【R-18】年下国王の異常な執愛~義母は義息子に啼かされる~【挿絵付】

臣桜

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王宮での新しい生活

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 だがリディアは王家に嫁いだ。

 目も眩むような豪奢なドレスを身に纏い、国王としてのブライアンに謁見する時は足が震えた。玉座の側には十歳ほどの少年が立っていて、じっとリディアを凝視している。恐らく第一王子のオーガストだろう。

「国王陛下にしましては、ご機嫌麗しく。この度オルブライト伯爵家より側室として召し抱えられました、リディアと申します。何卒、末永く宜しくお願い致します」

 声は震えていたが、とても可憐だった。

 噂の美姫を間近で見た臣下たちは賛嘆の息をつき、貴族や女官たちもこの世のものと思えない美貌に言葉を失っていた。

 銀髪を豪華に結い上げ、宝石のついた金銀の髪飾りが無数についている。すんなりした細い首から肩までは晒され、その下に成長途中の膨らみが覗いていた。ウエストは折れそうに細く、フワリと膨らんだバラ色のドレスは一層彼女を人形のように見せていた。

「輿入れ大義だった。これより其方の部屋へ案内するので、我が家と思ってゆるりと休むがいい」

 公の場だからか、ブライアンの声はどっしりと重々しい。けれどその深い声の奥で彼が喜んでいるのは伝わってくる。
 顔を上げて微笑むと、ブライアンも笑みを返してくれた。オーガスト王子にも微笑んでこうべを垂れるが、彼は相変わらず目を大きく見開いてリディアを凝視したままだった。





 リディアの部屋と宛がわれた場所は、贅を凝らした空間だった。バスルーム、寝室、衣装部屋、応接間が続き、それぞれの部屋に色調テーマがある。

 バスルームは白が基調で装飾品は主にダイヤモンドと真珠が使われていた。広い湯殿は大理石でできていて、リディアという貴人が入るからか薄いヴェールで目隠しがされるようになっていた。スタンドシャンデリアがバスルーム中に立ち、蝋燭の火がつけばクリスタルガラスに反射してとても綺麗なのだろう。

 寝室はバラ色が基調となり、天蓋のカーテンを留めるタッセルにも大粒のルビーが付けられていた。壁は腰板より上は天上画となっており、溜め息をつく美しさだ。鏡台の引き出しにはありとあらゆるアクセサリーがあり、レディたちの間で噂になっている肌にいいバラ水や、香水が綺麗な小瓶に入れられている。就寝前にブライアンと語らうためのソファセットは、天蓋と共布だ。

 衣装部屋は水色で、対辺の壁にズラリと両開きの衣装箱がある。開いても開いても、贅を凝らした様々なドレスが入っていた。一部まだ何も入っていないのは、これからリディアの好みと体型に合わせて作られた物が入るのだろう。大きな窓の向かいには、一面に磨き抜かれた鏡があった。天井には咲き誇る花々が描かれ、シャンデリアにはサファイアやアクアマリンが混ざっている。

 応接室は落ち着いたグリーンで統一され、この部屋の暖炉が一番大きい。カーテンやソファセットの布地も統一され、ウォールナット材のテーブルは磨き上げられて鏡のようだ。その他の家具は白で統一され、他の部屋同様壁と天井の継ぎ目には精緻なロカイユ装飾がある。暖かな空気を逃さないよう壁に掛けられたタペストリーも見事な物で、色鮮やかな南国の風景を織った物は異国の風景に思いを馳せられる。

 これ以上ない贅沢な空間での生活が始まり、ブライアンも非常に優しくしてくれた。
 そしてあるお茶の時間、ブライアンは申し訳なさそうにあの話を切り出した。

「リディア、君の父上のランチェスター子爵の事だが……。私にも責任があると思っている。申し訳ない」
「いえ……! そんな! 陛下には何の非もございません」

 父が国王のために東方の陶磁器を大量に買い込んだ事を思い出した。「これで陛下が喜ばれるぞ」と言っていた父の嬉しそうな顔。――そしてその直後の絶望。

「私はランチェスター子爵の噂を聞いて、ぜひ東方の美と言われる陶磁器を買い取りたいと確かに言った。だがそれが叶えられなかったからと言って、ランチェスター子爵を罰するつもりなどさらさら無かった……」

「ええ、分かっております。陛下が良い王様であられるのは、民が一番分かっております。そして父も冷静になる事ができれば、陛下にちゃんと事情をお話しする事もできたのだと思います」

「……私の存在は、やはり畏怖の対象だったのだろうか」

 溜め息をつくブライアンは憂い顔だ。

「私はランチェスター子爵の噂を臣下から聞いた。類い稀なる商才を発揮する者がいると……。確かに貴族が商売をするのはあまり聞かない事だが、自身の才能に見合った事をするのはとても良い事だと思った。だが彼は社交界で妬みによる酷い噂を立てられていた。私は少しでもその噂を良い物に変えられればと思い、一役買うつもりでいたのだが……」

「ご親切をありがとうございます。きっと父も陛下のお心が分かっていたと思います。ですがあまりのショックに正常な判断が下せなかったのだと思います。陛下は何も悪くありませんわ。悪いのは、隊商を襲った賊です」

 グッと唇を引き結ぶと、リディアもどこか暗い顔をする。けれど紅茶を飲んで気持ちを切り替え、努めて明るい笑顔を浮かべた。

「ですが父亡き後、母は素敵な方と再婚できましたし、長女の私も陛下という素晴らしい方に見初めて頂けました。意図的でははないと言え、陛下は恩返し以上の事をしてくださいました」

「……そう思ってくれるのなら、幸いだ。色々落ち着いた頃に、改めて君の母上やご家族にも詫びをしに行こう」

「勿体ないお言葉です」

 まだ国王に嫁いだばかりで緊張の取れない日々だが、ブライアンがとても懐の広い人だという事は分かった。リディアの直感は外れておらず、この人となら幸せになれると実感していた。





 その当時ブライアンは幾分不眠症の気があった。

 国王として働き過ぎ、様々な事を考えているからだろうと彼は笑った。
 けれど側室として何か役に立ちたいと思ったリディアは、宰相であるカルヴィンに相談をした。

「これは私が信頼している商人から買った、寝付きを良くする茶です。カモミールなどと似ていますが、あれよりも効くそうですよ」

 渡されたお茶はいい香りがして、確かにハーブティーという感じがする。

「これを陛下に飲んで頂ければいいのね? ありがとう。私も飲んでも構わないかしら?」

 美味しいお茶なら、自分もブライアンと共有したい。そう思ったのだが、カルヴィンはゆるりとかぶりを振る。

「健康な方が薬を飲んでも、逆に体に良くありません。眠れない方が飲むからこそ、そのお茶は効果を発揮するのです」
「まぁ、確かにそうね。分かったわ。私とオーガスト殿下は、違うお茶を飲みます」

 頼りになる宰相の言葉に頷き、リディアはギュウッともらったお茶を抱き締めた。


 その後ブライアンはよく眠れるようになったらしく、リディアも徐々に王宮での生活に慣れていった。
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