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だから、結婚しよう ☆

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 コウモリの羽にも似たとても大きな羽が背中から生え、お尻からは尻尾が覗き、楽しげに笑った彼の感情を表すかのように、ユラユラと動いていた。

 私を苛む無数の触手は、ハロルド様の背後にある魔法陣らしきものから生えているようだった。

「騙してすまない。健康を害する睡眠薬は使っていないから安心してくれ」

「あ……、はい……」

 私はいまだ自分がどうなったのか、彼が〝何〟なのか分からず、呆然として頷く。

「エメライン、私は淫魔だ。人の中に溶け込み、淫夢を見せては淫らな気に満ちた精気を分けてもらって生きている」

「淫魔……? え、……と。先代のガードナー候は……?」

「彼とは契約をした。先代侯爵の体質に問題があり、彼と妻の間には子が生まれなかった。彼には弟がいるが、折り合いが悪かったので可能なら弟に家督を譲りたくなかったらしい。だから私は彼と契約し、周囲の認識を歪ませて〝息子〟となった」

「あ……」

 言われて、私はいつハロルド様が当主になったのだっけ……? と首をひねる。

 けれど思い出そうとしても、若い彼が侯爵となった日を覚えていなかった。

 どうも私も認識が歪められているらしく、それを知った瞬間、背筋に寒気が走った。

「それで……、これは……」

 ニュルゥ…………と、触手に全身を撫でられた私は、ビクビクッ♡ と身を震わせながら尋ねる。

「君の精気はとても美味だ。だから私のご馳走になってくれたらと思って、ずっと機会を窺っていた」

「ごっ、ご馳走って……!」

 まさかこのまま、触手に呑まれて死……!?

 血の気を引かせた私を見て、ハロルド様は首を横に振った。

「君のような上質なご馳走を死なせる訳がない。もし君が望むなら、この世の何より気持ちいい事をしてあげよう。その上で、何でも願いを叶えてあげよう」

「わ、私は何をすれば……? あなたは何を望んでいるのです?」

 こわごわと尋ねると、彼はニッコリと笑った。

「私に愛され、抱かれていればいい。何なら、結婚して妻になってくれると嬉しい」

 ええと……。

 ずっと彼を想っていたけれど、相手が淫魔だった場合はどうすればいいのだろう。

「私、淫魔の妻になるんですか?」

「表向きは人間のふりを続けるから、君は何も困らないはずだ」

「家の中でだけ、淫魔なのですか?」

「必要がなければ羽は出さないし、触手も出さない。普通に人間の男として君を抱いてもいい」

「わ、私……、……ハロルド様を、……お慕いしていたのです」

「ああ、分かっている」

 彼はベッドの上に乗り、全裸で仰向けになっている私に迫ってくる。

「だから、結婚しよう」

 私の目の前で、彼が麗しく整った顔でにっこり微笑む。

 ……あぁ、背後で触手が神様の後光のようにブワッと広がっていますが、嬉しいんですね……。

 私はなまぬるーい笑みを浮かべ、諦めを覚える。

「健康に害を及ばさず、家族に迷惑をかけず、社交界の皆さんに後ろ指を指されないのなら……」

 幾つか条件を提示すると、ハロルド様は私の手をとって甲にキスをしてきた。

「問題ない」

 私の金髪を撫でたハロルド様は、とろりと笑って口づけてきた。

 あぁ、ずっと憧れていた方とキスできるなんて……。

 この際、淫魔だという事は割とどうでもいい。

 ……と思ってしまうぐらい、私は触手の粘液で身も心もトロトロにされていた。

 柔らかい唇が触れ合い、うっとりとした頃になって彼の舌がぬるりと入り込んでくる。

「ん……っ」

 彼にキスされている間、細い触手が私の淫芽をチロチロと撫でてきた。

「ふぅ……っ、う、――ん、んぅっ」

 ハロルド様を抱き締めようとすると、腕を捉えていた触手が離れていく。

 先ほどから全身に触手の粘液を擦りつけられ、体の奥に淫猥な熱がジンジンと宿っていた。

 私はあまりの気持ちよさに腰を揺らし、陶酔して彼の舌を吸い、舐める。

 するとハロルド様は、私の乳房を優しく揉んできた。

 粘液がついた乳首を指でヌルヌルと撫でられると、触手だけでは感じられなかった心地よさが私を襲ってくる。

「ん……っ、はぁあ……っ♡」

 私は解放された口から嬌声を漏らし、陶然と微笑む。

 彼は私の太腿を左右に開き、粘液と愛液とでヌルヌルに光っている秘唇を見て病んだ笑みを浮かべた。

「綺麗だ……」
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