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確かめ合う気持ち 編
側にいますし、支えます
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「怜香さんが舞台から去った今、私たちの結婚に反対する人はいなくなったと思います。……でもそれだけじゃ済みませんよね」
気になっていた事を言うと、彼は真剣な表情で重々しく頷く。
「ああ、あいつがやらかした事がニュースになれば、篠宮フーズの株価は大暴落、バッシングされるだろう。母が社長の不倫相手と知られれば、父が叩かれるのは勿論、俺が婚外子である事も明るみになり、渦中の人となる」
これから訪れる事を予想し、私はギュッと尊さんの手を握った。
「側にいますし、支えます」
「……これから父や兄貴、役員たちが火消しに奔走するだろう。騒ぎが収まるまでは静かにしていたほうがいい。結婚式を挙げるまでは時間が掛かるし、式場や招待客などもまだ決まってない。会社ではしばらく今まで通り上司と部下を通して、ほとぼりが冷めた頃に式を挙げよう。何もこっちから周りを刺激する必要はないから」
「はい」
亘さんは特に大変な思いをするだろうけど、彼がすべての元凶でもあるんだから、しっかり責任を取ってほしい。
「……尊さんは大丈夫ですか?」
「ん?」
彼は優しい顔で尋ねてくる。
「今まで〝速水部長〟として過ごしてきたのに、実は社長の息子とか、社長夫人にお母さんと妹さんを殺されたとか……、噂の的になるでしょう」
「んー、ストレス耐性は強いからな。まったくダメージを負わない訳じゃないけど、俺には朱里がいる。それに糾弾されるべき〝悪〟は俺じゃないしな。むしろ、うまく立ち回れば俺は被害者の側で済むと思うけど」
そこまで言って、尊さんはニヤリと笑う。
「下手すれば、親父は辞任だな。後釜には風磨がつくかもしれねぇし、若すぎるって声が出たなら他の役員が社長になるだろう。不祥事があっても篠宮フーズはでけぇ会社だから、倒産の危機はない。今後の方針は上層部……、祖父さんたちの話し合い次第だな」
「お祖父さんって……、名誉会長?」
尋ねると、尊さんは鼻で笑う。
「そ、定年のない妖怪。死ぬまで会社から金をもらってるから、そりゃあ優雅なもんだよ。それも年収何千万の世界だ」
「ひえ……」
まさか定年がなく、そんなに大金をもらっている人がいると思わず、私は目を見開く。
「ひでー世界だろ? 妖怪は親父なんかよりずっと権力を持ってるからな。そいつらから見れば、親父なんてただの駒だ。あいつが辞任しても会社は困らないし、火消しができるなら喜んで辞任させるだろ。それで子会社かどこかに新しいポストを用意するんだよ」
「うわぁ……。天上人の闇……」
私のような平社員には分からない世界なので、ドン引きだ。
その時、部屋のチャイムが鳴った。
「お、ようやく来たか」
バスローブ姿の尊さんはソファから立ちあがり、出入り口に向かう。
そして服を持ってきたコンシェルジュさんと会話をしてから、紙袋を手にして戻ってきた。
「お前も着替えろよ。レストランの席を用意してくれるって言ってたから、気分転換に飯を楽しもうぜ」
「はい」
尊さんは気を遣ってくれてベッドルームで着替えるらしく、私はちょっと迷ってから洗面所で着替える事にした。
服を汚したと言われてもほんのちょっとで、濡れタオルでちょんちょん拭けば大丈夫な程度だ。
(でも気にしてるんだろうな。あそこまで弱った姿を見せてしまった訳だし)
ボロボロに傷付いて泣いて、嘔吐した彼を思いだすと胸の奥がギュッとなる。
紙袋に入っていたのは、百貨店に入っている系のブランド服だった。
値札は当然取られているけれど、トップス、ボトムスそれぞれ万は超える……と思う。
(いやいや、贈られた物の値段を考えたら失礼だ!)
私はピシャッと両手で頬を叩き、着ていた服を脱いで着替え始める。
替える必要がないのに、ストッキングまでお高級そうな新品が入っていた。
彼がコンシェルジュさんに伝えて買ってきてもらったのは、黒いハイネックの縦リブニットで、バルーンスリーブの手首がやや長めに絞ってある。それに合わせるボトムスは、ハイウエストで白と黒の千鳥格子柄のマーメイドスカートだ。
……うん、いや、こういう服好きだけど、さっき感情が乱れていた中で、よくここまで私にマッチした服を頼めたな……。さすがだ。しかもサイズピッタリじゃん。
(ニットは伸びるから、胸元気にしなくていいんだよな。ボトムはそれほど苦労しないんだけど)
スカートのウエストファスナーを上げながら思い、せっかく洗面所にいるのでうがいをした。
(ちょっとファンデよれてるかな。少しメイク直しするか)
もと着ていた服は紙袋に入れ、私はリビングダイニングに戻る。
「お待たせです。私、ちょっと化粧直し……、…………あぁ……」
私は着替えた尊さんの姿を見て、感嘆の溜め息をついてしまう。
気になっていた事を言うと、彼は真剣な表情で重々しく頷く。
「ああ、あいつがやらかした事がニュースになれば、篠宮フーズの株価は大暴落、バッシングされるだろう。母が社長の不倫相手と知られれば、父が叩かれるのは勿論、俺が婚外子である事も明るみになり、渦中の人となる」
これから訪れる事を予想し、私はギュッと尊さんの手を握った。
「側にいますし、支えます」
「……これから父や兄貴、役員たちが火消しに奔走するだろう。騒ぎが収まるまでは静かにしていたほうがいい。結婚式を挙げるまでは時間が掛かるし、式場や招待客などもまだ決まってない。会社ではしばらく今まで通り上司と部下を通して、ほとぼりが冷めた頃に式を挙げよう。何もこっちから周りを刺激する必要はないから」
「はい」
亘さんは特に大変な思いをするだろうけど、彼がすべての元凶でもあるんだから、しっかり責任を取ってほしい。
「……尊さんは大丈夫ですか?」
「ん?」
彼は優しい顔で尋ねてくる。
「今まで〝速水部長〟として過ごしてきたのに、実は社長の息子とか、社長夫人にお母さんと妹さんを殺されたとか……、噂の的になるでしょう」
「んー、ストレス耐性は強いからな。まったくダメージを負わない訳じゃないけど、俺には朱里がいる。それに糾弾されるべき〝悪〟は俺じゃないしな。むしろ、うまく立ち回れば俺は被害者の側で済むと思うけど」
そこまで言って、尊さんはニヤリと笑う。
「下手すれば、親父は辞任だな。後釜には風磨がつくかもしれねぇし、若すぎるって声が出たなら他の役員が社長になるだろう。不祥事があっても篠宮フーズはでけぇ会社だから、倒産の危機はない。今後の方針は上層部……、祖父さんたちの話し合い次第だな」
「お祖父さんって……、名誉会長?」
尋ねると、尊さんは鼻で笑う。
「そ、定年のない妖怪。死ぬまで会社から金をもらってるから、そりゃあ優雅なもんだよ。それも年収何千万の世界だ」
「ひえ……」
まさか定年がなく、そんなに大金をもらっている人がいると思わず、私は目を見開く。
「ひでー世界だろ? 妖怪は親父なんかよりずっと権力を持ってるからな。そいつらから見れば、親父なんてただの駒だ。あいつが辞任しても会社は困らないし、火消しができるなら喜んで辞任させるだろ。それで子会社かどこかに新しいポストを用意するんだよ」
「うわぁ……。天上人の闇……」
私のような平社員には分からない世界なので、ドン引きだ。
その時、部屋のチャイムが鳴った。
「お、ようやく来たか」
バスローブ姿の尊さんはソファから立ちあがり、出入り口に向かう。
そして服を持ってきたコンシェルジュさんと会話をしてから、紙袋を手にして戻ってきた。
「お前も着替えろよ。レストランの席を用意してくれるって言ってたから、気分転換に飯を楽しもうぜ」
「はい」
尊さんは気を遣ってくれてベッドルームで着替えるらしく、私はちょっと迷ってから洗面所で着替える事にした。
服を汚したと言われてもほんのちょっとで、濡れタオルでちょんちょん拭けば大丈夫な程度だ。
(でも気にしてるんだろうな。あそこまで弱った姿を見せてしまった訳だし)
ボロボロに傷付いて泣いて、嘔吐した彼を思いだすと胸の奥がギュッとなる。
紙袋に入っていたのは、百貨店に入っている系のブランド服だった。
値札は当然取られているけれど、トップス、ボトムスそれぞれ万は超える……と思う。
(いやいや、贈られた物の値段を考えたら失礼だ!)
私はピシャッと両手で頬を叩き、着ていた服を脱いで着替え始める。
替える必要がないのに、ストッキングまでお高級そうな新品が入っていた。
彼がコンシェルジュさんに伝えて買ってきてもらったのは、黒いハイネックの縦リブニットで、バルーンスリーブの手首がやや長めに絞ってある。それに合わせるボトムスは、ハイウエストで白と黒の千鳥格子柄のマーメイドスカートだ。
……うん、いや、こういう服好きだけど、さっき感情が乱れていた中で、よくここまで私にマッチした服を頼めたな……。さすがだ。しかもサイズピッタリじゃん。
(ニットは伸びるから、胸元気にしなくていいんだよな。ボトムはそれほど苦労しないんだけど)
スカートのウエストファスナーを上げながら思い、せっかく洗面所にいるのでうがいをした。
(ちょっとファンデよれてるかな。少しメイク直しするか)
もと着ていた服は紙袋に入れ、私はリビングダイニングに戻る。
「お待たせです。私、ちょっと化粧直し……、…………あぁ……」
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