【R-18】悪人は聖母に跪く

臣桜

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終章 赦す者と赦される者 ☆

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 純白のドレスはツルンとしていて、胸元から腰、スカートの中央には、金糸でオリーブの葉の刺繍がびっしりとほどこされている。

 また、オフショルダーの背中側からは、神父が肩から提げるストラのように、同じく金糸の刺繍がほどこされた帯が下がっていた。

 カタログを見ていて鞠花はこのドレスの高貴さに惹かれ、祥吾も「聖人っぽさが鞠花に似合うな」と同意して即決した。

 祥吾も同じブランドの物にし、ネクタイはシルバー、ベストはブルーグレーだ。
 彼が白を選んだのは、自分が鞠花に対して純白――何も隠さず、無垢な心で式に臨みたいと思ったかららしい。

 式は順調に進み、誓いのキスとなる。

 鞠花のウエディングヴェールを祥吾が上げ、二人は見つめ合って微笑んだ。

(お父さん、お母さん。この人と共に歩んでいきます。あの日彼を助けたのも、惹かれ合ったのも、きっと運命だと思うから)

 荘厳なパイプオルガンの音色を聴き、鞠花は目を閉じる。

 彼女の頬を祥吾の手が包み、優しく唇が重なった。

 天井の高いチャペルにパイプオルガンの音が反響し、空へ空へと続いていく気がする。

(見ていてね。私、この人と一緒に幸せになるから)

 誓いのキスが終わったあと、鞠花の目にはうっすらと涙が溜まっていた。





 ハネムーンに選んだのは、モルディブだ。

 ヨーロッパなども良かったけれど、日々ストレス過多で働いている祥吾の事を思うと、美しい海と空を眺め、日がな一日のんびりするのが一番だと思ったからだ。

「ん……、ン」

 エメラルドグリーンの海を目の前に、神殿を模した白い柱のある円形ベッドで、鞠花は生まれたままの姿で祥吾からのキスを受けていた。

「しょ……ご、さん……」

 彼の名前を呼ぶ声が、甘くかすれる。
 そんな鞠花の濡れた蜜壷を、ズグズグと祥吾の一物が前後し、擦り立てる。

「あんっ! ン……っ、ん、ぁ……、待って……。休ませて……」

 モルディブに来た初日から、祥吾は避妊具なしに何度も鞠花を求めてきた。

 初日は美しい夕焼けを見ながらビーチで夕食をとり、そのあとプルメリアの花でハートを描かれたベッドで、朝まで抱かれた。

 翌日もプールや海で水着になって遊ぶものの、人がこないのをいい事に、結局脱がされて交じり合ってしまう。

 白い砂の上で四つん這いになって貫かれたかと思えば、プールの中で浮力を利用して子供のように抱き上げられた状態で、ジャブジャブと水音を立てて突き上げられる。

 力尽きてうたた寝をし、復活した頃合いで、読書をしていた祥吾が気付き、またキスをして深い交歓となる。

 昼も夜も鞠花は甘い声を上げ、本能のままに腰を振り立てた。

 最初は「こんな退廃的な生活、駄目」と言ったものの、「こんなに休んで愛し合えるのは、滅多にないぞ?」と言われ、結局言う事を聞いてしまう。

 今もまた、西の空が赤やオレンジ、朱、黄色に金色、薄紫……と、震えがくるほど美しいグラデーションに彩られているのを見上げ、ガツガツと腰を振られていた。

「んぅ……っ、あ、あんっ、あ、あぁ……っ」

 彼が腰を突き入れるたび、鞠花の大きな乳房がユサユサと揺れる。

 鞠花を見下ろす祥吾は、汗で濡れた髪を顔に貼り付かせ、頬を流れて唇に到達した汗をペロリと舐める。

 ――綺麗な人。

 最初に抱いた印象はそのまま、こんな美しい男性と結婚したのがいまだ信じられない。

「鞠花……っ、愛してる……っ」

 色っぽくかすれた声を聞くたび、一人の女性としての自尊心が満たされてゾクゾクした。

「君だけだ……っ、好きだ……っ、ずっと、このままずっと……っ」

 果てしない願いを、熱に浮かされたように口にしながら、祥吾は鞠花を貫き、両手で乳房を揉んでは彼女のお腹や腕を撫でる。

 その目には、鞠花しか映っていない。

 ――この人を、こんな風にしてしまったのは私のせいだ。

 喜びとも反省ともつかない感情がこみ上げ、鞠花は愉悦のままに目を細めた。

 ――大丈夫、一生側にいるから。
 ――そんな、捨てられる子供みたいな目をしなくても、もう逃げないよ。

 突き上げられ犯されている中、鞠花には彼の必死な気持ちが、全身を伝わって分かる気がした。
 一度彼の前から失踪したからこそ、祥吾は二度と鞠花を失ってなるものかと、心の底に怯えを抱えている。

 ――ごめんね。

 それを申し訳なく思いつつ、これが自分なりの甘美な復讐なのだと思った。

 ――一生、私を求めて、愛して。

「好き……っ、ぃ――――」

 泣き声にも似た嬌声を聞き、蜜洞の中で祥吾の一物がぐんっと質量を増した。

「あぁ……っ、鞠花……っ」

 祥吾の抽送はいっそう激しくなり、繰り返す潮騒に二人の激しい息づかいが混じる。

「一生、……っそばに、――ぃ、るから……っ」

 彼を安心させるために頭を撫でると、祥吾は許しを与えられた罪人のように、泣きそうな顔で笑った。



 赦す者と赦される者。

 最終的に、二人は歪んだ形で繋がってしまった。

 それでも、祥吾は「幸せだ」と言うのだろう。

 そして、鞠花も自分は幸せだと思う。



 繰り返し打ち付ける波の音を聞きながら、鞠花は何度目になるか分からない絶頂を果たし、喜悦の涙を流した。



 完
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