと枕に顔を埋めた。
そして溜め息をついて、返事をする。
【土曜日の十時半】
【了解】
美奈歩はエステティシャンをしているけれど、職場も吉祥寺なので、なんとも省エネな生き方をしている。
浮いたお金を貯金して、ちょこちょこと海外に行っているみたいだ。
ちなみに継父は広告代理店の部長をしていて、そこそこ稼ぎがある。
母とはお見合いで出会い、再婚に至った。
もう十年近く〝家族〟として過ごしているのに、私だけ浮いている感じがする。
本当は仲良くしたいのに、亮平と美奈歩がフレンドリーになってくれないから、私もどこか意地を張ってしまっている。
「難しいもんだ……」
呟いたあと、私は尊さんとのメッセージを読み返して元気をもらい、お風呂に入る事にした。
**
実家に行くのにお洒落をする必要はないので、スポンとニットワンピースを着てコートを羽織った。
髪も一本縛りをくるりんぱしただけで、メイクもベースをやって眉を描いただけ。
賃貸マンションの前で待っていると、亮平の白いティグアンが停まった。
「はぁ……」
無意識に溜め息をついた私は、助手席に乗る。
「おはよ」
「……おはよ」
挨拶され、私はしぶしぶ「おはよう」を言う。……っていうか、もう昼前だけど。
彼はもともとゲーム好きで、ゲーム好きなら必ず知っている大手ゲーム会社に勤務し、独立したあとフリーのエンジニアになって、そこそこ稼いでいるらしい。
おまけに車はフォルクスワーゲンのティグアンだ。生意気な。
私の住まいは西日暮里で、車で迎えに来るのに二十分は掛かるのに、湾岸からわざわざ来るとか……。
というか、亮平の住まいは尊さんと物凄く近い。変わってほしいほどだ。
……というのはおいといて。
「はぁ……」
自宅にいた私は、ベッドの上でゴロゴロしながらスマホを睨む。
亮平の事を考えるとイライラする。
ギリギリ害にならない範囲で接近してくるのが、ムカつく理由の大半を占める。
そんな奴が悠々とした生活をしているんだと思うと、さらにムカつく。
亮平はちゃんと勉強して技術を持ち、頑張った結果として今の暮らしがあるのは分かってる。
でも気に食わない奴がいい暮らしをしていると思うと、なんだか腹が立つのだ。
加えて事あるごとに、お洒落なスイーツやデパコス化粧品をくれるもんだから、余計にムカつく。
勿論、美奈歩にも同じ物をプレゼントしてるから、それで継妹の不興を買う事はない。
向こうはもともと仲良し兄妹だったから、多分私の知らないところで美奈歩の事はもっと可愛がってると思う。ちょっと前は美奈歩の友人も連れて、一緒にテーマパークに行ったみたいだし。
その時、『一緒に行くか?』と誘われたけれど、美奈歩の友人がいるとはいえ、兄妹だけで出かけるのは気分的にキツかったので断った。
恵が一緒なら話は別だったかもしれないけど、亮平の奢りで行くのに私の都合で『友達もいい?』なんて言えない。
そういう事が何回もあり、あの兄妹とはずっとギクシャクしたままだ。
【既読無視すんなよ】
亮平からまたメッセージが入る。
「うるさいなぁ……。メッセージなんだからちょっと待ってよ」
私は乱暴に溜め息をつき、髪を掻き上げる。
毎回、亮平から何か誘いがあった時、なんて断ろうか言葉に困る。
『やだ』と言っても『なんで』って聞いてくるし、『あんたの存在がやだ』なんて言えないから、いつも苦しい嘘をついている。
「あー……、もう……」
【お母さんの好きなおやつ買ってくから、一人でいい】
【ついでだから寄ってやるよ。こっちは車なんだし、足があったほうがいいだろ】
「もおおおおお……」
私はながーくうなってから、ボスッと枕に顔を埋めた。
そして溜め息をついて、返事をする。
【土曜日の十時半】
【了解】
美奈歩はエステティシャンをしているけれど、職場も吉祥寺なので、なんとも省エネな生き方をしている。
浮いたお金を貯金して、ちょこちょこと海外に行っているみたいだ。
ちなみに継父は広告代理店の部長をしていて、そこそこ稼ぎがある。
母とはお見合いで出会い、再婚に至った。
もう十年近く〝家族〟として過ごしているのに、私だけ浮いている感じがする。
本当は仲良くしたいのに、亮平と美奈歩がフレンドリーになってくれないから、私もどこか意地を張ってしまっている。
「難しいもんだ……」
呟いたあと、私は尊さんとのメッセージを読み返して元気をもらい、お風呂に入る事にした。
**
実家に行くのにお洒落をする必要はないので、スポンとニットワンピースを着てコートを羽織った。
髪も一本縛りをくるりんぱしただけで、メイクもベースをやって眉を描いただけ。
賃貸マンションの前で待っていると、亮平の白いティグアンが停まった。
「はぁ……」
無意識に溜め息をついた私は、助手席に乗る。
「おはよ」
「……おはよ」
挨拶され、私はしぶしぶ「おはよう」を言う。……っていうか、もう昼前だけど。
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