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番外編 2 タワマン事件簿

たのもう

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「いい子」

 慎也は私の頬にチュッとキスをし、力の抜けた体を支えながら抱き締める。

「風呂入る?」

 慎也に尋ねられ、私は小さく頷く。

「うん……」

「じゃあ、僕お風呂の準備してくるね」

 正樹はそう言って立ちあがり、バスルームへ向かった。





 三人でお風呂に入り、髪も体も洗った私は、フェイスケアをしてドライヤーを掛け、バスローブを羽織る。

 二人は先にベッドルームにいっていた。

(……なんか緊張するな)

 俊希が生まれてからは、彼中心の生活を送ってきた。

 家でもイチャイチャはしたけれど、あまり大きな声を出さないように気をつけた。

 愛し合っているけれど、独身の頃のような空気感にはもうなれないんじゃ……と思っていた。

 勿論、俊希を預けたら三人で楽しめるのは分かっているけれど、そうそう無責任に預けられないと思うのは母親なら当たり前だ。

(けど、ホテルだもんなぁ……)

 決して嫌な訳じゃない。

 ただ照れくさくて、どう反応したらいいのか分からないだけだ。

(……考えているだけじゃ駄目だ。行動しないと)

「んっ」

 両手でパンッと頬を叩いた私は、気合いを入れて洗面所を出た。





「たのもう」

 ベッドルームに入るなりそう言ったものだから、二人が笑い崩れた。

「優美ちゃん、何するつもりさ」

「俺ら二人の上に跨がって、腰振ってKOさせて、ホテル出ていくのだけはカンベンな」

「ちょっと! 『たのもう』って言っただけで、そこまで悪女にしなくていいじゃん!」

「……悪女っていうか、ドスケベ?」

 正樹がいつものノリで言うもんだから、私はギロリと奴を睨んでおいた。

「おいで、優美」

 慎也が両腕を広げ、私を招く。

「……うん」

 さすが慎也だ。……なんて言ったら、正樹が拗ねてしまう。

 私は素直にベッドの上に乗り、ポスンと慎也の腕の中に収まった。

「照れてる?」

 言い当てられ、私はジワッと頬を染める。

「~~~~だって久しぶりだもん。ちょっと前にした記憶はあるけど、バタバタしていてそれどころじゃなかったし」

「だよな。今はもう落ち着いてイチャつける」

 慎也は微笑み、私にチュッとキスをしてきた。

 柔らかな唇を感じ、目の前で穏やかに微笑んでいる夫を見ると、緊張していた気持ちがスルスルとほどけていった。

 私は一瞬呆けたあと、笑みを深める。

 そして膝立ちになり、慎也の頬を両手で包むと、自分からも丁寧にキスをし返した。

 ちゅ……、と小さな音がたち、私たちは見つめ合う。

 正樹の視線を感じ、今度は彼にも同様にキスをした。

「最初からアクセルべた踏みでいけないと思うけど、ちょっとずつ、まったりやってこ」

「ん」

「分かった」

 私のスタンスを知り、二人は了承してくれる。

 緊張しながらバスローブを脱ぐと、白い下着姿になる。

「……なんか、三人でのハネムーンの夜を思いだすね」

 正樹に言われ、私は思わず微笑む。

「確かに、白い下着だね」

「優美が綺麗なのは変わらないけど」

 そう言って、慎也が下着越しに私の胸に触る。
 揉むというよりは、バストの形に添って手を這わせている感じだ。

「そうそう。優美ちゃんのお尻は今日もカッコイイね」

 正樹はブラジリアンカットのお尻を撫でてくる。

 家にいた時に『ホテルに行くよ』と言われ、着替えと共に勝負下着を身につけたのは言うまでもない。

「……ふ、二人以外に見る人がいないんだから、愛でてくれたまえ」

 照れ隠しにそう言うと、慎也と正樹はクシャッと笑って私を抱き締めてきた。

「勿論!」
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