【R-18】死神侯爵と黄泉帰りの花嫁~記憶喪失令嬢の精神調教~【挿絵付】

臣桜

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二人目の客人1 ☆

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 そのように日々を重ね、コレットはジスランに快楽を教え込まれる傍ら、少しずつ自分に関する情報を得ていた。

 コレットはブリュイエールという伯爵家の令嬢であり、年齢は二十歳であること。家族から〝ココ〟と愛称で呼ばれ、とても愛されていたらしい。

 その特に秘密とも言えない情報を聞くまで、コレットは二週間毎日ジスランに抱かれ続けた。

 彼に抱かれるのは嬉しいし、とても気持ちいい。

 だが一回の交わりがあっさり終わると感じたことは一度もなかった。コレットが質問をしたあと、ジスランは彼女を抱ける時間をちゃんと設ける。外出や特に重要な執務のない昼間だったり、ほとんどは夜だ。
 声が出なくなるまで啼かされ、酷い時は何時間も拘束される。彼が一度射精したからと言って一回と数えられる訳ではなく、ジスランが満足し終わるまでが一回だ。なのでその間、多い時は四、五回ほど胎内に彼の精を浴びていた。

 いつ子供ができてもおかしくないというのに、ジスランは一向に気にする気配がない。

「懐妊してしまったら、私はどうしたらいいですか?」と聞けば、「この城で産んで育てればいい」と答えてくる。

 だというのにジスランはコレットを「好きだ」と言わず、相変わらずキスもしない。

 これが〝愛人〟なのだ、とコレットは思い知る。

 愛されていると錯覚し、抱かれている時は有頂天になる。だが不意に彼から一番肝心な気持ちも言葉ももらっていないことに気付き、この上ない悲しみに見舞われるのだ。

 だが悲しいかな、コレットの体はいやらしいことに慣らされていった。

 以前胸が好きだと言った通り、ジスランはコレットの胸に顔を埋めるのが好きだ。先端を舐め、赤子のようにしゃぶり吸い付く。時に胸だけの愛撫だけで大半が過ぎる時もあった。無垢だったコレットの乳首は、ジスランの手によって触れるだけで下肢を濡らす淫猥な場所に作り替えられた。

 またジスランはコレットの一番敏感な部分――肉真珠をしつこく舐めて何度も絶頂に追いやるのもお気に入りだ。そのあいだ指は感じる部分を優しく撫で続け、ひたすらにコレットを感じさせる。

 コレットがジスランの性のはけ口となっているはずなのに、気がつけばジスランが丁寧すぎる愛撫をし、コレットをたっぷり奉仕している。

 自分が感じる場所をジスランが執拗に突くことや、行為の最中彼がジッと自分を見つめていること。荒い呼吸の合間に舌で唇を舐める癖があることや、コレットが絶頂に達してもしつこく突き上げるのが好きなのも把握した。

 口淫をすることもあり、彼のどの部分を丁寧に舐めれば感じるのかも理解する。懸命に奉仕していて、時々ジスランが気持ちよさのままに腰を前後させないか怯えることもあった。だがそういう荒々しいことを彼は絶対にせず、自主的に口を動かすコレットをただ優しく撫でて褒めるのだ。

 心も体も、じっくりとジスランに育てられ、調教されていると感じる。

 ジスランも、ありとあらゆるものをコレットに与えてくれた。何一つ不自由しないし、使用人たちも優しい。
 何もかも満たされている。

 ――ただ、記憶がないこととジスランの愛を得られないことを除けば。





「実家の……、ブリュイエール伯爵家は、遠いですか?」

 散々抱かれて気を失ってしまったあと、まだ夜が支配している早朝にコレットが呟く。最近ジスランはどこか落ち着きがなく、朝もとても早い時間に目が覚めているようだった。

「起こしたか?」

 彼はベッドのクッションに背を預け、コレットの髪を弄びつつ読書をしていた。

「……いえ。何となく目が覚めて……」

 返事をした声は、か細く掠れている。何度か咳払いをしていると、ジスランがベッドサイドのデキャンタからグラスに水を注いでくれた。

「ありがと……ございます……」

 コクコクと喉を潤すと、水がとても甘く感じる。

 ふとジスランが自分の胸元を凝視しているのに気付き、コレットはサッとデュベで胸元を隠した。
 真っ白な肌に所有印が刻まれた乳房が、無防備に晒されていたのだ。寝起きとはいえ、些か羞恥心が足りなかった。

「家族に会いたいのか?」

 折角体を隠した布団を剥がれ、コレットの裸体が剥き出しになる。ジスランはトラウザーズを穿いているので、どこか狡い。

「それは……」

 会いたいと言えば会いたい。

 自分のことを知っている〝誰か〟に会いたいと思うのは、当たり前の感情だ。

 だが会っても家族のことを思い出せないだろうことを、コレットは恐れていた。向こうはきっととても心配しているだろう。だがようやく会えた娘が記憶喪失で処女も失っていると知ったら――?

 そうしたら、ジスランが責められてしまわないだろうか?

 考えれば考えるほど正解が分からず、コレットはそのまま黙り込んでしまった。

 それに、一つ悩んでいることもある。

「私は、家族仲のいい方でしたか?」

 両手で胸元を隠し、下半身だけでもと布団の仲に後退する。するとジスランの手がコレットの両手首を掴み、左右に開いてしまった。

「あ……っ」

 ふるん、とたわわな果実がジスランの目の前で零れる。きつく吸われ、時に噛まれ、淫らな跡を残した乳房が、彼の目に晒された。

 恥ずかしくて堪らないが、今は〝質問中〟だ。彼の回答を望むのなら、言うことを聞くのが二人の約束だ。

 そのままコレットはジスランの腰を跨いで膝立ちにされ、彼の目の前に胸を突き出す。当たり前という顔でジスランはコレットの胸にしゃぶりつき、美味しいキャンディーでも舐めているかのように舌で転がしてきた。

「ん……、ン、ぁ」

 彼の手はコレットの尻たぶを掴み、ジワジワと揉んでいる。粗熱が取れたはずの秘部がまた潤みだし、コレットの目まで薄い涙の膜ができた。

「家族に愛されていた……、と言えば会いたいか? 不仲だったと言えば、会いたくない?」

 逆に質問を返されてしまい、コレットは自分が迷ったままなのに気付く。
 そもそもにして、家族に会いたいか分かっていないのに、ジスランに質問をすること自体間違えていたのだ。

「……怒っていますか?」
「何に」

 短く返事をして、ジスランはなおもコレットの体を貪る。

「お世話になっている身だというのに、別の場所に帰りたい素振りを見せたこと……が、です」

 ジスランがすぐ回答をくれず、言葉を濁していたのもこれが原因だろう。自らの浅はかさに恥じらい謝意を示せば、ちゅぽ……と乳首から唇を離したジスランが見上げてくる。

「……傷ついていないと言えば、嘘になるな」

 琥珀色の目がジッとコレットを見つめ、責める感情と拗ねているような色がない交ぜになっていた。
 それを読み取った途端、コレットの胸の奥に甘酸っぱい喜びがブワァッと広がる。

「わ、私、思い出さない限りどこにも参りません。死の淵にいた私を救ってくださり、ここまで育ててくださったジスラン様に、背を向けるようなことなど致しません」
「……育てては、ないがな」

 く、と小さく口元だけで笑ったジスランは、既にトロトロになったコレットの蜜口を撫でてから、迷いなく指を埋めてきた。

「あ……。こ、これから朝、です」
「知らん」

 半分しか返事をもらえていなかったが、ジスランはそのままコレットを貪り出す。

 だがコレットももう家族のことを気にする余裕もなくなっていた。思い出せないのなら、きっと家族を前にしても他人のように思うだろう。それならば、ちゃんと思い出すまでジスランの元で療養していたほうがいい。

 自分に理由をつけ、コレットはジスランに求められている愉悦でトロリと目を細めた。記憶が戻らない限り、自分はジスランの側にいていいのだ。

 頭の片隅に「ずっとこのままの生活が続けばいい」という欲があるのを気付かないふりをして――、コレットは快楽に溺れた。



**



 その一週間後の午後、また城に客が現れた。

 今度は女だ。

 加えてジスランは「仕事だ」と言って、どこかに外出しているタイミングだった。

 来客の予定など告げられていなかったコレットは、玄関ホールがやにわに騒がしくなった気配を感じ、そっと部屋から移動する。

 以前のようにフィリップが来たのかと思い、自分を知っている様子の彼から何か聞けるかもしれないと、僅かに期待したのも確かだ。

 本当は自分の主であるジスラン以外から、情報を得ようだなんて間違えているのだろうけれど……。
 すっかり自分はジスランの所有物だと思い込んでいるコレットは、他人から自身の情報を得ることに躊躇いを感じていた。

 二階まで下りて玄関ホールの吹き抜けまで向かうと、広々とした空間いっぱいにキンキンとした金切り声が響いている。家令をはじめメイドや侍従たちは困り顔で、バラ色のドレスの令嬢を相手にしていた。

「だからジスラン様はどこへいらっしゃったの? オーブリー伯爵家の長女クリステルが来たのだから、主に目通しするのはあなた達の役目なのではなくて?」
「で、ですから旦那様はお出掛けになっていて……」

「嘘おっしゃい! 私、フィリップ様から聞いたのよ? ここにココがいるのですって? あの子、ここでのうのうとジスラン様の〝愛人〟をしているのですって?」

 そこに自分の名前が出て、コレットは体を強張らせる。この場から立ち去らないとと思い、急いだのがいけなかった。

「あっ」

 吹き抜けの出入り口近くにある花台に体がぶつかり、その上の花瓶が派手な音を立てて割れる。
 当然玄関ホールにいた全員が、吹き抜けの上に立っていたコレットに気付いた。

「ココ!!」

 クリステルと名乗った豪奢な金髪の女性は、青い目を見開き幽霊でも見たかのような目でこちらを凝視していた。
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