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番外編 2 タワマン事件簿
言ってもらえませんか?
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清花さんが突き落とされた事件は、光圀さんの名前で呼び出しがあった。
それに彼女はこうも言っていた。
『私、見ちゃったんです。光圀さんがさやかさんとキスしてるの……』
色々あって、さやかさんは何だか怪しいなという流れになっていた。
清花さんは巻き込まれた感があって、一方的な被害者である印象が強かったけれど、実は嘘を言っていた……?
光圀さんの〝素〟を見た以上、彼が腹黒さを隠しているように感じられない。
私が唇を曲げて考え事をしていたからか、美香さんが声を掛けてくる。
「優美さん、何かありましたか?」
「いえ……」
私は鼻を擦り、チラッと窓の外を見る。
すると彼女がクスクス笑った。
「〝何か〟あるのがダダ漏れですよ。優美さんって、嘘がつけないタイプですよね? 全部顔に出ちゃうというか」
「いや、あの……」
動揺して口ごもっている時点で、自分でも駄目だと分かっている。
そしてチラッと光圀さんを見てしまったので、彼女はすぐ察したようだった。
「夫にまだ何かありますか? 浮気の疑惑が晴れた以上、私は夫を信じています。何を言われても動じません。言ってもらえませんか?」
「何を聞かれても答えます」
光圀さんにも言われ、私は観念する。
「……清花さんが階段から突き落とされた事件、ありましたよね」
「ええ、不幸な出来事だったわ。警察は黒ずくめの男を追っているようだけれど、まだ捕まっていないみたいね」
美香さんは悠然と構えた様子で、光圀さんも特に動揺していない。
「何を話すんだろう?」と、何の構えもなく聞いている表情だ。
だから無関係だと信じて切り出してみた。
「……清花さんが突き落とされた階段に行ったのは、彼女を呼び出すメモがあったからです。印字されたそれには、光圀さんの名前が書いてあったと聞きました」
「えぇ?」
まず光圀さんが声を上げ、困惑した表情になる。
美香さんは夫に「どうなの?」と尋ねる。
「まったく身に覚えがありません。そもそも、成宮さんとはそれほど話しませんし、僕は妻ほど社交的ではないです。パーティーの時も隅でボーッとしていましたし、彼女を呼び出しても話題がありません」
私こそ困惑していると、美香さんが夫を援護する。
「本当の事を言っていると思うわ。この人、本当に社交的じゃないから」
「……失礼ながら、そのようですね」
うん、と頷き、私は人差し指を立てる。
「もう一つ」
「何でもどうぞ」
美香さんが自信満々に言う。
うーん、もう一つは大丈夫かな……。
でもここまできたら言ってみようと思い、口を開く。
「……光圀さんとさやかさんが、キスしているところを見たと……」
言ってしまってから、「うわー」と後悔して変な汗を掻く。
顔を上げると、美香さんは髪を掻き上げ夫を見た。
「ああ……」
これは思い当たる事があったのか、光圀さんが声を上げた。
いや、心当たりあったんかい!
まずった……。
ソワソワしている私の前で、光圀さんは特に動揺せず話しだす。
「コンビニから帰った時、待ち伏せしていたように奥原さんがエントランスで待っていました。普段まったく話さない彼女に声を掛けられて『変だな』とは感じました。そのあと『話がある』と言われてロビーの奥で雑談しましたが、特に内容のないものでした」
「どんな話?」
美香さんが言い、光圀さんは首を傾げる。
「本当に……、意味のなさない、僕にはまったく興味のない話です。美味しいケーキ屋さんとか、新しいカフェができたとか、彼女は興味があっても、僕はまったく」
「……まぁ、確かに光圀さんにとっては意味のない話ですね」
男性でも甘い物が好きな人はいるけれど、光圀さんが「興味がない」と言ったならそうなのだろう
「その時、ロビーのソファに座って話していたのではなく、柱の近くで立ったまま話していました。『座ればいいのにな』と思っていたので覚えています。それで、急に彼女が距離を詰めてきたので、『近い』と思って後ずさりました。そのあと彼女が走って逃げていったので、ポカンとしてしまって……」
「あー……」
頭の中で文香が「奥原ー、アウトー」と言っているのが聞こえた気がした。
それに彼女はこうも言っていた。
『私、見ちゃったんです。光圀さんがさやかさんとキスしてるの……』
色々あって、さやかさんは何だか怪しいなという流れになっていた。
清花さんは巻き込まれた感があって、一方的な被害者である印象が強かったけれど、実は嘘を言っていた……?
光圀さんの〝素〟を見た以上、彼が腹黒さを隠しているように感じられない。
私が唇を曲げて考え事をしていたからか、美香さんが声を掛けてくる。
「優美さん、何かありましたか?」
「いえ……」
私は鼻を擦り、チラッと窓の外を見る。
すると彼女がクスクス笑った。
「〝何か〟あるのがダダ漏れですよ。優美さんって、嘘がつけないタイプですよね? 全部顔に出ちゃうというか」
「いや、あの……」
動揺して口ごもっている時点で、自分でも駄目だと分かっている。
そしてチラッと光圀さんを見てしまったので、彼女はすぐ察したようだった。
「夫にまだ何かありますか? 浮気の疑惑が晴れた以上、私は夫を信じています。何を言われても動じません。言ってもらえませんか?」
「何を聞かれても答えます」
光圀さんにも言われ、私は観念する。
「……清花さんが階段から突き落とされた事件、ありましたよね」
「ええ、不幸な出来事だったわ。警察は黒ずくめの男を追っているようだけれど、まだ捕まっていないみたいね」
美香さんは悠然と構えた様子で、光圀さんも特に動揺していない。
「何を話すんだろう?」と、何の構えもなく聞いている表情だ。
だから無関係だと信じて切り出してみた。
「……清花さんが突き落とされた階段に行ったのは、彼女を呼び出すメモがあったからです。印字されたそれには、光圀さんの名前が書いてあったと聞きました」
「えぇ?」
まず光圀さんが声を上げ、困惑した表情になる。
美香さんは夫に「どうなの?」と尋ねる。
「まったく身に覚えがありません。そもそも、成宮さんとはそれほど話しませんし、僕は妻ほど社交的ではないです。パーティーの時も隅でボーッとしていましたし、彼女を呼び出しても話題がありません」
私こそ困惑していると、美香さんが夫を援護する。
「本当の事を言っていると思うわ。この人、本当に社交的じゃないから」
「……失礼ながら、そのようですね」
うん、と頷き、私は人差し指を立てる。
「もう一つ」
「何でもどうぞ」
美香さんが自信満々に言う。
うーん、もう一つは大丈夫かな……。
でもここまできたら言ってみようと思い、口を開く。
「……光圀さんとさやかさんが、キスしているところを見たと……」
言ってしまってから、「うわー」と後悔して変な汗を掻く。
顔を上げると、美香さんは髪を掻き上げ夫を見た。
「ああ……」
これは思い当たる事があったのか、光圀さんが声を上げた。
いや、心当たりあったんかい!
まずった……。
ソワソワしている私の前で、光圀さんは特に動揺せず話しだす。
「コンビニから帰った時、待ち伏せしていたように奥原さんがエントランスで待っていました。普段まったく話さない彼女に声を掛けられて『変だな』とは感じました。そのあと『話がある』と言われてロビーの奥で雑談しましたが、特に内容のないものでした」
「どんな話?」
美香さんが言い、光圀さんは首を傾げる。
「本当に……、意味のなさない、僕にはまったく興味のない話です。美味しいケーキ屋さんとか、新しいカフェができたとか、彼女は興味があっても、僕はまったく」
「……まぁ、確かに光圀さんにとっては意味のない話ですね」
男性でも甘い物が好きな人はいるけれど、光圀さんが「興味がない」と言ったならそうなのだろう
「その時、ロビーのソファに座って話していたのではなく、柱の近くで立ったまま話していました。『座ればいいのにな』と思っていたので覚えています。それで、急に彼女が距離を詰めてきたので、『近い』と思って後ずさりました。そのあと彼女が走って逃げていったので、ポカンとしてしまって……」
「あー……」
頭の中で文香が「奥原ー、アウトー」と言っているのが聞こえた気がした。
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