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番外編 2 タワマン事件簿
私は殴られっぱなしのサンドバックじゃない
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「〝男友達〟は大勢いますから」
はい、自作自演を認めましたね。
「彼らが私のために勝手にやった事かもしれません。私は知りませんけど」
あぁー……、取り巻き男性が大勢いるから、自分は何をしたか知りませんと。
「でもさ、あのいかにも怪しい黒ずくめの男、まだマンション付近をウロウロしてるよね? もしかしたら〝女王様〟にご褒美がもらいたくてうろついてるんじゃない? その内また何かしでかしたら、今度こそとっ捕まって、誰に命じられたのかゲロするかもね」
あ、正樹の口調が変わった。
そして黒ずくめの男性がマンション付近にいると知って、さやかさんの表情がピクッと緊張した。
これは知らされてない奴かな?
「まぁ、そっちは警察がいずれどうにかしてくれるよね。成宮さん達は被害届を出してる訳だから。根掘り葉掘りされたら困る、誰かさんと違って」
正樹が嘲笑する。
「『夫を心配させたくなかった』は嘘。あんたには夫なんていない。成宮さんを突き飛ばした男との関係をほのめかすぐらいなら、あんたの家に押し入った強盗も、ほぼやらせで確定。物を盗られたっていっても、本当はあとから返してもらってるか、何も盗られてないんだろ? それっぽく見えるようにちょっと痣をつけておいて、シクシク泣いてれば皆同情してくれると思ったんだよな?」
正樹の言葉の端々から、苛つきが伝わってくる。
「なんでそんな事をしたんですか? 成宮さんへの恨みは、服が被ったというしょうもない理由だとして、杉川さんの旦那さんに迫った事や、三笠さんを脅して優美の写真を撮らせた事、そして優美の写真に穴を空けた事への弁明は?」
慎也がさらに問い詰める。
さやかさんは相変わらず、微笑んでるけど目が笑ってない。
その目で私を見てきたので、ゾクッとしてしまった。
「美香さんはいつも威張ってるから嫌いなんです。ババアのくせに若作りして、億トレーダーの旦那がいる? 夫婦共に浮気しているくせに別れないんですよ? とっとと別れて、見た目だけが好みっていうジジイとでも再婚すればいいのに。そうしたら私が光圀さんと再婚してもいいのになー、ってちょっと思ってました」
おい、大した自信だな。
「でもあの地味男、私が話しかけても迷惑そうな顔をするんです。失礼しちゃう。だから清花さんが入ってきたタイミングで困らせてやりました。今さら光圀さんに女好きの疑惑が増えても、大して変わらないでしょう? ダブル不倫の夫婦なんですから」
……凄い毒だなぁ。
五十嵐さんに佐藤さんに、色々あったけど、この人も真性だな。
そんでもって、私は美香さんと光圀さんの真実を知っている。
だからこの人も、勝手なイメージで勝手な事を言ってるなと、ちょっとムカついてしまった。
あの夫婦は回り道をしてしまったけど、あの夫婦なりに愛し合っていたのに。
「他人の家庭を引っかき回して楽しいですか? 美香さんがさやかさんに何かしましたか? 彼女の性格的に、気に食わない事があったのは察します。でもあなたのやっている事は常軌を逸しています」
私はさやかさんの無感情な目を見つめ返し、言い返す。
すると、彼女はニタァ……と笑った。
「優美さんって、そうやっていつも『自分は正しいんです』っていう顔をして、いいですねぇ。美人でスタイルが良くて、美男をはべらせて、ダイエット法を皆に伝授して、清花さんの事も励まして? 頼られて凄いですねぇ。気持ちいいでしょうねぇ。みぃーんな、あなたの思うがままですね?」
「それって、ただの嫉妬ですよね?」
私はスパンと切り返す。
「今まであなたみたいな人を何人も見てきました。私は意図的に誰かに嫌がらせをしていないし、悪意を持って接した事なんてありません。気に食わないから、自分はそうなれないからという理由で、何回も一方的に恨みを買っていました。あなたもそれと同じです。何も特別じゃない」
特別じゃないと言われて、さやかさんの笑みが消えた。
「優美さんは何千万も稼げますか? 私はこの顔と、磨き上げた体と話術で稼いできました」
「凄いと思いますよ、シンプルにそう思います。私にはできない」
そう言った途端、さやかさんが噛み付いてきた。
「は? 何ですか? その上から目線は。夜に働く事はできないって、ペントハウスから見下ろしているんですか? 小さい食品会社勤務で、汗臭く営業していただけなのに、運良く久賀城ホールディングスの御曹司に見初められたから、そこまで人を見下すんですか? すごーい」
あぁ……、もう、なぁー。
慎也と正樹も両側で溜め息をついている。
「劣等感があるとこうなるよなぁ。そこまで言ってないのに、誇大解釈する」
正樹が脚を組む。
はい、自作自演を認めましたね。
「彼らが私のために勝手にやった事かもしれません。私は知りませんけど」
あぁー……、取り巻き男性が大勢いるから、自分は何をしたか知りませんと。
「でもさ、あのいかにも怪しい黒ずくめの男、まだマンション付近をウロウロしてるよね? もしかしたら〝女王様〟にご褒美がもらいたくてうろついてるんじゃない? その内また何かしでかしたら、今度こそとっ捕まって、誰に命じられたのかゲロするかもね」
あ、正樹の口調が変わった。
そして黒ずくめの男性がマンション付近にいると知って、さやかさんの表情がピクッと緊張した。
これは知らされてない奴かな?
「まぁ、そっちは警察がいずれどうにかしてくれるよね。成宮さん達は被害届を出してる訳だから。根掘り葉掘りされたら困る、誰かさんと違って」
正樹が嘲笑する。
「『夫を心配させたくなかった』は嘘。あんたには夫なんていない。成宮さんを突き飛ばした男との関係をほのめかすぐらいなら、あんたの家に押し入った強盗も、ほぼやらせで確定。物を盗られたっていっても、本当はあとから返してもらってるか、何も盗られてないんだろ? それっぽく見えるようにちょっと痣をつけておいて、シクシク泣いてれば皆同情してくれると思ったんだよな?」
正樹の言葉の端々から、苛つきが伝わってくる。
「なんでそんな事をしたんですか? 成宮さんへの恨みは、服が被ったというしょうもない理由だとして、杉川さんの旦那さんに迫った事や、三笠さんを脅して優美の写真を撮らせた事、そして優美の写真に穴を空けた事への弁明は?」
慎也がさらに問い詰める。
さやかさんは相変わらず、微笑んでるけど目が笑ってない。
その目で私を見てきたので、ゾクッとしてしまった。
「美香さんはいつも威張ってるから嫌いなんです。ババアのくせに若作りして、億トレーダーの旦那がいる? 夫婦共に浮気しているくせに別れないんですよ? とっとと別れて、見た目だけが好みっていうジジイとでも再婚すればいいのに。そうしたら私が光圀さんと再婚してもいいのになー、ってちょっと思ってました」
おい、大した自信だな。
「でもあの地味男、私が話しかけても迷惑そうな顔をするんです。失礼しちゃう。だから清花さんが入ってきたタイミングで困らせてやりました。今さら光圀さんに女好きの疑惑が増えても、大して変わらないでしょう? ダブル不倫の夫婦なんですから」
……凄い毒だなぁ。
五十嵐さんに佐藤さんに、色々あったけど、この人も真性だな。
そんでもって、私は美香さんと光圀さんの真実を知っている。
だからこの人も、勝手なイメージで勝手な事を言ってるなと、ちょっとムカついてしまった。
あの夫婦は回り道をしてしまったけど、あの夫婦なりに愛し合っていたのに。
「他人の家庭を引っかき回して楽しいですか? 美香さんがさやかさんに何かしましたか? 彼女の性格的に、気に食わない事があったのは察します。でもあなたのやっている事は常軌を逸しています」
私はさやかさんの無感情な目を見つめ返し、言い返す。
すると、彼女はニタァ……と笑った。
「優美さんって、そうやっていつも『自分は正しいんです』っていう顔をして、いいですねぇ。美人でスタイルが良くて、美男をはべらせて、ダイエット法を皆に伝授して、清花さんの事も励まして? 頼られて凄いですねぇ。気持ちいいでしょうねぇ。みぃーんな、あなたの思うがままですね?」
「それって、ただの嫉妬ですよね?」
私はスパンと切り返す。
「今まであなたみたいな人を何人も見てきました。私は意図的に誰かに嫌がらせをしていないし、悪意を持って接した事なんてありません。気に食わないから、自分はそうなれないからという理由で、何回も一方的に恨みを買っていました。あなたもそれと同じです。何も特別じゃない」
特別じゃないと言われて、さやかさんの笑みが消えた。
「優美さんは何千万も稼げますか? 私はこの顔と、磨き上げた体と話術で稼いできました」
「凄いと思いますよ、シンプルにそう思います。私にはできない」
そう言った途端、さやかさんが噛み付いてきた。
「は? 何ですか? その上から目線は。夜に働く事はできないって、ペントハウスから見下ろしているんですか? 小さい食品会社勤務で、汗臭く営業していただけなのに、運良く久賀城ホールディングスの御曹司に見初められたから、そこまで人を見下すんですか? すごーい」
あぁ……、もう、なぁー。
慎也と正樹も両側で溜め息をついている。
「劣等感があるとこうなるよなぁ。そこまで言ってないのに、誇大解釈する」
正樹が脚を組む。
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