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デート
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渇望しているのに手こずって苛つくだなんて、まるで子供のようだ。
「……ほしい。……鞠花がほしい……」
渇きを覚えた獣のように、祥吾は苦しげに呻く。
そして次にいつ彼女と会えるか確認するために、耐えきれずメッセージアプリを立ち上げた。
**
それからも修吾は頻繁に鞠花にメッセージを送ってきて、デートの約束を取り付けようとした。
彼の好意はありがたい。
それでもお互いまず仕事を第一に考えた方がいいと思うので、仕事が忙しい時は断り、余裕のありそうな時は応じた。
デートの約束の他にも、修吾は日々の何気ない話題や、その日食べた食事の写真を送ってきた。
思った通り自宅の食事にしてもプロが作った物を食べているようで、彼いわく家政婦さんが通っているそうだ。
家政婦の食事を食べているというのに、修吾は鞠花の食事の写真も見たいと言ってくる。
何の変哲もない、煮物や煮魚、焼き魚、生姜焼きなどなので、「大した物じゃないから」と言っても彼は見たがる。
食器も百円ショップで買った物なので恥ずかしいし、写真の技術もない。
それでもなるべく綺麗に映るよう写真を撮って修吾に送ると、『食べたい』とメッセージを送ってくれるので、気持ちが温かくなった。
「綺麗ですね」
鞠花は修吾に誘われて、品川にある水族館に来ていた。
入り口から入ってすぐイルカやアシカが見られ、色とりどりの魚を見ながら歩いて行く。
屋内は薄暗いため、水槽のマリンブルーがとても神秘的に見えた。
時刻は午後で、午前中は修吾と一緒にお台場にあるプロジェクションマッピングのミュージアムに行き、そのあとランチは豊洲で高級寿司を頂いた。
それから移動して現在は水族館にいて、このあとは東京駅付近まで行ってディナーの予定だ。
修吾に手を繋がれ水槽のトンネルをくぐると、心の底からロマンチックな気持ちになれる。
大小様々な魚やウミガメなどを心ゆくまで鑑賞したあと、幻想的なクラゲの水槽を見てぼんやりと時間を過ごす。
(あ……)
不意に水槽に自分と修吾の姿が映っているのを見て、鞠花は我に返った。
(私、こんな格好いい人とデートしてるんだ)
そして繋がれた手を見て、彼の手の大きさを再度認識し、じんわり顔を赤くする。
やがて水族館を出ると時刻は十五時すぎになっていた。
「綺麗だったな」
何度かデートを繰り返すうちに、修吾の鞠花に対する口調はフラットなものになっていた。
「ええ、とても綺麗でした! なかなか水族館に来ないので、楽しかったです」
ニコニコして返事をすると、修吾も満足そうに笑ってくれた。
その後、車で移動して銀座に行き、少し歩く。
「鞠花、一つ提案があるんだけど」
「はい?」
「以前に俺は君に過度なプレゼントはしないと言ったけど、一回のデートに一つプレゼントするのはどうだ?」
「えっと……」
一瞬考えて許容範囲のような気がし、鞠花は返事に迷う。
「……あんまり高価ではない物なら……」
おずおずと頷くと、修吾はにっこり笑って「じゃあ行こうか」と銀座にある有名百貨店に鞠花を連れて行った。
結局、修吾が「ここの店は鞠花の雰囲気に似合いそう」と言ったブティックで、シンプルながらも綺麗めなワンピースを買ってもらった。
彼が会計している間に、周りにあった商品のタグをさりげなく見たが、やはり高い。
だがハイブランドのワンピースは何十万円もするので、それに比べたら……と思うのだが、やはり金銭感覚がズレている。
何度もお礼を言ってブラリと百貨店をまわって休憩したあと、丁度いい時刻になったので銀座にある牛肉専門店に向かった。
「……ほしい。……鞠花がほしい……」
渇きを覚えた獣のように、祥吾は苦しげに呻く。
そして次にいつ彼女と会えるか確認するために、耐えきれずメッセージアプリを立ち上げた。
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それからも修吾は頻繁に鞠花にメッセージを送ってきて、デートの約束を取り付けようとした。
彼の好意はありがたい。
それでもお互いまず仕事を第一に考えた方がいいと思うので、仕事が忙しい時は断り、余裕のありそうな時は応じた。
デートの約束の他にも、修吾は日々の何気ない話題や、その日食べた食事の写真を送ってきた。
思った通り自宅の食事にしてもプロが作った物を食べているようで、彼いわく家政婦さんが通っているそうだ。
家政婦の食事を食べているというのに、修吾は鞠花の食事の写真も見たいと言ってくる。
何の変哲もない、煮物や煮魚、焼き魚、生姜焼きなどなので、「大した物じゃないから」と言っても彼は見たがる。
食器も百円ショップで買った物なので恥ずかしいし、写真の技術もない。
それでもなるべく綺麗に映るよう写真を撮って修吾に送ると、『食べたい』とメッセージを送ってくれるので、気持ちが温かくなった。
「綺麗ですね」
鞠花は修吾に誘われて、品川にある水族館に来ていた。
入り口から入ってすぐイルカやアシカが見られ、色とりどりの魚を見ながら歩いて行く。
屋内は薄暗いため、水槽のマリンブルーがとても神秘的に見えた。
時刻は午後で、午前中は修吾と一緒にお台場にあるプロジェクションマッピングのミュージアムに行き、そのあとランチは豊洲で高級寿司を頂いた。
それから移動して現在は水族館にいて、このあとは東京駅付近まで行ってディナーの予定だ。
修吾に手を繋がれ水槽のトンネルをくぐると、心の底からロマンチックな気持ちになれる。
大小様々な魚やウミガメなどを心ゆくまで鑑賞したあと、幻想的なクラゲの水槽を見てぼんやりと時間を過ごす。
(あ……)
不意に水槽に自分と修吾の姿が映っているのを見て、鞠花は我に返った。
(私、こんな格好いい人とデートしてるんだ)
そして繋がれた手を見て、彼の手の大きさを再度認識し、じんわり顔を赤くする。
やがて水族館を出ると時刻は十五時すぎになっていた。
「綺麗だったな」
何度かデートを繰り返すうちに、修吾の鞠花に対する口調はフラットなものになっていた。
「ええ、とても綺麗でした! なかなか水族館に来ないので、楽しかったです」
ニコニコして返事をすると、修吾も満足そうに笑ってくれた。
その後、車で移動して銀座に行き、少し歩く。
「鞠花、一つ提案があるんだけど」
「はい?」
「以前に俺は君に過度なプレゼントはしないと言ったけど、一回のデートに一つプレゼントするのはどうだ?」
「えっと……」
一瞬考えて許容範囲のような気がし、鞠花は返事に迷う。
「……あんまり高価ではない物なら……」
おずおずと頷くと、修吾はにっこり笑って「じゃあ行こうか」と銀座にある有名百貨店に鞠花を連れて行った。
結局、修吾が「ここの店は鞠花の雰囲気に似合いそう」と言ったブティックで、シンプルながらも綺麗めなワンピースを買ってもらった。
彼が会計している間に、周りにあった商品のタグをさりげなく見たが、やはり高い。
だがハイブランドのワンピースは何十万円もするので、それに比べたら……と思うのだが、やはり金銭感覚がズレている。
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