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番外編1義息子の劣情:十二歳の劣情 ☆

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 その淫戯を思いついたのは、まだ父が存命の頃だ。

 リディアが王宮に上がる前から、父と息子のあいだには寝る前にティータイムを設ける習慣があった。

 やがてそれにリディアが加わるようになった頃には、オーガストはすべての準備を終えていた。

 父には緩やかに死に向かうハーブを。
 母となったリディアには、飲むと深い眠りにつき、また女性の機能を上げるというハーブを。

 彼の手足となったクレイグは、東方より実に様々な種類のハーブを取り入れていた。クレイグ自身は顔だけの中身がない男と思っているが、手広い商才についてはある意味感心している。

 もっとも、くだらない嫉妬でリディアの父を間接的に殺したことについては、一生許さない心づもりだ。

 謁見の間に現れた十七歳のリディアは、まだ十代だというのに成熟した体をしていた。
 隣にいたブライアンの喉からゴクリと唾を嚥下した音が聞こえたのを、オーガストは聞き逃さない。

 同時に何があってもリディアの貞操を、自分が守るのだと思っていた。





 果たしてリディアは側室となって一年でブライアンを喪い、子持ちとなる。

 それから彼女の人生はオーガストに一任された。
 今宵もまた、リディアはオーガストと寝る前のお茶を飲む。

「オーガストが淹れてくれるこのお茶、特殊な香りがするけれどすっかり癖になってしまったわ」

 十九歳のリディアは、まだブライアンを喪った心痛から立ち直っていないものの、オーガストに対する時は母として頑張ろうとしている。
 呼び方が『殿下』から『オーガスト』に変わった時は、嬉しさで叫んでしまいそうになったものだ。

「茶葉にも様々な効能がありますからね。カモミールが鎮静・安眠作用があるように、この茶葉も心を落ち着ける作用があるのだと商人から聞きました」
「心を……。そう。気遣ってくれているのね、ありがとう」

 ブライアンを喪った悲しみを慰めてくれていると取ったリディアは、息子に対して愛情たっぷりに微笑みかける。

 夜なので髪は下ろしてあり、銀の滝のようだ。
 蝋燭の明かりを浴びてオレンジ色に輝き、また影になっている部分は紫がかった不思議な色味になる。
 誰が言い始めたのか『妖精の紡いだ銀糸』とは、絶妙な賛辞だ。

 少し伏せられた長い睫毛も銀色。
 バラの蕾のような唇にティーカップが運ばれ、白い喉が上下する。

 その下には、薄い夜着に包まれたしなやかな体があった。十九歳と思えない肉感的な胸は大きく盛り上がり、ぷくんと先端が立ち上がっているのも窺える。

(……早く触りたいな)

 何気ない顔でリディアと会話をしつつ、オーガストはこれから一時間も経たないうちに訪れる『お楽しみ』に胸を高鳴らせていた。






「そろそろ……、お母様は眠るわね。あなたも良い子だから早めに眠りましょう」

 先ほどから何度もあくびを噛み殺していたリディアが、我慢ならないと立ち上がった。

「お父様がいなくなって寂しい」と強く訴えたオーガストは、黙認されてリディアと共寝をしている。
「はい、お母様」

 従順な返事をし、オーガストはリディアと共に隣室にあるベッドに潜り込んだ。

 おやすみのキスを当たり前のように唇にする。

 リディアは少し戸惑っていたように思えたが、『これ』を当たり前にしてしまえばこちらのものだ。
 ほどなくしてリディアの寝息が聞こえ、オーガストは彼女に呼びかける。

「ねぇ、お母様」

 だがリディアは睫毛を震わせることもしない。

「リディア」

 彼女の耳元で名を呼び捨てにしても、リディアは深い呼吸を繰り返していた。

「……じゃあ今晩も、いただきます」

 十二歳になったオーガストの手は、将来とても大きくなるだろう予兆を見せている。長い指がリディアのネグリジェのボタンを一つずつ外し、そのあいだから大ぶりな果実がまろびでた。

「……綺麗だ」

 蝋燭の明かりに照らされた乳房は、白くまろやかで真珠のようだ。先端も肌の色とほぼ変わらない薄い色で、まだあどけなさが残っている。
 指で乳暈の輪郭をなぞり、やがて乳嘴に至るまでくるくるとまぁるく撫でてゆく。
 オーガストが凝視している先で、リディアの両乳首はぷくんと勃ち上がった。

「いただきます」

 口元で呟き、オーガストは母性の象徴にしゃぶりついた。
 鼻腔にリディアの肌の香りがし、毎晩バラの香油で整えられているそれは甘く上品な芳香を放つ。
 舌で乳房を探れば、陶器でも舐めているのではと錯覚するほど滑らかだ。
 口で愛せないもう片方は指でくりくりと紙縒り、きゅっきゅっとリズミカルに刺激を与える。

「ぁ……、ん」

 リディアの唇からあえかな声が漏れ、オーガストは無言で笑みを湛えた。





 五歳のときにリディアに出会った日は、まだこんな劣情を持っていなかった。

 だがお忍びでランチェスター子爵の葬儀に向かったとき、悲しそうな顔で俯く喪服のリディアを見て、「守りたい」と身が焦げるほど思った。

 そして同じ屋根の下で生活するようになり、匂い立つような彼女の気品と色香に吸い寄せられてゆく。
 あどけない子供のふりをして抱きつき、その胸に顔を埋めた。
 その時の羨ましそうなブライアンの顔ときたら、笑ってしまいそうなほどだ。

「私もリディアに甘えようかな」と冗談めかして言っていたが、リディアに笑って「陛下はいけません」と言われ「ざまあみろ」と思ったぐらいだ。

 当時はもう立派に、リディアを性の対象として見ていたのは自覚している。
 彼女と同じ空間にいれば、いい匂いがしてすぐ抱きつきたくなるし、発達した胸元に視線がいく。

 しかしオーガストの『計画』では、ブライアンが完全に沈黙するまでリディアに手を出してはならなかった。

 きちんと手順を踏まなければ、『料理』は美味しくならない。
 下ごしらえから調理、仕上げに至るまで完璧にこなしてはじめて、美味しく食べられるのだ。

 それほど、オーガストは完璧主義者だった。





 現在、オーガストは前菜を味わっている。

「ああ、美味しいな。母上のお乳おいしいよ」

 ちゅうちゅうちゅぱちゅぱと音を立てて吸い立て、本当に母乳が出ないか、じゅうっときつく吸ってみる。
 実の母は顔も覚えていないので、『自分をこの世に生んだ女性』としか認識していない。そこに情もなにもない、ただの事実だ。

 パールについては『ただの害虫』としか思っていない。
 オーガストにとって『敬い、愛すべき女性』はリディアだけだ。
 他の有象無象は、王子として丁寧に接していれば通過してゆく『ただの現象』と思っている。

「母上。ねぇ、僕は『そろそろ』なんだ。だから母上が僕を男にして?」

 今夜こそ、と思いオーガストはリディアの手を持ち、夜着を脱いで現れた陰茎を握らせた。
 そこはピンと勃起していて、リディアの柔らかな掌に包まれただけで幸せな気持ちになる。

「今日こそ出してみたいな」

 精通がまだ訪れていないオーガストは、この夜の淫戯のうちに初めての射精を迎えることを望んでいた。
 リディアの手に陰茎を握らせ、その上から自分の手で握り込む。
 彼女の胸に吸い付いたまま、オーガストは夢中になって手を上下させた。

「ん……っ、あ、は……ふ、……母上、……母上……っ」

 リディアの胸を唾液まみれにし、オーガストは強すぎるほどの力でリディアに陰茎を握らせ、扱かせる。
 強く擦られ摩擦された幼い場所は、次第に熱を持ち興奮を帯びていった。
 へその下にざわざわとした『何か』を感じ、オーガストは今日がその日だと直感する。

「ぁ……っ、あ、……母上、ぁ、……母上っ」

 切なくリディアを呼んだあと、オーガストは高まりと同時に彼女にキスをした。

「んっ」

 リディアの唇を舐め、吸っているとき、陰茎がぶるりと震え熱い塊を発射する。

「あ……っ、ぁ、……あ……」

 初めて訪れた射精に、オーガストは快楽のうめきを漏らした。
 背中を丸め、快楽の残滓に浸りつつも彼女にキスをするのをやめない。

「……は……」

 初めて男になった瞬間をぞんぶんに味わったあと、オーガストは気だるげに体を起こす。
 ふとリディアの腹を見ると、透明で水っぽいものが少量零れていた。

「……なんだ、こんなものなのか。精液は白っぽくてべとべとして、大量に出ると書いてあったが……。年齢的なものなのかな」

 自分が男性的に劣っているのではと一瞬怖くなったが、それは明日朝一番に図書室に駆け込んで確認してみようと思う。
 大人が読む性技の本ではなく、もっと医学的な本を開く必要があると思ったのだ。

「でも、初めて出たな」

 感慨深げに呟き、やにわにオーガストは初めての精液を指ですくってみた。

「母上。初めて出した記念の精液、母上にあげるね」

 嬉しそうに微笑むと、その指先をリディアの口に差し込んだ。
 舌にヌルヌルと擦りつけられ、無意識にリディアは唾液とともに嚥下した。

「飲んでくれた。やっぱり母上は母上だな」

 肉親という意味での『母』とはまったく思っていないくせに、オーガストは嬉しそうに呟く。

「これから毎晩飲ませてあげるね」

 心底嬉しそうに微笑み、オーガストは後始末を始めた。
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