29 / 778
初デート 編
この人なら大丈夫かもしれない
しおりを挟む
「――――性格悪っ」
「何を今さら」
尊さんは小さく笑い、私の頭をクシャクシャと撫でてくる。
「過去を振り向くなよ。終わった男の事を考えても、幸せになれる訳じゃない。お前を幸せにするのは、目の前にいる俺だ。それを忘れるなよ」
「…………それで口説いたつもりですか」
心を揺さぶられるのが悔しくて、私は憎まれ口を叩く。
「言ったろ? お前が俺を快く思っていないのは分かってるって。一回口説いて駄目なら、何回もトライするよ」
「…………くそったれ」
恥ずかしくて、私は照れ隠しに吐き捨てる。
けれど尊さんはニヤニヤ笑って私の顎をとらえると、チュッとキスをしてきた。
「悪い口だな」
「~~~~そういうの……っ」
抵抗しようと思ったのに、ソファの上に押し倒されてもう一度噛み付くようなキスをされた。
「もう忘れろよ。俺といる時間が勿体ない」
今度は真顔で言われ、ドキンッと胸が高鳴る。
「朱里の話を聞くためにホテルに来た。でも、一晩中元彼への未練を聞くためじゃない」
もっともな事を言われ、私は黙り込む。
「忘れるためなら、どれだけだって聞いてやるよ。でも未練タラタラな泣き言を長時間聞くほど、俺は人ができてない。そこまで優しくねぇよ」
「っ…………」
涙がこみ上げ、私は横を向くと尊さんの胸板を押す。
「私……っ、尊さんの事だって利用するかもしれない」
「利用しろよ。傷の舐め合いだとしても、それが愛じゃないと誰が言った? 本当の愛ってなんだよ。世間様から認められて、褒め称えられる純粋で美しい愛じゃないと、付き合ったら駄目なのか?」
「うぅ……っ」
――押し流される。
「付き合う事だって、結婚だって、好き嫌いも愛も、明確な〝正解〟がある訳ねぇだろ。惹かれ合ったなら付き合って、魅力的だと思ったらセックスして、好きになれそうだと思えば手探りで進んでいけばいい。死ぬまで連れ添った高齢の夫婦だって、自分の人生の何が正解で、何が間違えていたかなんて正確には分かりゃしねぇんだよ。その歳になるまで、人生の選択肢は無限にあったんだから」
「……っじゃ、じゃあ……っ、どうやったら幸せになれるの……っ? ――――もう、……失敗したくない……っ!」
考えるより本能から言葉が漏れ、私は納得した。
私は昭人にフラれて深く傷付いたからこそ、もう同じ失敗を繰り返したくないと思っていた。
尊さんと付き合おうと覚悟を決めたけれど、彼が私を選んで本当に付き合い、結婚してくれるかは分からない。
こんなにいい男で、実は御曹司なのに、私でいいんだろうか?
もしかしたら、利用価値がなくなったら、あっさり捨てられてしまうかもしれない。
まだ彼を心から信頼できていないから、そう思ってしまう。
「失敗のない人生なんてないんだよ。諦めろ。俺の手をとって後悔する事があったとしても、その時は俺に相談しろよ。二人で考えて、どうしたらもっと良くなるか考えればいいだろ。何かする前から『失敗するかもしれない』で動けずにいたら、何も始まらないんだよ」
「…………そう、……だけど……」
理路整然と言われ、少しずつ気持ちが落ち着いていく。
「俺だって正直、百パーセント自信をもってお前を幸せにできるか分からない。お前の事は自信を持って大切にする。でも朱里が俺の言動を嫌がる可能性はあるし、俺の家族が関わって不快な思いをさせるかもしれない。完全に幸せが保証された未来は用意してやれない」
「…………それは、仕方ないです。未来がどうなるかは誰にも分からないですから」
呟くと、尊さんは私の胸に手を当ててきた。
「こんなに近くにいるのに、俺はお前が今なにを考えているのか分からない。触れ合っても、セックスしてお前の中に潜り込んでも、心なんて分からないんだ」
少し悲しそうに言われ、胸の奥に納得が落ちた。
「俺はお前と付き合いたい。結婚するかって言ったのも、半分はノリだけど半分は本気だ。現時点で、朱里の他に魅力を感じる女はいない。だから、二人でやってみよう。まず一歩踏み出そう。行動したあとに考えればいいんだ」
そう言って、尊さんは私に手を差し伸べた。
私は少し考えたあと、そっと彼の手を握る。
「……私が間違えそうになったら、教えてください」
「俺だって間違えるよ。話し合っていこう」
尊さんがギュッと私の手を握った。
「何を今さら」
尊さんは小さく笑い、私の頭をクシャクシャと撫でてくる。
「過去を振り向くなよ。終わった男の事を考えても、幸せになれる訳じゃない。お前を幸せにするのは、目の前にいる俺だ。それを忘れるなよ」
「…………それで口説いたつもりですか」
心を揺さぶられるのが悔しくて、私は憎まれ口を叩く。
「言ったろ? お前が俺を快く思っていないのは分かってるって。一回口説いて駄目なら、何回もトライするよ」
「…………くそったれ」
恥ずかしくて、私は照れ隠しに吐き捨てる。
けれど尊さんはニヤニヤ笑って私の顎をとらえると、チュッとキスをしてきた。
「悪い口だな」
「~~~~そういうの……っ」
抵抗しようと思ったのに、ソファの上に押し倒されてもう一度噛み付くようなキスをされた。
「もう忘れろよ。俺といる時間が勿体ない」
今度は真顔で言われ、ドキンッと胸が高鳴る。
「朱里の話を聞くためにホテルに来た。でも、一晩中元彼への未練を聞くためじゃない」
もっともな事を言われ、私は黙り込む。
「忘れるためなら、どれだけだって聞いてやるよ。でも未練タラタラな泣き言を長時間聞くほど、俺は人ができてない。そこまで優しくねぇよ」
「っ…………」
涙がこみ上げ、私は横を向くと尊さんの胸板を押す。
「私……っ、尊さんの事だって利用するかもしれない」
「利用しろよ。傷の舐め合いだとしても、それが愛じゃないと誰が言った? 本当の愛ってなんだよ。世間様から認められて、褒め称えられる純粋で美しい愛じゃないと、付き合ったら駄目なのか?」
「うぅ……っ」
――押し流される。
「付き合う事だって、結婚だって、好き嫌いも愛も、明確な〝正解〟がある訳ねぇだろ。惹かれ合ったなら付き合って、魅力的だと思ったらセックスして、好きになれそうだと思えば手探りで進んでいけばいい。死ぬまで連れ添った高齢の夫婦だって、自分の人生の何が正解で、何が間違えていたかなんて正確には分かりゃしねぇんだよ。その歳になるまで、人生の選択肢は無限にあったんだから」
「……っじゃ、じゃあ……っ、どうやったら幸せになれるの……っ? ――――もう、……失敗したくない……っ!」
考えるより本能から言葉が漏れ、私は納得した。
私は昭人にフラれて深く傷付いたからこそ、もう同じ失敗を繰り返したくないと思っていた。
尊さんと付き合おうと覚悟を決めたけれど、彼が私を選んで本当に付き合い、結婚してくれるかは分からない。
こんなにいい男で、実は御曹司なのに、私でいいんだろうか?
もしかしたら、利用価値がなくなったら、あっさり捨てられてしまうかもしれない。
まだ彼を心から信頼できていないから、そう思ってしまう。
「失敗のない人生なんてないんだよ。諦めろ。俺の手をとって後悔する事があったとしても、その時は俺に相談しろよ。二人で考えて、どうしたらもっと良くなるか考えればいいだろ。何かする前から『失敗するかもしれない』で動けずにいたら、何も始まらないんだよ」
「…………そう、……だけど……」
理路整然と言われ、少しずつ気持ちが落ち着いていく。
「俺だって正直、百パーセント自信をもってお前を幸せにできるか分からない。お前の事は自信を持って大切にする。でも朱里が俺の言動を嫌がる可能性はあるし、俺の家族が関わって不快な思いをさせるかもしれない。完全に幸せが保証された未来は用意してやれない」
「…………それは、仕方ないです。未来がどうなるかは誰にも分からないですから」
呟くと、尊さんは私の胸に手を当ててきた。
「こんなに近くにいるのに、俺はお前が今なにを考えているのか分からない。触れ合っても、セックスしてお前の中に潜り込んでも、心なんて分からないんだ」
少し悲しそうに言われ、胸の奥に納得が落ちた。
「俺はお前と付き合いたい。結婚するかって言ったのも、半分はノリだけど半分は本気だ。現時点で、朱里の他に魅力を感じる女はいない。だから、二人でやってみよう。まず一歩踏み出そう。行動したあとに考えればいいんだ」
そう言って、尊さんは私に手を差し伸べた。
私は少し考えたあと、そっと彼の手を握る。
「……私が間違えそうになったら、教えてください」
「俺だって間違えるよ。話し合っていこう」
尊さんがギュッと私の手を握った。
182
あなたにおすすめの小説
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
今さらやり直しは出来ません
mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。
落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。
そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……
2番目の1番【完】
綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。
騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。
それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。
王女様には私は勝てない。
結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。
※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです
自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。
批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます
久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」
大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。
彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。
しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。
失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。
彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。
「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。
蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。
地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。
そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。
これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。
数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。
初めから離婚ありきの結婚ですよ
ひとみん
恋愛
シュルファ国の王女でもあった、私ベアトリス・シュルファが、ほぼ脅迫同然でアルンゼン国王に嫁いできたのが、半年前。
嫁いできたは良いが、宰相を筆頭に嫌がらせされるものの、やられっぱなしではないのが、私。
ようやく入手した離縁届を手に、反撃を開始するわよ!
ご都合主義のザル設定ですが、どうぞ寛大なお心でお読み下さいマセ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる