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番外編 2 タワマン事件簿
ふざけんな!
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「言っておきたいのは、何もさやかさんのお仕事を馬鹿にしている訳じゃないって事です。私はお酒は好きだけど、接待で飲むのは得意じゃないです。営業の一環で褒めたりおだてたりはしますが、それ自体を仕事にするには不向きです。だからお酒を飲んで沢山気を遣って何千万も稼いだあなたは、凄いと認めているんです」
言ったあと「それとは別に」と流れを区切る。
「今回の事件を起こしたあなたは、自分が一番私に敵意を抱き、強い嫉妬と恨みを持っていると思っているでしょう。うまくいけば私を排除したあと、慎也と正樹をゲットできると思っていましたか?」
彼女は挑むように睨んでいる。
もうね、ここまでくると動機はシンプルですね。分かりやすい。
「悪いんですが、そういう女性はたっくさんいるんです。この二人が如何にいい男か、私が一番知っているつもりです。私より魅力的な女性なんて大勢います。そりゃ、いつ気移りされるか怖いですよ。一緒に歩いていても、彼らの事を狙う女性の視線を、たっくさん浴びます」
力説している間、二人がめちゃ嬉しそうな雰囲気になっているのが分かる。
コノヤロウ。あとで説教だ。
「あなたの仕事は凄いし、稼いだのも凄い。けど、この二人に横恋慕する女性は大勢いて、あなたもその一人。そう言いたかったんです。カチンとして劣等感をさらけ出すと、いざという時に勝てませんよ」
私の言葉を聞いて、さやかさんの目の奥に冷たい光が宿る。
……んまぁ、私も最後に煽ったしな。
けど、腹立ったから、こっちも多少は喧嘩を売らせてもらう。
私は殴られっぱなしのサンドバックじゃない。
慎也がざっくりと纏めた。
「要するに、あなたは優美に嫉妬して三笠さんに写真を撮らせ、穴を空けたと? 杉川さんにも嫉妬して、光圀さんに疑いが掛かるよう周囲を掻き回した」
さやかさんは私を睨むように見つめたまま、ゆっくりと脚を組んだ。
彼女はへたに美女なもんだから、こういうサイコホラー気味な雰囲気になると迫力がある。
さやかさんはフッ……と柔らかく笑い、慎也と正樹に微笑みかける。
「いなくなったらいいなぁ、と思ったんです。ホステス時代に〝仲よくなった〟男友達にも相談して、どうやったら優美さんが〝退場〟するか考えていたんです」
わ……。
ヤベー発言を聞いて、またもゾワゾワッとする。
「残念ですよねぇ。優美さんがどこかに勤めていたら、皆であなたへのクレームをつけて会社を辞めさせて、ボロボロにする事ができたのに」
おい、どこかで聞いた話だな。
脳裏にチラッと五十嵐さんがよぎる。
「優美さんの実家を調べようと思っても、埼玉住まいしか分からないですし。お友達は六本木住まいでしたっけ? あそこのタワーに知り合いが住んでいるんですけど、なかなか〝お願い事〟を聞いてくれないんですよね」
「ふざけんな!」
今までは慎也と正樹がいてくれるから、何を聞いても「ヤベー」と揶揄して終わりだった。
けど、家族と文香にも危害を加えようと企てていたと知って、一気に頭にきて怒鳴っていた。
「自分がやろうとしていた事を分かってるの!? 何をするつもりだった? 他人を巻き込んだらただの犯罪でしょう!」
私が激昂したのを見て、さやかさんは目を細めて笑った。
その直後、バッと両手で自分を庇って「キャッ」と悲鳴を上げる。
「ごめんなさい! 怒らないで! 怖い!」
「はぁ……?」
訳が分からなくて、私は目をまん丸にする。
情緒不安定にもほどがある。
っていうか、私が怒鳴って彼女を怖がらせているみたいじゃない。
(彼女に乗せられないでよ?)
思わず不安になって慎也と正樹を見たけれど、彼らは無反応だ。
安堵したものの、正樹がスッと立ちあがったので「ん?」と彼を見る。
「正樹?」
彼は左右を見回し、キッチンに向かった。
いや、いくら何でも人様の家で勝手に行動するのは……。
そう思っていたけれど、彼はキッチンカウンターの上にある観葉植物を持ち上げた。
そしてその中から小さな黒い物を取り出す。
「おい、録画中かよ」
正樹は凄みのある表情で笑い、カメラの電源を切る。
こっっっっっ…………わ…………。
言ったあと「それとは別に」と流れを区切る。
「今回の事件を起こしたあなたは、自分が一番私に敵意を抱き、強い嫉妬と恨みを持っていると思っているでしょう。うまくいけば私を排除したあと、慎也と正樹をゲットできると思っていましたか?」
彼女は挑むように睨んでいる。
もうね、ここまでくると動機はシンプルですね。分かりやすい。
「悪いんですが、そういう女性はたっくさんいるんです。この二人が如何にいい男か、私が一番知っているつもりです。私より魅力的な女性なんて大勢います。そりゃ、いつ気移りされるか怖いですよ。一緒に歩いていても、彼らの事を狙う女性の視線を、たっくさん浴びます」
力説している間、二人がめちゃ嬉しそうな雰囲気になっているのが分かる。
コノヤロウ。あとで説教だ。
「あなたの仕事は凄いし、稼いだのも凄い。けど、この二人に横恋慕する女性は大勢いて、あなたもその一人。そう言いたかったんです。カチンとして劣等感をさらけ出すと、いざという時に勝てませんよ」
私の言葉を聞いて、さやかさんの目の奥に冷たい光が宿る。
……んまぁ、私も最後に煽ったしな。
けど、腹立ったから、こっちも多少は喧嘩を売らせてもらう。
私は殴られっぱなしのサンドバックじゃない。
慎也がざっくりと纏めた。
「要するに、あなたは優美に嫉妬して三笠さんに写真を撮らせ、穴を空けたと? 杉川さんにも嫉妬して、光圀さんに疑いが掛かるよう周囲を掻き回した」
さやかさんは私を睨むように見つめたまま、ゆっくりと脚を組んだ。
彼女はへたに美女なもんだから、こういうサイコホラー気味な雰囲気になると迫力がある。
さやかさんはフッ……と柔らかく笑い、慎也と正樹に微笑みかける。
「いなくなったらいいなぁ、と思ったんです。ホステス時代に〝仲よくなった〟男友達にも相談して、どうやったら優美さんが〝退場〟するか考えていたんです」
わ……。
ヤベー発言を聞いて、またもゾワゾワッとする。
「残念ですよねぇ。優美さんがどこかに勤めていたら、皆であなたへのクレームをつけて会社を辞めさせて、ボロボロにする事ができたのに」
おい、どこかで聞いた話だな。
脳裏にチラッと五十嵐さんがよぎる。
「優美さんの実家を調べようと思っても、埼玉住まいしか分からないですし。お友達は六本木住まいでしたっけ? あそこのタワーに知り合いが住んでいるんですけど、なかなか〝お願い事〟を聞いてくれないんですよね」
「ふざけんな!」
今までは慎也と正樹がいてくれるから、何を聞いても「ヤベー」と揶揄して終わりだった。
けど、家族と文香にも危害を加えようと企てていたと知って、一気に頭にきて怒鳴っていた。
「自分がやろうとしていた事を分かってるの!? 何をするつもりだった? 他人を巻き込んだらただの犯罪でしょう!」
私が激昂したのを見て、さやかさんは目を細めて笑った。
その直後、バッと両手で自分を庇って「キャッ」と悲鳴を上げる。
「ごめんなさい! 怒らないで! 怖い!」
「はぁ……?」
訳が分からなくて、私は目をまん丸にする。
情緒不安定にもほどがある。
っていうか、私が怒鳴って彼女を怖がらせているみたいじゃない。
(彼女に乗せられないでよ?)
思わず不安になって慎也と正樹を見たけれど、彼らは無反応だ。
安堵したものの、正樹がスッと立ちあがったので「ん?」と彼を見る。
「正樹?」
彼は左右を見回し、キッチンに向かった。
いや、いくら何でも人様の家で勝手に行動するのは……。
そう思っていたけれど、彼はキッチンカウンターの上にある観葉植物を持ち上げた。
そしてその中から小さな黒い物を取り出す。
「おい、録画中かよ」
正樹は凄みのある表情で笑い、カメラの電源を切る。
こっっっっっ…………わ…………。
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