未亡人クローディアが夫を亡くした理由

臣桜

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宝探しの終わり

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 身につけたら重たげなアクセサリーも数え切れないほどあり、金の他にも色とりどりの宝石によって作られたアクセサリーが沢山あった。

「これは……。人を狂わせるな」

 後ろから歩み寄ってきたディストが、溜め息交じりに言う。

「凄いですね……。これならエチルデ再興も夢ではありません」

 ルシオも感嘆交じりに言い、何とも言えない溜め息をつく。

「中央にあるのは、きっと式典で使う宝冠ね」

 クローディアが言う通り、中央にあるチェストの上には、ガラスケースに収められた国王と王妃の宝冠が鎮座していた。

「これを……、こんなもののせいでエチルデは……」

 ランティスが呟き、クローディアも戦争という愚かな行為を引き起こした罪深い金と宝石を、何とも言えない感情で睨む。

 やがてクローディアは呟いた。

「ひとまず、これは使い道が決まるまで今まで通り隠しておきましょう。どうか、この場にいる皆さんにお願いです。この事は誰であっても、外部の者には秘密にしておいてください」

 後ろにいる者たちに対し、クローディアは深々と頭を下げる。

「ハーティリア王国王太子ディストの名にかけて、エチルデ王女クローディア殿下との約束を守ると誓おう。私が厳選してこの場に連れてきた、信頼のおける側近、騎士たちも同じように誓う。もし私を含めた何者かが約束を破った時は、その者の死をもって償う」

 ディストが宣誓し、〝死〟という単語を聞いてそれまで呆けていた者たちが表情を引き締めた。

 騎士たちは居住まいを正し、レンも深くお辞儀をする。

「僕もクローディア殿下との友情に誓います。僕は周囲が思うほど、さほど野心家ではないのです。自分の家にある程度の資産があるのを知っているので、それ以上を求めても碌な事にならないと分かっています」

 ルシオも胸に手を当て、誓いを立てる。

「私も、亡くなられた陛下、妃殿下、そして旦那様の名にかけて誓います」

 ソルが言い、バフェットの騎士たちも「同じく、エチルデとバフェットの誇りにかけて誓う」と力強く頷いた。

「……ひとまず、バフェット城の者たちと、ミケーラの両親に今回の事をすべて打ち明ける事にします」

 クローディアは決断し、「証拠として」と足元にあった金貨を一枚だけ手に取った。
 よく見てみると、金貨には表に雄山羊、裏にダリアが刻まれている。

「この国には本当に優秀な金細工職人たちがいたのね。無事だといいんだけれど」

 あまり見ると目に毒と思い、クローディアはオルガンの前まで戻ってペンダントを取った。

 すると隠し扉はゆっくり閉じ、岩間から漏れていた金色の光も消えて、もとの薄暗い広間になる。

 ペンダントはクローディアとランティスが、しっかりと身につけた。

「それにしても、このパイプオルガンの音で城の中の者にメロディーが分かってしまったりしなかったのかしら?」

 ここは空間になっているし、さぞ音が響いたのでは……と思った。

「この空間の上は玄関ホールの階段あたりとなっていますが、あそこは昔、壁面にビロードなどが貼られていました。恐らく同じように床面にも防音処理がされていたのではと思います」

 ソルが答え、クローディアは納得する。

「そろそろ出ましょうか。お腹も空いてきたわ」

 バフェット城の料理長が作ってくれた弁当を思い出し、クローディアは思いだしたように空腹を訴える。

「確かに、気が抜けたら腹が空きました」

 ルシオも同意し、そのあと全員で外に出て、新鮮な空気を吸って一息つく。

「あの閉鎖的な空間であんなものを見せられたら、ちょっとおかしくなってしまいそうなのが分かる気がするわ」

「勿論、エチルデの鉱夫たちが外部に情報を漏らした可能性はありません。それであれば、すでに宝物庫も鉱山も荒らされていると思いますし」

 ソルの言葉に、クローディアは「そうね」と頷く。

 そして全員で宮殿前の広間に敷物を敷き、座って弁当を広げる事にした。

 午前九時頃に城を出たが、恐らくエチルデに辿り着いたのは昼前。それから潜って過ごし、現在は昼すぎになっているのだろう。

「あー、美味しい」

 燻製のハムが挟まったサンドウィッチを囓り、クローディアが心底という様子で声を上げる。

 邪気のない彼女の言葉に、全員が笑った。

「殿下、これからどうされますか?」

 レンに尋ねられ、ディストは革袋に入った水を飲み頷く。
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