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番外編 2 タワマン事件簿

若いイケメンとデート

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 慎也も怒ったような顔をしていて、しばらく私を見つめていた。

「んっ!?」

 突如としてスカート越しに、太腿を股間に押しつけられる。
 脚の間に入った太腿から逃れようとするけれど、彼は私の両肩を上から押さえつけてきた。

「っん~~~~……」

 ずっと真面目な話をしていた訳だから、ソコも真面目モードというか、何も準備ができていない。

 だから太腿を押しつけられても、突起がすでに尖っていて感じてしまうとかはないんだけど、ジワジワと羞恥を覚え、圧迫感に興奮してくる。

 慎也はちょっと冷たい目で私を見つめて、何も言わない。

 ……な、何プレイ……。

「おい」

 と、急に低い声で乱暴に声を掛けられた。

 びっくりして上目遣いに彼を見ると、怒りや色んな感情を押し殺した表情で言う。

「覚えとけよ」

「……………………は、…………はい………………」

 ――やばい。

 なんでこんな風に言われただけで、お腹の奥がキュンッとなってしまうのか。

 …………変態って言われてもしゃーないやつだ、これ……。

 そんな自分が恥ずかしくて、私はそろーり……と慎也から目を逸らす。

 彼は私の顎を掴んだけれど、ゴンドラがポンと電子音を立てて最上階に着いたので、「は……っ」と息をついて私を解放した。

 ドアが左右に開き、見慣れた我が家の玄関が目に入る。

 このフロアは、エレベーターから下りた瞬間から、久賀城家の敷地みたいな感じだ。
 マンションだから敷地っていうのも変だけど。

 人を待たせておくためのソファセットが廊下にあり、玄関ドアの横には背の高い鉢植えを置いてある。

「これから、俺も赤坂の家に移る。このマンションはしばらくこのままにしておくけど、使うもんは積極的に移動させていこう」

 慎也が言い、正樹が「そーな」と軽く同意する。

「持ってくもんをこっちで纏めたら、あとは業者さんに頼もうよ。僕らで一階まで運んで車に積んで……ってやんの、時間が勿体ないし」

 そーね。お金持ちはそういう考え方よな。

「たーだいまー!」

 肩の荷が下りた私は、俊希に向けて声を上げる。

 廊下を進んでリビングダイニングに入ると、俊希とシッターさんがブロックで遊んでいた。

「ありがとうございます! 朝早くからすみません!」

「いえいえ、構いませんとも」

 シッターさんはとても優しい女性で、私たちの事情には口を出さないし、秘密は守るし俊希とも相性がよくて、とにかくいい人だ。

 そのあと私は、俊希を抱っこしながら、シッターさんから留守中の報告を聞いていた。

 時刻はお昼前になっていて、すっごい長い間しゃべっていたんだと知る。
 そりゃあ、喉がカラカラだわ。

 私は俊希を床に下ろしたあと、キッチンにあるウォーターサーバーから水を出して、ゴクゴク飲む。

(お昼、何にしようかなぁ……)

 そう思っていたんだけど、慎也の声が聞こえて「ん?」とそちらを見る。
 彼はリビングに立って窓の外を見ながら、誰かに電話を掛けていた。

「……あー、母さん? 今日暇?」

 あれ、玲奈さんに電話掛けてたのか。
 私は特に何も思わず、冷蔵庫の中を覗いてお昼ご飯の献立を考える。

「未望もいる? ……ん、ああ、うん」

(ベーコンあるなぁ。パスタかなぁー……)

「じゃあ、ちょっと今日の夕方まで、俊希預かってくれる?」

「ん!?」

 私はグリンッと慎也を振り向く。
 スマホの向こうから、玲奈さんがはしゃいでる声が聞こえる。

「これから連れてくから。宜しく」

 そう言って、慎也はトンとスマホをタップして電話を切った。

「俊希どうすんの?」

「こないだ、玲奈さんが『としちゃんに会いたい』って言ってたから、若いイケメンとデートだよ」

 ソファに座っている正樹が言う。

 慎也はシッターさんに、今日はとりあえずもう大丈夫だと告げて、早い時間に来てもらった分のチップを渡していた。
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