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番外編 2 タワマン事件簿
検索するに限る
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「えー? だって、途方もないじゃん。夜働いてたとして、源氏名を使うんでしょ?」
私は思わず声を上げてしまう。
「いや、結構法則があって」
トントンとスマホをタップしながら、五十嵐さんが言う。
「銀座のホステスって、客層がいいから本名率が高いんだって。金払いがいいし、客も家庭とか守りたいものがあるから、変な関係にはなりにくいらしい」
「へー!」
未知の世界に、私は納得の声を上げる。
「クラブのホステスも、キャバ嬢も、まず名前を覚えてもらうのが第一でしょ? で、源氏名だと嘘っぽい。……二次元キャラの名前みたいだから、顔と名前が一致しないんだって。だから本名を晒しても構わないホステスの場合、名前と顔が一致しするほうが、覚えられやすいらしい」
「へぇ……」
今度は文香が目を丸くして頷いている。
「逆にキャバ嬢は、高級クラブに比べたら比較的手を出しやすいでしょ? 金を払わず付き合いたい男が沸きやすく、ストーカーがつきやすい。だから源氏名を使う。けど指名がほしい。スマホの電話帳を開いて一番先にくるのは?」
「『あ』」
私はシンプルな答えを言う。
「正解。だから〝あいか〟とか〝あいな〟とか、そういう名前が人気」
「なるほどねー!」
私は何度もうんうんと頷く。
「だからその女がもし銀座の女なら、本名でどこかに引っ掛かると思うし、源氏名を使っていたとしても、この辺に住んでるとかちょっと個人情報入れたら、誰かが呟いてそうなんだけど」
後半はちょっと怖い。
「……あ、あった」
「マジか」
文香が五十嵐さんのスマホを覗き込む。
「どれどれ」
私も反対側から覗き込むと、〝さやか〟というアカウント名で、アイコンが口元だけの自撮り写真だ。
五十嵐さんが画面をスクロールさせていくと、高級ワインや車、バッグに靴にアクセサリー、服に着物に高級レストラン、海外旅行……と、バブリーだ。
「これ、店とかこの界隈でしょ。で、つい最近も更新がある。現在進行形」
す、すげぇ……。
「一緒にいる客を写してないのは、配慮だろうね。相手は社会的に地位のある人だろうから、バレたら色々まずいだろうし」
色々思うところはあるものの、私はついつい五十嵐さんのスマホを見る。
「……っていうか、それは仕事用のアカウントだから仕方ないとして、旦那さんの陰がないね」
「それなー」
同意しながら、五十嵐さんは一つ一つの投稿日時を確認していく。凄い。
「っていうか、旦那が仕事で忙しくて別居してるとしても、これ……、十日ぐらい海外行ってるけど、その間旦那にはどう説明してた訳? 友達?」
「うーん……」
スマホの画面には、忘れもしないハワイの写真が載っている。
相手を写さないように配慮はしてるけど、友達同士で行っているっていうよりは、姿はないものの〝匂わせ〟がある。
この匂わせ投稿っていうのも、最近では自撮りテクの一つらしいけど、このアカウントのはガチに相手がいる写真の撮り方だ。
「……っていうか、旦那がKOJIってのも、嘘でね?」
五十嵐さんが脚を組んで言う。
「っぽいなー」
文香も腕を組み、ソファの背もたれにもたれかかって頷く。
「そうなの!?」
私は実際に彼女と顔を合わせて話したので、嘘をつかれたと思っていなかった。
「優美は人がいいからなぁ」
文香が唇を歪めて笑う。
「こういうマンションに住んでて、美人で芸能人の妻って言われたら信じそうだけど、KOJIレベルの有名人なら、家が知られたら一発アウトな訳でしょ。幾ら優美さんが信用できるって言っても、ペロッと内緒話で言っちゃうような女って選ばれないと思うな」
「あー、確かに……」
言われて納得すると同時に、「信用してくれたんだな」と思っていた自分がちょっと恥ずかしい。
私は思わず声を上げてしまう。
「いや、結構法則があって」
トントンとスマホをタップしながら、五十嵐さんが言う。
「銀座のホステスって、客層がいいから本名率が高いんだって。金払いがいいし、客も家庭とか守りたいものがあるから、変な関係にはなりにくいらしい」
「へー!」
未知の世界に、私は納得の声を上げる。
「クラブのホステスも、キャバ嬢も、まず名前を覚えてもらうのが第一でしょ? で、源氏名だと嘘っぽい。……二次元キャラの名前みたいだから、顔と名前が一致しないんだって。だから本名を晒しても構わないホステスの場合、名前と顔が一致しするほうが、覚えられやすいらしい」
「へぇ……」
今度は文香が目を丸くして頷いている。
「逆にキャバ嬢は、高級クラブに比べたら比較的手を出しやすいでしょ? 金を払わず付き合いたい男が沸きやすく、ストーカーがつきやすい。だから源氏名を使う。けど指名がほしい。スマホの電話帳を開いて一番先にくるのは?」
「『あ』」
私はシンプルな答えを言う。
「正解。だから〝あいか〟とか〝あいな〟とか、そういう名前が人気」
「なるほどねー!」
私は何度もうんうんと頷く。
「だからその女がもし銀座の女なら、本名でどこかに引っ掛かると思うし、源氏名を使っていたとしても、この辺に住んでるとかちょっと個人情報入れたら、誰かが呟いてそうなんだけど」
後半はちょっと怖い。
「……あ、あった」
「マジか」
文香が五十嵐さんのスマホを覗き込む。
「どれどれ」
私も反対側から覗き込むと、〝さやか〟というアカウント名で、アイコンが口元だけの自撮り写真だ。
五十嵐さんが画面をスクロールさせていくと、高級ワインや車、バッグに靴にアクセサリー、服に着物に高級レストラン、海外旅行……と、バブリーだ。
「これ、店とかこの界隈でしょ。で、つい最近も更新がある。現在進行形」
す、すげぇ……。
「一緒にいる客を写してないのは、配慮だろうね。相手は社会的に地位のある人だろうから、バレたら色々まずいだろうし」
色々思うところはあるものの、私はついつい五十嵐さんのスマホを見る。
「……っていうか、それは仕事用のアカウントだから仕方ないとして、旦那さんの陰がないね」
「それなー」
同意しながら、五十嵐さんは一つ一つの投稿日時を確認していく。凄い。
「っていうか、旦那が仕事で忙しくて別居してるとしても、これ……、十日ぐらい海外行ってるけど、その間旦那にはどう説明してた訳? 友達?」
「うーん……」
スマホの画面には、忘れもしないハワイの写真が載っている。
相手を写さないように配慮はしてるけど、友達同士で行っているっていうよりは、姿はないものの〝匂わせ〟がある。
この匂わせ投稿っていうのも、最近では自撮りテクの一つらしいけど、このアカウントのはガチに相手がいる写真の撮り方だ。
「……っていうか、旦那がKOJIってのも、嘘でね?」
五十嵐さんが脚を組んで言う。
「っぽいなー」
文香も腕を組み、ソファの背もたれにもたれかかって頷く。
「そうなの!?」
私は実際に彼女と顔を合わせて話したので、嘘をつかれたと思っていなかった。
「優美は人がいいからなぁ」
文香が唇を歪めて笑う。
「こういうマンションに住んでて、美人で芸能人の妻って言われたら信じそうだけど、KOJIレベルの有名人なら、家が知られたら一発アウトな訳でしょ。幾ら優美さんが信用できるって言っても、ペロッと内緒話で言っちゃうような女って選ばれないと思うな」
「あー、確かに……」
言われて納得すると同時に、「信用してくれたんだな」と思っていた自分がちょっと恥ずかしい。
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