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番外編 2 タワマン事件簿
浮気現場に遭遇
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二人は無言でそちらを見る。
視線の先には、大人しそうな男性と気の強そうな美女が座っている。
男性は――、美香さんの夫の光圀さんだ。
向かいに座っている女性は、美香さんと似たタイプではあるけど、まるっきりの別人。
二人を見たあと、私たちは無言で顔を見合わせ、聞き耳を立てる。
けれど光圀さんは声が大きいほうじゃないし、女性も周囲に聞こえない声量で話してる。
耳を澄ましても他のお客さんの声や環境音もあり、少し離れた席の会話は聞こえなかった。
諦めた私は溜め息をつき、ガラスのポットの中にある花びらを見る。
「……彼女が浮気相手かな」
ポソッと呟くと、二人が私を見る。
「なのかねー」
正樹は小声で言い、紅茶を飲む。
「浮気相手も、妻と似たタイプか」
慎也はボソッと言って「ふーん」という表情で頷いている。
他人の事だけど、知ってる人が浮気相手と一緒にいる現場を見てしまって、私はなんだかしょんぼりしていた。
「どったの?」
そんな私の変化を正樹が気づき、顔を近づけて小さな声で尋ねてくる。
「……や。なんかショック受けちゃって」
「純粋だね~」
正樹は皮肉げに笑い、優雅に紅茶を飲む。
ティーカップを見ている私の額を、手を伸ばした慎也がピシッとデコピンしてきた。
「あたっ」
「優美? 余計な事考えてないか? 〝俺たち〟に関係ないからな?」
「ん」
慎也に見透かされた通り、つい「二人も〝仮に〟浮気したら、こんな風に家から離れたカフェにいるのかな」なんて、想像をしてしまっていた。
ちょっと動揺すると、すぐ自分の身に起こったら……って考えちゃうの、駄目だな。
他人と自分は切り離して考えないと。
そう思うものの、他にも心の中でモヤモヤとしている事がある。
清花さんの話では、光圀さんがさやかさんに迫ってキスをしていたらしい。
光圀さんって超草食タイプに見えて、実は肉食……?
それに彼が実際女性と会っているのをこの目で見て、美香さんに同情する気持ちも芽生えた。
彼女は慎也に、自分は色んな人と〝仲良く〟していると堂々と言った。
それが夫への反発なのだとしたら、何も言えない。
だって、想像したら気持ちは分かる。
結婚式で「誓います」と言ったはずなのに、妻以外の人を愛して〝大切〟を他に作っていたら、私なら泣く。
二人に浮気されても、俊希がいるから離婚したくないと思うかもしれない。
一人でも育てていきたいけど、父親がいない寂しさは味わわせたくない。
美香さんと光圀さんの間に、子供はいない。
でも子供の代わりになる〝離婚しない理由〟はあるのだろう。
世間体とか、利害関係とか、私には分からない〝何か〟があると思う。
(でも、夫婦で同じ家に住んでいるのに、二人とも違う方向を向いているって寂しいな……)
しんみりとしていた時に、フレンチトーストが運ばれてきた。
「わあー、きれー」
「顔が死んでる」
「洗剤のCMか」
すかさず二人に突っ込まれる。
「だって……、もぉぉ……」
私はぶんむくれつつ、綺麗なフレンチトーストをしっかり写真に収めた。
エディブルフラワーがのっていて、めっちゃ映えるし……。
五十嵐さんとはフォトジェニスタで再度繋がるようになって、彼女は私の投稿を楽しみにしてくれていた。
家庭料理には「今度レシピ教えてほしい」とコメントがついたり、こうやって外食に出ると「行ってみる」もしくは「一緒に行きたい」とコメントをつけてくれる。
そうやって好意を見せてくれると、嬉しくなる。
文香からは、彼女の行った事のないお店の投稿をすると、対抗意識を燃やして「私とも行って」とコメントがある。
そういう意味で、情報共有って大事だなと思う。
文香の個人アカウントでは、彼女のお洒落な生活をのぞき見できる。
私も彼女の写真を見て素敵なお店を見つけたら「今度行ってみよう」と思うので、お互いいい使い方ができていると思っている。
「まぁ、せっかく甘いもん食べるんだから、気持ち切り替えなよ」
正樹と慎也はオムライスを頼んでいる。
視線の先には、大人しそうな男性と気の強そうな美女が座っている。
男性は――、美香さんの夫の光圀さんだ。
向かいに座っている女性は、美香さんと似たタイプではあるけど、まるっきりの別人。
二人を見たあと、私たちは無言で顔を見合わせ、聞き耳を立てる。
けれど光圀さんは声が大きいほうじゃないし、女性も周囲に聞こえない声量で話してる。
耳を澄ましても他のお客さんの声や環境音もあり、少し離れた席の会話は聞こえなかった。
諦めた私は溜め息をつき、ガラスのポットの中にある花びらを見る。
「……彼女が浮気相手かな」
ポソッと呟くと、二人が私を見る。
「なのかねー」
正樹は小声で言い、紅茶を飲む。
「浮気相手も、妻と似たタイプか」
慎也はボソッと言って「ふーん」という表情で頷いている。
他人の事だけど、知ってる人が浮気相手と一緒にいる現場を見てしまって、私はなんだかしょんぼりしていた。
「どったの?」
そんな私の変化を正樹が気づき、顔を近づけて小さな声で尋ねてくる。
「……や。なんかショック受けちゃって」
「純粋だね~」
正樹は皮肉げに笑い、優雅に紅茶を飲む。
ティーカップを見ている私の額を、手を伸ばした慎也がピシッとデコピンしてきた。
「あたっ」
「優美? 余計な事考えてないか? 〝俺たち〟に関係ないからな?」
「ん」
慎也に見透かされた通り、つい「二人も〝仮に〟浮気したら、こんな風に家から離れたカフェにいるのかな」なんて、想像をしてしまっていた。
ちょっと動揺すると、すぐ自分の身に起こったら……って考えちゃうの、駄目だな。
他人と自分は切り離して考えないと。
そう思うものの、他にも心の中でモヤモヤとしている事がある。
清花さんの話では、光圀さんがさやかさんに迫ってキスをしていたらしい。
光圀さんって超草食タイプに見えて、実は肉食……?
それに彼が実際女性と会っているのをこの目で見て、美香さんに同情する気持ちも芽生えた。
彼女は慎也に、自分は色んな人と〝仲良く〟していると堂々と言った。
それが夫への反発なのだとしたら、何も言えない。
だって、想像したら気持ちは分かる。
結婚式で「誓います」と言ったはずなのに、妻以外の人を愛して〝大切〟を他に作っていたら、私なら泣く。
二人に浮気されても、俊希がいるから離婚したくないと思うかもしれない。
一人でも育てていきたいけど、父親がいない寂しさは味わわせたくない。
美香さんと光圀さんの間に、子供はいない。
でも子供の代わりになる〝離婚しない理由〟はあるのだろう。
世間体とか、利害関係とか、私には分からない〝何か〟があると思う。
(でも、夫婦で同じ家に住んでいるのに、二人とも違う方向を向いているって寂しいな……)
しんみりとしていた時に、フレンチトーストが運ばれてきた。
「わあー、きれー」
「顔が死んでる」
「洗剤のCMか」
すかさず二人に突っ込まれる。
「だって……、もぉぉ……」
私はぶんむくれつつ、綺麗なフレンチトーストをしっかり写真に収めた。
エディブルフラワーがのっていて、めっちゃ映えるし……。
五十嵐さんとはフォトジェニスタで再度繋がるようになって、彼女は私の投稿を楽しみにしてくれていた。
家庭料理には「今度レシピ教えてほしい」とコメントがついたり、こうやって外食に出ると「行ってみる」もしくは「一緒に行きたい」とコメントをつけてくれる。
そうやって好意を見せてくれると、嬉しくなる。
文香からは、彼女の行った事のないお店の投稿をすると、対抗意識を燃やして「私とも行って」とコメントがある。
そういう意味で、情報共有って大事だなと思う。
文香の個人アカウントでは、彼女のお洒落な生活をのぞき見できる。
私も彼女の写真を見て素敵なお店を見つけたら「今度行ってみよう」と思うので、お互いいい使い方ができていると思っている。
「まぁ、せっかく甘いもん食べるんだから、気持ち切り替えなよ」
正樹と慎也はオムライスを頼んでいる。
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