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番外編 2 タワマン事件簿

久賀城家リモート会議

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「あぁ……、確かに。ごめん。でも彼は改善の余地がありそうだったよ? 社会的地位のある人だし、へたな事しないんじゃないかな?」

「そうなんだけどさ」

 彼は脚を組み直す。

 ついでを言うと、この話し合いにはマンションにいる慎也も、タブレット越しに参加してる。久賀城家リモート会議だ。

「……まー、終わった事をグチグチ言ってもしゃーないか。ただ、起きてる事件の中にはれっきとした犯罪もある。危ないって思ったら、正義感とか責任感とかかなぐり捨てて、すぐ逃げてね」

「うん。心配してくれてありがとう。俊希もいるし、無理はしないよ」

 そう言うと、正樹は軽く微笑んだ。

『……杉川さんのところは解決したとして、怪しいのは奥原さん、三笠さんか……』

 慎也が画面の向こうから言う。
 しばらく黙ったあと、慎也が言った。

『ちょっと三人で三笠さんのところに突撃するか』

「おおう……。強行突破」

「まー、正攻法だね。だって優美ちゃんを盗撮したっていうのは認めた訳でしょ? こっちには聞く権利がある訳だから、ちょっと胸ぐら掴んで揺さぶったら吐くんじゃない?」

「ちょっと! 怖い事言わないでよ!」

 この兄弟はいざとなったら脳筋で解決しようとする。

『次の週末、マンションに来て全員で突撃すっか』

「さんせー!」

 軽いノリで決めた兄弟を前に、私は何も言えずにげんなりしていたのだった。



**



 金曜日のうちに私は俊希を連れて元麻布に向かい、正樹はそのままマンションに帰宅した。

「なんか久しぶりだね~」

 私は使い慣れたキッチンに立ち、夕食を作っている。

 献立は辛さ控えめの、和風だしベースの麻婆豆腐に副菜がちょいちょいだ。

 最初はコンソメを使って作っていたけれど、「いや、これって鰹だしの素を使ったらどうなる?」と思って実験的に使ってみたら、意外と美味しくてそればっかり作るようになった。

 慎也も正樹も激辛は好まない人なので、そのまろやか麻婆豆腐を気に入ってくれていた。
 たまにはピリッとした物を食べると美味しいけど、三人とも薄味が好きなので、刺激のある物にあまり慣れたくないという意識だ。

 その話を聞いた時、私はこう言った。

『刺激が多いとマイルドの良さが分からなくなるなら、エッチする時も道具を控えたら?』

 道理に適っているだろうと思ってどや顔で言ったけど、口を揃えて言われた。

『『それはそれ、これはこれ』』

 私がフレーメン反応を起こした猫みたいな顔になったのは、言うまでもない。

「優美ちゃん、手伝う事ある?」

 シャワーを浴びて着替えた正樹が、すぐキッチンに来る。
 私はパタパタと顔の前で手を振った。

「疲れてるんだから休みなよ」

 キュウリとしらすの酢の物はもう出来ていて、私が好んでよく食べている、白滝と細切り豚肉、えのきの煮物も調理が終わって味を染みこませている。
 お味噌汁は昆布に水を吸わせているところで、あとは麻婆豆腐作業だけ。

「でも何かない~?」

 正樹はぶりっこの真似をして、唇に人差し指を当てて首を傾げる。キモカワイイ。

「はいはい、いいからビールでも飲んでな。あとでにんにく臭くなった手を嗅いで『くっさ!』って言うお仕事あげる」

「なにそれ。魅力的な仕事……」

 私たちがアホな会話をしている間、慎也はシャワーだ。

「っていうか、俊希見てて」

「はーい」

 俊希選手は、室内用のタイヤが柔らかいゴムでできている三輪車で遊んでいる。

 あれかな。あの子は将来ストライダーカップとか出るのかな。

 男の子だし、活発に動く系が好きだったら、早い内から一式揃えてあげるのもいいなぁ。

 っていうか、夏だし海、プール体験をちょっとさせとくのもいいな。
 赤坂のクソデカホームのプールは、大人用だから無理として、子供用のプールを屋上に置かせてもらうとか……。

 そんな事を考えながら、私は長葱とニンニクをみじん切りにして、鷹の爪をハサミでカットして種を減らす。
 それらを油で炒めて葱の香りが立ったところで挽肉イン。

 炒めて挽肉に火が通ったら、お湯や鰹だしの素、調味料を入れて煮立たせ、切った豆腐を入れる。我が家は絹ごし豆腐派だ。

 煮込んでいる間に味噌汁用の大根を切っていると、慎也がお風呂から上がってきた。
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