118 / 417
確かめ合う気持ち 編
責任とれ!
しおりを挟む
「……昭人と付き合っていても、私の心の底には〝忍〟がいたんです。ドラマチックな出会いをしたからこそ、私は〝忍〟を理想化してしまいました。昭人と付き合っていても『〝忍〟ならもっと大人っぽい対応をしてくれる』『〝忍〟は大人だから、きっとエッチも上手に決まってる』と思っていました」
私の言葉を聞き、尊さんは静かに瞠目する。
「それって……」
「多分、私が昭人に本気になれなかったのって、価値観の違いもありましたけど、心の底で〝忍〟を想っていたからうまくいかなかったんです」
言ったあと、私は「はぁっ」と溜め息をつき、泣き笑いの表情で彼の胸板をバンッと叩いた。
「責任とれ!」
「…………勿論」
尊さんは色んな感情が混じった表情でぎこちなく微笑み、おずおずと私を抱き締めた。
その表情には、誰にも秘密にしていた事を、やっと口に出来た安堵がある。
すべて打ち明けて私に嫌われるか心配し、受け入れられた喜びもある。でもそれだけじゃ解決しない、申し訳なさや遠慮、悲しみもある。
「……もぉ……」
私は微笑んで尊さんを抱き締めた。
「……色々あったんですよね。あなたの身に起こった出来事はあまりに壮絶で、普通の人なら精神的に参ってしまってもおかしくなかった。……でも尊さんは妹さんと同じ名前の私に、光を見いだしてくれた」
私はそう言ったあと、顔を上げて尊さんの頬を両手で包んだ。
「私に遠慮しないでくださいね。そりゃあ、ちょっとびっくりしたけど、これで尊さんを嫌うなんてあり得ませんから。私はあなたをずっと想い続けていたし、あなたが必要。あなたにも私が必要」
そこまで言い、私はニコッと笑った。
「これこそ〝運命〟じゃないですか。大人になって私たちは出会えた。なら、ちゃんと向き合ってくれるんでしょう? ……もう、何があっても離れてあげませんからね」
私はにっこり微笑み、彼に口づけた。
唇を押しつけていると、尊さんはギュウ……と私を抱き締めてきた。
気持ちを確認し合うようなキスをしたあと、彼は泣きそうな顔で笑う。
「お前、やっぱり最高の女だわ」
「当たり前です。私はあなたをずっと想い続けていました。初恋の〝忍〟と再会できたら、好きになってもらいたい。そのために素敵な女性になれたら……って思っていたんですから」
そう言ったあと、彼の手を握って自分の胸に導いた。
「胸が大きいのがコンプレックスで、本当は背中を丸めて過ごしたかった。でも〝忍〟なら『自分の体を誇りに思え』って言ってくれると思っていました。だからスタイルが良く見えるように運動したし、美容も学びました」
これまでの努力を打ち明け、私は吐息を震わせて笑った。
「全部、〝忍〟と再会できる日を信じて、その時にあなたに『綺麗になった』って言ってもらいたかったから。周りにどう思われようが気にせず突き進めたんです」
尊さんは切なげに笑って、涙声で言った私の髪を撫でた。
「今まで『美人』と言われたり、胸が大きいのもあってあらゆるスカウトを受けました。目立つと同時に、何もしていないのに嫉妬されましたし、学生時代の延長で日常的にコソコソ言われていました。『男を誘ってる』とか『媚びてるんじゃない?』とか『下品な体』とか……」
「お前の体は最高に綺麗だよ」
彼ならそう言ってくれると思っていた私は、涙を拭って微笑む。
「私はいつか現れると信じていた王子様――〝忍〟に褒めてもらうために、外見を磨いて勉強も頑張りました。けど、あの時の彼に、いつ会えるか分かりません。再会できる保証もありません。それに学生時代は、私も彼氏を作らなければ『遅れていてダサい』のかと悩んでしまいました」
大人になった今なら分かる。
周りに合わせて、好きでもない人と付き合う必要なんてない。
そんなの、自分の心にも相手にも失礼だ。
「昭人に告白された時、『気が合いそうだから一緒にいたい』と言われました。彼と過ごすようになって、家庭の悩みでささくれ立っていた心が落ち着いたのは事実です。……でもそうしているうちに、『このまま忍とは会えないのかもしれない』と弱気になっていきました」
私は尊さんを見つめ、彼の頬に手を添える。
「『〝忍〟は素敵な人だし、彼女がいるかもしれない。私の知らないところで綺麗な女性に笑いかけて、抱き締めてキスをし、セックスしてるかもしれない』……そう思うとムカムカして、『私だって……』という気持ちになりました」
尊さんは「分かるよ」というように頷き、私の髪を撫でる。
私の言葉を聞き、尊さんは静かに瞠目する。
「それって……」
「多分、私が昭人に本気になれなかったのって、価値観の違いもありましたけど、心の底で〝忍〟を想っていたからうまくいかなかったんです」
言ったあと、私は「はぁっ」と溜め息をつき、泣き笑いの表情で彼の胸板をバンッと叩いた。
「責任とれ!」
「…………勿論」
尊さんは色んな感情が混じった表情でぎこちなく微笑み、おずおずと私を抱き締めた。
その表情には、誰にも秘密にしていた事を、やっと口に出来た安堵がある。
すべて打ち明けて私に嫌われるか心配し、受け入れられた喜びもある。でもそれだけじゃ解決しない、申し訳なさや遠慮、悲しみもある。
「……もぉ……」
私は微笑んで尊さんを抱き締めた。
「……色々あったんですよね。あなたの身に起こった出来事はあまりに壮絶で、普通の人なら精神的に参ってしまってもおかしくなかった。……でも尊さんは妹さんと同じ名前の私に、光を見いだしてくれた」
私はそう言ったあと、顔を上げて尊さんの頬を両手で包んだ。
「私に遠慮しないでくださいね。そりゃあ、ちょっとびっくりしたけど、これで尊さんを嫌うなんてあり得ませんから。私はあなたをずっと想い続けていたし、あなたが必要。あなたにも私が必要」
そこまで言い、私はニコッと笑った。
「これこそ〝運命〟じゃないですか。大人になって私たちは出会えた。なら、ちゃんと向き合ってくれるんでしょう? ……もう、何があっても離れてあげませんからね」
私はにっこり微笑み、彼に口づけた。
唇を押しつけていると、尊さんはギュウ……と私を抱き締めてきた。
気持ちを確認し合うようなキスをしたあと、彼は泣きそうな顔で笑う。
「お前、やっぱり最高の女だわ」
「当たり前です。私はあなたをずっと想い続けていました。初恋の〝忍〟と再会できたら、好きになってもらいたい。そのために素敵な女性になれたら……って思っていたんですから」
そう言ったあと、彼の手を握って自分の胸に導いた。
「胸が大きいのがコンプレックスで、本当は背中を丸めて過ごしたかった。でも〝忍〟なら『自分の体を誇りに思え』って言ってくれると思っていました。だからスタイルが良く見えるように運動したし、美容も学びました」
これまでの努力を打ち明け、私は吐息を震わせて笑った。
「全部、〝忍〟と再会できる日を信じて、その時にあなたに『綺麗になった』って言ってもらいたかったから。周りにどう思われようが気にせず突き進めたんです」
尊さんは切なげに笑って、涙声で言った私の髪を撫でた。
「今まで『美人』と言われたり、胸が大きいのもあってあらゆるスカウトを受けました。目立つと同時に、何もしていないのに嫉妬されましたし、学生時代の延長で日常的にコソコソ言われていました。『男を誘ってる』とか『媚びてるんじゃない?』とか『下品な体』とか……」
「お前の体は最高に綺麗だよ」
彼ならそう言ってくれると思っていた私は、涙を拭って微笑む。
「私はいつか現れると信じていた王子様――〝忍〟に褒めてもらうために、外見を磨いて勉強も頑張りました。けど、あの時の彼に、いつ会えるか分かりません。再会できる保証もありません。それに学生時代は、私も彼氏を作らなければ『遅れていてダサい』のかと悩んでしまいました」
大人になった今なら分かる。
周りに合わせて、好きでもない人と付き合う必要なんてない。
そんなの、自分の心にも相手にも失礼だ。
「昭人に告白された時、『気が合いそうだから一緒にいたい』と言われました。彼と過ごすようになって、家庭の悩みでささくれ立っていた心が落ち着いたのは事実です。……でもそうしているうちに、『このまま忍とは会えないのかもしれない』と弱気になっていきました」
私は尊さんを見つめ、彼の頬に手を添える。
「『〝忍〟は素敵な人だし、彼女がいるかもしれない。私の知らないところで綺麗な女性に笑いかけて、抱き締めてキスをし、セックスしてるかもしれない』……そう思うとムカムカして、『私だって……』という気持ちになりました」
尊さんは「分かるよ」というように頷き、私の髪を撫でる。
38
お気に入りに追加
817
あなたにおすすめの小説
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
男友達を家に入れたら催眠術とおもちゃで責められ調教されちゃう話
mian
恋愛
気づいたら両手両足を固定されている。
クリトリスにはローター、膣には20センチ弱はある薄ピンクの鉤型が入っている。
友達だと思ってたのに、催眠術をかけられ体が敏感になって容赦なく何度もイかされる。気づけば彼なしではイけない体に作り変えられる。SM調教物語。
【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!
臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。
そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。
※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています
※表紙はニジジャーニーで生成しました
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
【R18】鬼上司は今日も私に甘くない
白波瀬 綾音
恋愛
見た目も中身も怖くて、仕事にストイックなハイスペ上司、高濱暁人(35)の右腕として働く私、鈴木梨沙(28)。接待で終電を逃した日から秘密の関係が始まる───。
逆ハーレムのチームで刺激的な日々を過ごすオフィスラブストーリー
法人営業部メンバー
鈴木梨沙:28歳
高濱暁人:35歳、法人営業部部長
相良くん:25歳、唯一の年下くん
久野さん:29歳、一個上の優しい先輩
藍沢さん:31歳、チーフ
武田さん:36歳、課長
加藤さん:30歳、法人営業部事務
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる