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番外編2:子爵令嬢キャロルの転機2 ☆

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 キャロルの視線の先でオーガストはリディアを抱き起こし、ブルリと飛び出した陰茎の上に腰を下ろさせた。
 銀色のドレスがフワリと重なって、二人の結合部がどうなっているかは分からない。
 しかしリディアの体がゆっくりと上下し始め、二匹の美しい獣が交じり合い始めた。

「あぁ、……っあ、あぁ、……い……のっ、オーガスト、好い……っ」

 貪婪に腰をくねらせ、腹を大きくしたリディアが夫を求める。

「リディア、誕生日おめでとう。俺はただあなたを愛するしかできないが、これからもずっと一緒にいよう」

 貴族たちの前ではまず聞けないオーガストの甘い声がし、二人は体を揺らし深く愛し合いながら、口づけを交わす。

(素敵……。素敵だわ。ああ、お二人の愛はなんて尊いの……っ)

 国王と王妃の淫行を覗き見ているというのに、キャロルは興奮するよりも尊さのあまり感動していた。涙が零れ、胸の奥は陶酔と歓喜に満ち満ちている。
 キャロルが息を潜め、この素晴らしい交わりを脳裏に焼き付けようとしているあいだ、二人の息づかいは荒くなり腰がぶつかる音も烈しくなっていった。
 途中でオーガストはリディアを噴水の縁に押し倒し、あまり深くまで挿入しないよう気を付けているようだ。
 やがて――。

「あ……っ、リディア、リディア……っ」
「オーガスト……っ、あ、――ぁ、あ、……っ」

 二人が同時に昂ぶりを表し、リディアの蜜壷から屹立を引き抜いたオーガストが彼女の顔を跨いだ。
 ブーツを履いたままの足が噴水に浸かるのも構わず、オーガストはリディアの口内に肉棒をねじ込み、根元を自分で思いきり扱く。

「ん……っ、む、ふ……ぁ、むぅっ」

 絶頂に達したリディアも、何の抵抗もなく夫の逸物を咥え、積極的にしゃぶっていた。間もなくオーガストはくぐもった声を上げ、妻の口の中で果てる。

「はぁ……、はぁ……。は……」

 荒々しい息をついたオーガストは、額に貼り付いた前髪を掻き上げ、ふとキャロルの方を向いた。

(!? 嘘!)

 まさかバレているとも知らず、キャロルは鷹に見つかった小動物のように固まってしまう。
 オーガストは噴水の縁でぐったりとしているリディアに口づけ、衣服を整えるとゆっくりとキャロルの方へ歩み寄ってきた。

「こんばんは。アップルヤード子爵令嬢キャロル」

 しっかりと名前まで言われては、キャロルも逃げる訳にいかない。
 ひどい罰を受ける覚悟をし、涙目のままそっと木陰から姿を現した。

「あ、……の、陛下……。これは……」

 俯いたまませわしなく指を絡ませるキャロルを鷹揚に見て、オーガストは面白そうに小首を傾げ笑った。

「覗いていた感想は?」
「っ! う……、ぁ。あの……。す、素晴らしかったです」

 破れかぶれになると、キャロルは思ったことを素直に口にする。どうせ罰を受けるなら、後悔なく正直でいたほうがいい。

「素晴らしい?」
「しゅ、宗教絵画から出てきたような美しい男女の睦びを見られ、天にも昇る心地でした。誰も知らない王妃陛下の美しさを知り、陛下がただ一人に向ける優しさも知りました」

 そこに一切の媚びはなく、キャロルの心は純粋な尊さに満ちている。

「そうか。なら……。見せた料金として、お前のこれからの人生をもらおうか」
「――――」

 艶然と微笑んだオーガストにとんでもないことを言われ、キャロルは顔から血の気を引かせた。

 やはり、不敬罪のあまり死刑になるのだ。

 そう思って絶望していたところ――。

「これからリディアが子を産むと同時に、彼女の周囲で秘密を守れる侍女が必要になってくる。今までは側に控える一人で済んでいたが、先のことを考えればもう少し人数が必要となるだろう」
「……ふぇ……?」

 間抜けな声を出すキャロルに、オーガストは「理解していないのか」と皮肉気に笑う。

「お前をリディアづきの侍女に召し抱える。結婚を許さない訳ではないから、そう悲観的にならなくてもいい。ただリディアと俺に絶対の忠誠を誓い、すべての秘密を守ると約束してもらう」
「は……、はいっ! こ、光栄の至りにございます!」

 元気よく答えたとき、「誰かいるの?」と噴水の方でリディアが起き上がった。慌ててドレスを整えている彼女を見て、オーガストはふ……と柔らかな笑みを浮かべる。

「これからガーランド王家をしっかり支えてゆく人員が必要になる。俺は自分の目で見たものしか信じない。お前の俺たちへの心酔ぶりは、以前から聞き及んでいた。行為を見せたのは多少のサービスだ。いいものを見られた代わりに、これからお前の主となるリディアに誠心誠意仕えろ」
「かしこまりました」

 千里眼のようにすべてを見通す国王に頭を下げ、キャロルは心の底から畏怖を覚えていた。

 この抜け目ない王がいるなら、ガーランドは安泰だ。そしてどこか頼りなく儚げなリディアを、これから自分が側で支えられるのだ。
 あまりの光栄さにキャロルは涙ぐみ、自分の両親になんと言い出すか考え始めた。

「リディア。新しい侍女を紹介する。いまスカウトしてきた」
「え? っえぇ!?」

 まだどこかドレスを乱しているリディアは、真っ赤になって大きな声を出すのだった。


 その後リディアは、優秀な産婆の手伝いを受け男児を産んだ。

 しばらくオーガストといちゃついて甘い日々を過ごしたあと、女児を孕む。
 両親を見て育った仲の良すぎる兄妹がすくすく成長したあと、やはり姉が好きすぎる弟も生まれ、ガーランド王家はより賑やかになっていった。

 オーガストは賢王として名高く、リディアの美しさはいつまで経っても衰えない。

 周辺国より『理想の王家』と呼ばれ、その治世は長く続いた。


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