上 下
39 / 109

これを着ろということかしら?

しおりを挟む
 結局バスルームでは濃厚なキスをずっと続けていただけで終わり、お湯がぬるくなった頃合いでリリアンナは真っ赤になってバスタブから出た。
 ホットカンには魔法で常に熱いお湯が入っているので、ディアルトのためにお湯を足し、自分は体を拭いてからそそくさとバスルームを後にした。

 もともとマッサージはするつもりでいて、そのために着替えも持って来ていた。
 だが持って来た下着類に着替えようとしたところ、入っているバスケットの隣に薄いブルーのドレスがトルソーに着せられてあった。

(これを着ろということかしら?)

 と思っても、この離宮でディアルトの部屋にドレスが置いてあって、そのドレスを着る人物はリリアンナしかいない。
 シアナは月の離宮で暮らしていても、まったく別の場所で生活している。
 離宮といっても立派な城であり、中庭を中心としてロの字型に区画が分けられてあった。
 とりあえず下着とペチコートを身につけてから、リリアンナはドレスをじぃっと見てみる。

「あ……」

 すると、トルソーの首に青いリボンが結ばれていて、そのリボンにカードメッセージがついている。

『親愛なるリリアンナ嬢 私のためにこのドレスを着てください ディアルト』

「ふふ……」

 ディアルトからのメッセージだと分かると、リリアンナは自然に微笑みドレスを着ることにした。
 リリアンナは普段コルセットなどを用いない。そんな物をつけていては動きづらいし、補整下着をせずとも彼女はたゆまぬ訓練で引き締まった体つきをしている。
 なので普段彼女が着るドレスは、ただ被って背中のボタンを留めるだけの、ごく簡単な作りだ。
 侍女の手伝いも要らず一人で着てしまった頃になり、ディアルトがバスルームから出てくる気配があった。

 リリアンナは廊下に控えているだろうロキアを呼びに行った。




「リリィはやっぱり青が似合うよな」

 椅子に座ったディアルトは、首にケープを巻きロキアに髪を切られている。
 シャキン、シャキンとよく研がれた鋏の音がし、ディアルトはリラックスした表情で控えているリリアンナを見る。

「そうですか? こんな素敵なドレスをありがとうございます」

 さすがリリアンナのことを熟知しているディアルトらしく、ドレスは上半身はスッキリとしたシルエットながら、下半身は重ねたチュールでスカートにボリュームを出している。窮屈なファウンデーションを用いずともレディらしいラインが出て、スカートの丈そのものも少し短めなので歩きやすい。

「ロキア、リリアンナは俺だけのものだ。いいだろう」

 最後に刷毛で髪の毛をサッサッと払われつつ、ディアルトが自慢をする。

「そうでございますね。リリアンナ様はとても美しくお強い方です」
「だろう。前線に行っても、色んな奴が俺とリリアンナの〝実際のところ〟を聞きたがってな」
「殿下、そろそろお食事なのでは?」

 スッと冷たい視線をやりつつ横やりを入れるリリアンナは、もういつもの調子を取り戻している。
 ディアルトは「あぁ、これが堪らないんだよなぁ」と幸せそうに言ってからケープを取られ伸びをした。

「では、シアナ様がお待ちですので、ご案内致します」

 ロキアがドアを開き、二人をシアナが待っている晩餐室まで先導した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!

臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。 そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。 ※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています ※表紙はニジジャーニーで生成しました

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

淫らなお姫様とイケメン騎士達のエロスな夜伽物語

瀬能なつ
恋愛
17才になった皇女サーシャは、国のしきたりに従い、6人の騎士たちを従えて、遥か彼方の霊峰へと旅立ちます。 長い道中、姫を警護する騎士たちの体力を回復する方法は、ズバリ、キスとH! 途中、魔物に襲われたり、姫の寵愛を競い合う騎士たちの様々な恋の駆け引きもあったりと、お姫様の旅はなかなか困難なのです?!

【R-18】年下国王の異常な執愛~義母は義息子に啼かされる~【挿絵付】

臣桜
恋愛
『ガーランドの翠玉』、『妖精の紡いだ銀糸』……数々の美辞麗句が当てはまる17歳のリディアは、国王ブライアンに見初められ側室となった。しかし間もなくブライアンは崩御し、息子であるオーガストが成人して即位する事になった。17歳にして10歳の息子を持ったリディアは、戸惑いつつも宰相の力を借りオーガストを育てる。やがて11年後、21歳になり成人したオーガストは国王となるなり、28歳のリディアを妻に求めて……!? ※毎日更新予定です ※血の繋がりは一切ありませんが、義息子×義母という特殊な関係ですので地雷っぽい方はお気をつけください ※ムーンライトノベルズ様にも同時連載しています

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

【完結】【R18】伯爵夫人の務めだと、甘い夜に堕とされています。

水樹風
恋愛
 とある事情から、近衛騎士団々長レイナート・ワーリン伯爵の後妻となったエルシャ。  十六歳年上の彼とは形だけの夫婦のはずだった。それでも『家族』として大切にしてもらい、伯爵家の女主人として役目を果たしていた彼女。  だが結婚三年目。ワーリン伯爵家を揺るがす事件が起こる。そして……。  白い結婚をしたはずのエルシャは、伯爵夫人として一番大事な役目を果たさなければならなくなったのだ。 「エルシャ、いいかい?」 「はい、レイ様……」  それは堪らなく、甘い夜──。 * 世界観はあくまで創作です。 * 全12話

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

【R18】騎士たちの監視対象になりました

ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。 *R18は告知無しです。 *複数プレイ有り。 *逆ハー *倫理感緩めです。 *作者の都合の良いように作っています。

処理中です...