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番外編 2 タワマン事件簿
あとは事実を確認していくだけだ
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「私がお二人を知った時は、結婚されていませんでしたよね?」
「ホステスされてて、実業家と結婚したんじゃなかったんですか?」
慎也もグイグイ攻めるな。
「別れました」
にっこり笑顔で言うので、……ひいい……怖いよぉ……。
「では、KOJIも嘘ですね?」
慎也に尋ねられ、さやかさんは微笑んだまま私を見る。
「あら、優美さん。秘密ですよって言ったのに、あっさり約束を破るんですね? 酷いです」
「……夫には相談しなければなりませんから」
私は押し殺した声で言う。
怖い……。怖いよ……。
彼女、目が笑ってない……。
「嘘ですね?」
慎也が念を押す。
「ええ、嘘ですよ。好みではありますけど」
あいたたたた……。
「うちの妻の写真に穴を空けて、成宮さんが住んでいる三十一階のゴミ箱に捨てましたか?」
慎也は淡々と質問する。
「真似されたら腹立ちません?」
「え?」
彼女の言わんとする事が分からず、私は声を上げる。
「彼女、パーティーで私が着ていたワンピースを『素敵ですね』と言って、どこのブランドの物か聞いてきたんです。そうしたら後日、外出している彼女が同じ物を着ているのを見ました」
「……それぐらい範疇じゃないです? 別に意図的に、同じ場所で被せてきた訳じゃないんですから」
確かにパーティーとかでドレスの被りがあったら、ちょっとやだなと思う。
でも世の中色んなブランドがあって、色んな服があるけど、オーダーメイドの一点物でない限り、どこかで誰かが同じ物を着ている。
「素敵だな」と思ったなら、同じ物を持つぐらい、いいんじゃないかと私は思う。
「真似する女は、放っておくと何でも真似するんですよ。彼女、パンプスが同じだった事もありました」
「んー……」
確かに女性の中で、真似っこって嫌がられる事はある。
最初は「素敵な物だと思ったから」で自分もほしくなる。
大体、素敵な物を持っている人って、センスがいい。
「あれもいいな、これもいいな」と思ううちに、色んなアイテムが被っていく可能性がある。
ホラー映画みたいな展開になると、双子コーデみたいになって、そのうち性格や振る舞いまで似せてきて……なんてのもあるけど。
根っこにある感情は、初めのうちは憧れや単なる好意だろう。
「素敵な物を欲しい」と思う、シンプルな物欲とか。
けど「真似されてる」と思う側が、良く思うか悪く思うかだ。
文香みたいにフォロワーが万単位でいる人は、自分が他人に影響を与えるのが前提だから、もはや「真似されて嫌だ」なんて考えていないだろう。
でも、ごく小さな交友範囲でそれが起こると、ちょっと微妙な感情が生まれるのも分からないでもない。
私も前の会社で「真似していいですか?」って言われた事はちょいちょいあった。
けど全然気にしなかった。むしろ、人に影響を与えられて嬉しい、光栄と思うというか。
でも変にプライドが高い人は、自分の唯一無二のセンスの劣化品みたいに感じるのかな。
その人も誰かの影響は受けているだろうに。
それはそうと……。
「清花さんが同じワンピースを着ていたから、彼女は階段で突き落とされたんですか? 監視カメラには黒ずくめの男性が映っていたらしいですが、……さやかさんのお知り合いですか?」
私は「違ったらいいな」と思っていた事を口にする。
彼女にはいい人であってほしかったけど、もう心の中で切り捨てた。
あとは事実を確認していくだけだ。
なぜこうなったのか、私たちはそれを知りたい。
「何も殺した訳じゃないんですから、いいじゃないです? 私に不快な思いをさせた事を、ちょっと怪我して脅かした事と、優美さんの穴あき写真の容疑を掛けられるぐらいで、済ませてあげたんですから」
キョトン顔で言うんだからなぁ、もぉぉぉ……。コワイヨー。
「知り合いなんですね?」
慎也が溜め息混じりに聞く。
「ホステスされてて、実業家と結婚したんじゃなかったんですか?」
慎也もグイグイ攻めるな。
「別れました」
にっこり笑顔で言うので、……ひいい……怖いよぉ……。
「では、KOJIも嘘ですね?」
慎也に尋ねられ、さやかさんは微笑んだまま私を見る。
「あら、優美さん。秘密ですよって言ったのに、あっさり約束を破るんですね? 酷いです」
「……夫には相談しなければなりませんから」
私は押し殺した声で言う。
怖い……。怖いよ……。
彼女、目が笑ってない……。
「嘘ですね?」
慎也が念を押す。
「ええ、嘘ですよ。好みではありますけど」
あいたたたた……。
「うちの妻の写真に穴を空けて、成宮さんが住んでいる三十一階のゴミ箱に捨てましたか?」
慎也は淡々と質問する。
「真似されたら腹立ちません?」
「え?」
彼女の言わんとする事が分からず、私は声を上げる。
「彼女、パーティーで私が着ていたワンピースを『素敵ですね』と言って、どこのブランドの物か聞いてきたんです。そうしたら後日、外出している彼女が同じ物を着ているのを見ました」
「……それぐらい範疇じゃないです? 別に意図的に、同じ場所で被せてきた訳じゃないんですから」
確かにパーティーとかでドレスの被りがあったら、ちょっとやだなと思う。
でも世の中色んなブランドがあって、色んな服があるけど、オーダーメイドの一点物でない限り、どこかで誰かが同じ物を着ている。
「素敵だな」と思ったなら、同じ物を持つぐらい、いいんじゃないかと私は思う。
「真似する女は、放っておくと何でも真似するんですよ。彼女、パンプスが同じだった事もありました」
「んー……」
確かに女性の中で、真似っこって嫌がられる事はある。
最初は「素敵な物だと思ったから」で自分もほしくなる。
大体、素敵な物を持っている人って、センスがいい。
「あれもいいな、これもいいな」と思ううちに、色んなアイテムが被っていく可能性がある。
ホラー映画みたいな展開になると、双子コーデみたいになって、そのうち性格や振る舞いまで似せてきて……なんてのもあるけど。
根っこにある感情は、初めのうちは憧れや単なる好意だろう。
「素敵な物を欲しい」と思う、シンプルな物欲とか。
けど「真似されてる」と思う側が、良く思うか悪く思うかだ。
文香みたいにフォロワーが万単位でいる人は、自分が他人に影響を与えるのが前提だから、もはや「真似されて嫌だ」なんて考えていないだろう。
でも、ごく小さな交友範囲でそれが起こると、ちょっと微妙な感情が生まれるのも分からないでもない。
私も前の会社で「真似していいですか?」って言われた事はちょいちょいあった。
けど全然気にしなかった。むしろ、人に影響を与えられて嬉しい、光栄と思うというか。
でも変にプライドが高い人は、自分の唯一無二のセンスの劣化品みたいに感じるのかな。
その人も誰かの影響は受けているだろうに。
それはそうと……。
「清花さんが同じワンピースを着ていたから、彼女は階段で突き落とされたんですか? 監視カメラには黒ずくめの男性が映っていたらしいですが、……さやかさんのお知り合いですか?」
私は「違ったらいいな」と思っていた事を口にする。
彼女にはいい人であってほしかったけど、もう心の中で切り捨てた。
あとは事実を確認していくだけだ。
なぜこうなったのか、私たちはそれを知りたい。
「何も殺した訳じゃないんですから、いいじゃないです? 私に不快な思いをさせた事を、ちょっと怪我して脅かした事と、優美さんの穴あき写真の容疑を掛けられるぐらいで、済ませてあげたんですから」
キョトン顔で言うんだからなぁ、もぉぉぉ……。コワイヨー。
「知り合いなんですね?」
慎也が溜め息混じりに聞く。
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