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篠宮家 編
その覚悟はあるか?
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「先に言っておく。俺は自分の望みを叶えるためなら、多少の犠牲はやむなしと思っている。お前達にその覚悟はあるか?」
尊さんに尋ねられ、風磨さんとエミリさんは視線を交わす。
二人は、テーブルの下で手を握り合ったようだった。
「勿論だ」
「風磨さんと結婚したいと決めた日から、何があろうと乗り越えるつもりでいます」
二人の言葉を聞いても、尊さんはさらに尋ねる。
「母親のどんな姿を見ても? 絶望的な真実を知っても? 最悪、あの家から怜香さんがいなくなっても?」
尊さんの真剣な横顔を見て、私は彼が抱えている〝爆弾〟の大きさを察した。
「あの女は改心するタマじゃない。意見を言えなくなるぐらい叩きのめすしかない。『そこまでしなくても』と思うかもしれないが、『やめてほしい』と言ってやめる女なら、今こんな話をしていない。それに、あの女をつけ上がらせた父と俺たち兄弟が、責任持って始末をつけないといけない事情がある」
余程の事をするつもりだと理解したのか、風磨さんは表情を引き締めて頷いた。
「構わない。この年齢になってまだ結婚できず、母親の陰に怯えているのはおかしい。僕は大人の男で、自分の妻ぐらい自分で決められる。政略結婚をしなくても、今後の篠宮フーズの業績を上げていく実力もあるつもりだ。それに、父が母に負い目を持つのは分かるが、僕は能力のある尊がいつまでも部長職にいる事を、ずっと不満に思っていた」
……良かった。
風磨さんの本音を聞いて、私は心底安心した。
家族の中に絶対的な味方がいたじゃない。
今までは男兄弟だし、あまり本音を言い合えなかったかもしれない。
でもお互い同じ目的のためなら、こんなにも協力し合える。
「じゃあ、三ノ宮さんに先に連絡をしておく必要がある。多少なりとも巻き込んでしまうから、根回しはしておかないと」
あ、やっぱりお見合いクラッシャーの戦法でいくんですね。
「分かった。……ところで、尊が抱えているネタは今言えない事か?」
風磨さんの質問を聞き、尊さんは首を横に振った。
「兄貴は人がいいから絶対動揺する。だから今は言わない。爆弾を落として悪役になるのは、俺だけでいい」
「っそういうの……っ!」
私はカッとなって、とっさに尊さんのジャケットを掴んだ。
けれど彼はいつもの穏やかな顔で私を見つめ、その手を優しく振りほどいた。
「俺自身が決着をつけないといけない事なんだ。過去に清算をつけて、お前と歩んでいくためには、絶対に必要な事だ。……だから、やる」
「やらせてくれ」じゃなくて、「やる」。
その言葉一つで、彼の決意の深さを知った。
私は胸の奥にしまっている尊さんの姿を思いだし――、コクンと頷いた。
この人が解き放たれるなら、もっと自由に生きられるなら、側できちんと見届けよう。
「じゃあ、兄貴、三ノ宮さんに『話がしたい』って連絡してくれ。日付は一月六日土曜日、時間は……そうだな、十四時にパークウェルティーズ東京のラウンジカフェで」
「……やけに具体的ですね?」
私が尋ねると、尊さんはニヤリと笑った。
「時限爆弾なんだ」
「……相当な威力があるのは、何となく想像します」
「見届けるためにお前にも来てもらうけど、被弾はさせないよ」
「ありがとうございます。盾にします」
「……お前、塩対応になるにはまだ早いぞ。エミリを見習うな」
尊さんは私の顎をキュッと掴み、不満げに目を細める。
その様子を、風磨さんがニコニコして見ていた。
「尊に好きな人ができて本当に良かったよ。朱里さんはいい人っぽいし、これからお付き合いできるのが楽しみだな」
風磨さんの言葉を聞いて、尊さんが「は?」とでも言いたそうな顔をしたからか、彼は慌てて言い直す。
「いや、家族ぐるみというか、グループデート?」
「学生じゃないんだから、勘弁してくれ」
意外と可愛い兄弟のやり取りを見て、私とエミリさんはクスクス笑った。
**
それから問題の一月六日になるまでは、師走という事でめちゃくちゃ忙しく過ごした。
けど、週末にあるクリスマスには尊さんとデートできた。
彼が前に言っていたように、昭人とした事を〝上位互換の上書き〟をする内容だ。
昭人はお洒落なレストランや、ちょっといいホテルに連れて行ってくれた。
でも尊さんが選んだ場所はどこもワンランク上だった。
ほっぺが落ちるような美味しい料理を食べ、美味しいワインを遠慮なく飲ませてもらった。
尊さんに尋ねられ、風磨さんとエミリさんは視線を交わす。
二人は、テーブルの下で手を握り合ったようだった。
「勿論だ」
「風磨さんと結婚したいと決めた日から、何があろうと乗り越えるつもりでいます」
二人の言葉を聞いても、尊さんはさらに尋ねる。
「母親のどんな姿を見ても? 絶望的な真実を知っても? 最悪、あの家から怜香さんがいなくなっても?」
尊さんの真剣な横顔を見て、私は彼が抱えている〝爆弾〟の大きさを察した。
「あの女は改心するタマじゃない。意見を言えなくなるぐらい叩きのめすしかない。『そこまでしなくても』と思うかもしれないが、『やめてほしい』と言ってやめる女なら、今こんな話をしていない。それに、あの女をつけ上がらせた父と俺たち兄弟が、責任持って始末をつけないといけない事情がある」
余程の事をするつもりだと理解したのか、風磨さんは表情を引き締めて頷いた。
「構わない。この年齢になってまだ結婚できず、母親の陰に怯えているのはおかしい。僕は大人の男で、自分の妻ぐらい自分で決められる。政略結婚をしなくても、今後の篠宮フーズの業績を上げていく実力もあるつもりだ。それに、父が母に負い目を持つのは分かるが、僕は能力のある尊がいつまでも部長職にいる事を、ずっと不満に思っていた」
……良かった。
風磨さんの本音を聞いて、私は心底安心した。
家族の中に絶対的な味方がいたじゃない。
今までは男兄弟だし、あまり本音を言い合えなかったかもしれない。
でもお互い同じ目的のためなら、こんなにも協力し合える。
「じゃあ、三ノ宮さんに先に連絡をしておく必要がある。多少なりとも巻き込んでしまうから、根回しはしておかないと」
あ、やっぱりお見合いクラッシャーの戦法でいくんですね。
「分かった。……ところで、尊が抱えているネタは今言えない事か?」
風磨さんの質問を聞き、尊さんは首を横に振った。
「兄貴は人がいいから絶対動揺する。だから今は言わない。爆弾を落として悪役になるのは、俺だけでいい」
「っそういうの……っ!」
私はカッとなって、とっさに尊さんのジャケットを掴んだ。
けれど彼はいつもの穏やかな顔で私を見つめ、その手を優しく振りほどいた。
「俺自身が決着をつけないといけない事なんだ。過去に清算をつけて、お前と歩んでいくためには、絶対に必要な事だ。……だから、やる」
「やらせてくれ」じゃなくて、「やる」。
その言葉一つで、彼の決意の深さを知った。
私は胸の奥にしまっている尊さんの姿を思いだし――、コクンと頷いた。
この人が解き放たれるなら、もっと自由に生きられるなら、側できちんと見届けよう。
「じゃあ、兄貴、三ノ宮さんに『話がしたい』って連絡してくれ。日付は一月六日土曜日、時間は……そうだな、十四時にパークウェルティーズ東京のラウンジカフェで」
「……やけに具体的ですね?」
私が尋ねると、尊さんはニヤリと笑った。
「時限爆弾なんだ」
「……相当な威力があるのは、何となく想像します」
「見届けるためにお前にも来てもらうけど、被弾はさせないよ」
「ありがとうございます。盾にします」
「……お前、塩対応になるにはまだ早いぞ。エミリを見習うな」
尊さんは私の顎をキュッと掴み、不満げに目を細める。
その様子を、風磨さんがニコニコして見ていた。
「尊に好きな人ができて本当に良かったよ。朱里さんはいい人っぽいし、これからお付き合いできるのが楽しみだな」
風磨さんの言葉を聞いて、尊さんが「は?」とでも言いたそうな顔をしたからか、彼は慌てて言い直す。
「いや、家族ぐるみというか、グループデート?」
「学生じゃないんだから、勘弁してくれ」
意外と可愛い兄弟のやり取りを見て、私とエミリさんはクスクス笑った。
**
それから問題の一月六日になるまでは、師走という事でめちゃくちゃ忙しく過ごした。
けど、週末にあるクリスマスには尊さんとデートできた。
彼が前に言っていたように、昭人とした事を〝上位互換の上書き〟をする内容だ。
昭人はお洒落なレストランや、ちょっといいホテルに連れて行ってくれた。
でも尊さんが選んだ場所はどこもワンランク上だった。
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