上 下
515 / 539
番外編 2 タワマン事件簿

あとは事実を確認していくだけだ

しおりを挟む
「私がお二人を知った時は、結婚されていませんでしたよね?」

「ホステスされてて、実業家と結婚したんじゃなかったんですか?」

 慎也もグイグイ攻めるな。

「別れました」

 にっこり笑顔で言うので、……ひいい……怖いよぉ……。

「では、KOJIも嘘ですね?」

 慎也に尋ねられ、さやかさんは微笑んだまま私を見る。

「あら、優美さん。秘密ですよって言ったのに、あっさり約束を破るんですね? 酷いです」

「……夫には相談しなければなりませんから」

 私は押し殺した声で言う。

 怖い……。怖いよ……。
 彼女、目が笑ってない……。

「嘘ですね?」

 慎也が念を押す。

「ええ、嘘ですよ。好みではありますけど」

 あいたたたた……。

「うちの妻の写真に穴を空けて、成宮さんが住んでいる三十一階のゴミ箱に捨てましたか?」

 慎也は淡々と質問する。

「真似されたら腹立ちません?」

「え?」

 彼女の言わんとする事が分からず、私は声を上げる。

「彼女、パーティーで私が着ていたワンピースを『素敵ですね』と言って、どこのブランドの物か聞いてきたんです。そうしたら後日、外出している彼女が同じ物を着ているのを見ました」

「……それぐらい範疇じゃないです? 別に意図的に、同じ場所で被せてきた訳じゃないんですから」

 確かにパーティーとかでドレスの被りがあったら、ちょっとやだなと思う。

 でも世の中色んなブランドがあって、色んな服があるけど、オーダーメイドの一点物でない限り、どこかで誰かが同じ物を着ている。

「素敵だな」と思ったなら、同じ物を持つぐらい、いいんじゃないかと私は思う。

「真似する女は、放っておくと何でも真似するんですよ。彼女、パンプスが同じだった事もありました」

「んー……」

 確かに女性の中で、真似っこって嫌がられる事はある。

 最初は「素敵な物だと思ったから」で自分もほしくなる。

 大体、素敵な物を持っている人って、センスがいい。
「あれもいいな、これもいいな」と思ううちに、色んなアイテムが被っていく可能性がある。

 ホラー映画みたいな展開になると、双子コーデみたいになって、そのうち性格や振る舞いまで似せてきて……なんてのもあるけど。

 根っこにある感情は、初めのうちは憧れや単なる好意だろう。
「素敵な物を欲しい」と思う、シンプルな物欲とか。

 けど「真似されてる」と思う側が、良く思うか悪く思うかだ。

 文香みたいにフォロワーが万単位でいる人は、自分が他人に影響を与えるのが前提だから、もはや「真似されて嫌だ」なんて考えていないだろう。

 でも、ごく小さな交友範囲でそれが起こると、ちょっと微妙な感情が生まれるのも分からないでもない。

 私も前の会社で「真似していいですか?」って言われた事はちょいちょいあった。

 けど全然気にしなかった。むしろ、人に影響を与えられて嬉しい、光栄と思うというか。

 でも変にプライドが高い人は、自分の唯一無二のセンスの劣化品みたいに感じるのかな。
 その人も誰かの影響は受けているだろうに。

 それはそうと……。

「清花さんが同じワンピースを着ていたから、彼女は階段で突き落とされたんですか? 監視カメラには黒ずくめの男性が映っていたらしいですが、……さやかさんのお知り合いですか?」

 私は「違ったらいいな」と思っていた事を口にする。

 彼女にはいい人であってほしかったけど、もう心の中で切り捨てた。
 あとは事実を確認していくだけだ。

 なぜこうなったのか、私たちはそれを知りたい。

「何も殺した訳じゃないんですから、いいじゃないです? 私に不快な思いをさせた事を、ちょっと怪我して脅かした事と、優美さんの穴あき写真の容疑を掛けられるぐらいで、済ませてあげたんですから」

 キョトン顔で言うんだからなぁ、もぉぉぉ……。コワイヨー。

「知り合いなんですね?」

 慎也が溜め息混じりに聞く。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

【R-18・短編】部長と私の秘め事

臣桜
恋愛
彼氏にフラれた上村朱里は、酔い潰れていた所を上司の速見尊に拾われ、家まで送られる。タクシーの中で元彼との気が進まないセックスの話などをしていると、部長が自分としてみるか?と言い……。 かなり前に企画で書いたものです。急いで一日ぐらいで書いたので、本当はもっと続きそうなのですがぶつ切りされています。いつか続きを連載版で書きたいですが……、いつになるやら。 ムーンライトノベルズ様にも転載しています。 表紙はニジジャーニーで生成しました

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

社長の奴隷

星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)

サディストの飼主さんに飼われてるマゾの日記。

恋愛
サディストの飼主さんに飼われてるマゾヒストのペット日記。 飼主さんが大好きです。 グロ表現、 性的表現もあります。 行為は「鬼畜系」なので苦手な人は見ないでください。 基本的に苦痛系のみですが 飼主さんとペットの関係は甘々です。 マゾ目線Only。 フィクションです。 ※ノンフィクションの方にアップしてたけど、混乱させそうなので別にしました。

ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~

taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。 お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥ えっちめシーンの話には♥マークを付けています。 ミックスド★バスの第5弾です。

処理中です...