【R-18・連載版】部長と私の秘め事

レストランに行く前に 編

お前に酷い事したくないんだよ

「……ん……」

　唇をついばまれた私は、小さく息を吐く。

「…………あぁ、クソ、駄目だ。可愛い」

　私はしみじみと言った彼を見て微笑んだあと、素朴な疑問を口にした。

「……嫌じゃないんですか？　……昭人はフェラしたあとにキスしてくれま……」

　そこまで言い、私の言葉は止まってしまう。

　尊さんが親指で唇を押さえてきたからだ。

「俺とイチャついてるのに、他の男の事を考えるなよ」

「…………はい」

　彼の独占欲、嫉妬を感じて、心の底からトロリと愉悦がこみ上げてくる。

　――やっぱりこの人の事、好きだ。

　頷いた私は、ギュッと尊さんを抱き締めた。

　そのあと、私たちはしばらく乱れた呼吸を整えて抱き合っていた。

「……上手だった」

　尊さんは私の背中をポンポンと叩き、頭も撫でてくれる。

　私は嬉しさのあまり、ニヤニヤして彼の肩口に顔を埋めた。

　やがて、尊さんがボソッと言った。

「……本当は田村クンに嫉妬した以外の理由でも、あんまりフェラしてほしくなかったんだ」

「……どうしてですか？」

　私は少しドキッとして尋ねる。

　何かネガティブな意味があってだろうか、と心配になってしまったからだ。

「フェラってよっぽど男を受け入れないと、できないと思うんだ」

「……言いたい事は分かりますけど、尊さんだって……、私の、舐めてるじゃないですか……」

　恥ずかしくて、言葉の後半はちょっと声が小さくなってしまう。

「お前のならどんだけでも舐めたいけど」

　でも尊さんがキョトンとして言うので、照れくさくなった私は彼の肩に額をつけて誤魔化した。

　彼は私の背中をトントンと叩き、優しい声で言う。

「それに、朱里がフェラしてくれたらもっと愛しくなって離したくなくなる。それで躊躇っていたのもあったな」

「え、そんな理由？」

　私はガバッと顔を上げ、目を瞬かせて尊さんを見る。

「俺ん中では、ちょっとした〝一線〟だったんだよ」

「えー、もっと好きになってくれるなら、もっとしたい！」

　私はムギュッと尊さんのアソコを握る。

　少し元気を失ってるけど、刺激を与えたらまだまだ頑張れるはずだ。

　……だってこの人の体力底なしだもん……。

「だーめ！」

　けど尊さんはそう言うと、私の両手を片手で縛めると、チュッとキスしてきた。

　そのあと、溜め息をついて付け加える。

「あれって完全に男優位の行為だろ。まぁ、中には女性優位になってするシチュエーションもあると思うけど、奉仕って呼ばれる時もあるし」

「確かに……、そうですけど」

「……俺、割と小心者だから、お前に酷い事したくないんだよ」

　その言葉を聞き、私は目をまん丸に見開いた。

（どの口が『酷い事をしたくない』と！）

　ノリノリになった彼は、意地悪な事を言うし、私のお尻だって叩いた。

　泣いて『許して』って哀願しても聞いてくれずに、めっちゃ犯してきた。

　……まぁ、それが良かった私も私なんだけど……。

　どう返事をしたものかと考えていると、尊さんは微妙な顔で笑った。

「同意の上でなら大体の事はするけど、あんまりお前の口に汚いもんを入れたくないんだよ。お前のその口は、美味い飯を食うためにあるとでも思っておけ」

「汚いって……」

　私は困惑して溜め息をつく。

　この人めっちゃクンニしてくるし、後孔にも触ってくるくせに、自分のは駄目だっていうの？

（……なんか……、見守っていた間、兄のような気持ちになっていたからっていうのもあるんだろうけど、この人、ちょっと過保護かも）

　そう思うと、呆れると同時に笑えてしまった。

　そして大切に思うからこそ、嫉妬もしてしまう。

　フェラしていた時にムキになったのは、宮本さんの存在を思いだしたからだ。

　彼女がもし同じ事をしていたなら、私のほうがずっとうまくやれるって示したかった。

（……そんな事を考えていたなんて知ったら、呆れられるかな）

　思い詰めた表情をしていたからか、尊さんが少し首を傾げて私に視線を合わせてきた。

「どうかしたか？」