【R-18】年下国王の異常な執愛~義母は義息子に啼かされる~【挿絵付】

臣桜

文字の大きさ
上 下
24 / 71

目撃した真実1 ☆

しおりを挟む
「浮かない顔だな」

 夜、夫婦の寝室でオーガストが話しかけてくる。

「い、いいえ。気のせいです」

 なるべく自然に取り繕い、リディアは本を読んでいるふりを続けた。

「俺のあの指輪がないな……。まぁ、ネズミでも入ったのか」

 オーガストの言葉にリディアは驚いて首を向ける。

「指輪を盗まれたのですか?」
「いや、いいんだ。心当たりはある」

 オーガストが持っている指輪ともなれば、とても価値のある物の気がする。けれど何でもない事のように言うので、逆にリディアは心配になった。

「犯人に心当たりが……?」
「まぁ、ないでもない。けど、本当にいいんだ。大した品ではないし、盗まれて困る物でもない」
「それなら……良いのですが……」

 不安げに睫毛を瞬かせ、リディアはまた本に視線をやる。
 けれど心の中は不安と不信で一杯になっていた。

「……ところであなたの顔色だが。義母上に何か言われたか? ――それとも、カルヴィンか?」

 けれどオーガストにズバリと言われ、リディアの体がビクリと震える。ドキドキと心臓が鳴るけれども、リディアは平静を取り繕った。
 だが背後からオーガストが忍び寄り、ソファ越しにリディアを抱き締めてくる。

「……まさかこの体を、あいつに触らせていないだろうな?」

 耳元で低く囁かれる声に、腰が甘く疼く。

「……ふ、不貞はしておりません」
「俺は義母上に虐げられ心に傷を負っているから、あなただけは俺を裏切らないでくれ」

 そもそもパールにクレイグをけしかけたのはオーガストだが、そんな事リディアが知る由もない。

「夫の事は裏切りません」
「本当か?」

 また耳元で囁かれ、形のいい耳が舐められる。
 耳たぶをしゃぶられ頭蓋に直接響くような水音がするが、リディアは懸命に耐えて潔癖を訴える。

「あなた以外の男性に体を許す日が訪れれば、その時は死を選びます」

 キッパリと言い切った声に、オーガストはハァ……と息をつき腕を緩めた。

「今の言葉は撤回だ。あなたが不貞を働くよりも、死なれる方がずっと辛い」

 その言葉に、リディアはハッとオーガストが両親ともに失ってしまった事を思い出した。

「ご、ごめんなさい。今の言葉は意図があってではなくて……」
「いい。分かっている。ただあなたの身に何があっても、俺はあなたの味方だ。だから自身に対しての最大の罰を死と考える事だけは、やめてほしい」
「……はい」

 項垂れたリディアの髪を、オーガストは大きな手で撫でつける。

『妖精が紡いだ銀糸』と讃えられる髪を、こうして自由にできるのは彼だけだ。

 その事実に陶然としている顔つきをしていたが、やがてオーガストは気持ちを切り替えリディアの目の前に立った。

「少し夜の散歩をしないか?」
「散歩……ですか?」
「王族のみが知る、秘密の通路を探検するんだ」

 思わずゾクリとする色香を放ち、オーガストが微笑む。

 手を差し出され、リディアはいつの間にか読みかけの本をテーブルに置き、夫の手を取っていた。


**


「あんな場所から通路に繋がっていただなんて……」

 オーガストがまず開いたのは、夫婦の寝室にある腰板の一部だった。

 一面扉が続いているようなデザインの腰板は、一枚だけが本物の扉になっていた。
 けれどそのまま押して開くものではなく、壁に向かってオーガストがどこか一部を押し、また横に引いて足でどこかを蹴り……と仕掛けを起動させた。

 すると扉が音もなく開いて、向こう側に暗い通路がポッカリと口を開けたのだ。

 通路の内側すぐにあったカンテラを手に取り、オーガストは寝室内の火からカンテラに明かりを灯す。そして自分が先導して通路を奥に進んでいった。

「オーガストはよくこの通路を使うの?」

 通路の中はヒヤリとしていて、今はまだ暖かな季節だからいいものの、冬は堪えると思う。

「たまに悪巧みをする時は……ね。あと、あまり大きな声を出さない方がいい。城は夜を迎えているから、不審者が潜んでいると思われると面倒だ」
「……はい」

 慌てて小声で返事をするも、オーガストは悠々と通路を歩いて行く。

「どこに向かっているの?」

 小さな声で尋ねると、少しこちらを振り向きオーガストが笑う。

「悪者が何を考えているか、確かめに行こうと思って。俺が言ってもあなたが信じない場合、あなたが実際その目で確かめた方が早いと思って」

 悪者と言われ、ふとオーガストを陥れようとしている口ぶりのカルヴィンを思い出した。

 けれど仮にカルヴィンが何か暗躍するとしても、この日の夜という都合のいいタイミングで貴族と集まったりしているのだろうか?
 昼間カルヴィンが口走っていた不穏を、リディアは夫に訴える。

「あの……。今日の昼間、カルヴィンが『間もなく陛下は失脚する』と言っていました。私、何か良くない事が起こらないか不安で……」
「カルヴィンがあなたを狙い、国王の座を狙っているのはずっと前から分かっている。けど、知らせてくれてありがとう」

 通路の途中で立ち止まったオーガストは、リディアを抱き寄せキスをした。

「……分かっているのですか? では何か手を打って……?」

 優しい唇が離れてゆくと名残惜しくなるが、今は大事な話をしている。

 尚も問いかけるとオーガストは意味深な笑みを浮かべ、歩を進めた。
 途中、オーガストは「ここは三階の会議室だ」と言ってのぞき窓から部屋を見せてくれたり、他にも隠し通路から覗ける部屋を教えてくれた。

 なるほどこうやってオーガストが通路からすべてを見ているとすれば、城内で悪巧みもできないのかもしれない。

 そう思っていると、オーガストが動きを止めカンテラを足元に置いた。

「オーガスト?」

 問いかければ、彼は口元に指を立てて「しぃ」と静かにするよう伝える。
 慌てて口を噤むと、オーガストが横に細長い板をスライドさせた。小さな穴が二つ開いているところから、恐らく室内の肖像画の目元部分なのだろう。
 蝋燭の明かりが穴から差し込むと同時に、女性の嬌声が聞こえてきた。

「あァッ! あ、あ、あぁあ! いぃっ、いいわ! もっと突いて!」

 憚らない女性の声にリディアは一気に赤面し、その場を逃げかける。

 誰かの情事を覗き見る趣味は持ち合わせていないつもりだ。

 けれどオーガストに背後から抱きすくめられ、否が応でも穴から中を覗く場所に立たされた。

 いけないと思いつつ覗き穴から室内を見て――両手で口を覆った。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。

恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。 パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

処理中です...