【本編完結】【R-18】逃れられない淫らな三角関係～美形兄弟に溺愛されています～

番外編 2 タワマン事件簿

女子会

「はいはーい。開けるから勝手に上がって」

　どでかい家の不便なところは、来客にすぐ対応できない事だ。

　敷地はグルリと塀で囲まれていて、正面はリモコンで開閉する門がある。
　その横にオートロックの勝手口があって、インターフォンで対応すると入れる形になっている。

「としちゃん、お友達来たよ」

　俊希を抱っこして玄関まで迎えに行く。
　玄関のドアを開けて待っていると、もう一度チャイムを鳴らして文香がドアを開けた。

「ちは！　暑いね！」

「お疲れっす！」

　彼女の手荷物を受け取り、私は笑顔を向ける。

「どう？　この家への道のり、慣れてきた？」

「まぁ、基本車だから、どうって事もないけどね。っていうか、敷地広いから駐車しやすいわ」

　確かにマンションは他の住人の来客もあり、キャパの限度がある。
　それに比べてこっちの一軒家は広々とした所に適当に停められるので、雲泥の差だ。

　ガレージには正樹と慎也の車が複数台あり、「こんなに乗らないのにな～」とつい思ってしまう。

　彼らいわく「音が違う」「乗り心地が違う」らしいけど、私にとって車は車であり、それ以上でも以下でもない。
　家でも買えそうな値段の車を買うなら、もっと別の事に……と思ってしまう。

　けど、彼らのお金だから、私が口うるさく言うのは違う。

　ちなみに慎也はＥ＆Ｅフーズ時代があるから、正樹より資産が少なめなんじゃないかと、いつか文香が言っていた。

　確かに会社員としてのお給料は、正樹の副社長としてのそれとは比べものにならない。

　ただ、二人とも久賀城ホールディングスの御曹司で、小さい頃からお父さんからお金の英才教育を受けていた。

　簡単に理解できるお金や投資の本を読み、中学生頃には周囲からもらったとんでもない額のお年玉やお小遣いを元手に、投資を始めていたそうだ。
　長期投資のほうは結構膨らんでいるようで、そのうち投棄や仮想通貨もやるようになり、周りの友達とあれこれ教え合いながら、お金を育てていたようだ。

　本人いわく、「多分、優美と文香が考えてるよりは持ってる」らしい。

　気になると言えば気になるけど、お金の事を前のめりに聞くのは品がない。

　家計を回すための共通口座にしっかりお金があれば、あとは個々の問題でノータッチだ。

　とはいえ、ちょっとニュースがあると、文香と和人くんも交えて投資談義になるので、私にとって勉強しやすい環境だなという感謝はある。

　それはいいとして。

「あの二人、駐車料金払えとか言わない？」

「言わない言わない」

「ホント？　信じるよ。私だったら取るわー」

　わはは、と笑い、文香は大輝くんを抱っこして階段を上がる。

「この家に慣れた？」

　文香に聞かれ、私は「うーん」と首をひねる。
　階段を上りきって抱っこしていた俊希を下ろし、皆でリビングに向かう。

「前のマンションだってめちゃ広だったけど、この家は桁違いだね。正樹と話してる時はいいけど、俊希と二人きりだとちょっと怖くなっちゃう時もある」

　あまりに建物が広すぎて、家のどこに誰がいるとか気配が分からないので、「ひょっとしたら誰か忍び込んでいるかも？」とか不安になってしまう。

　セキュリティは有名どころと契約しているし、敷地内の離れには警備員さんがいる。
　ありがたい事に、対面で受け取る郵便や宅配があった時は警備員さんが対応してくれる事になっている。

　今までずっと留守にしていた時は管理会社の人と契約していて、家がおかしくなっていいかチェック等を定期的にしてくれていたらしい。

「家政婦さんは来てくれてるんでしょ？　シッターさんも」

「うん。でも広い所に自分と子供だけって心細いな。感覚で言うと校務員さんだけいる、無人の学校みたいな感じ」

「わ……。ホラーが始まるじゃん」

「ヤメテ！」

　ボソッと言った文香に、私は突っ込む。

　その頃になってチャイムが鳴り、五十嵐さんが「こんちは」と姿を現した。
　久しぶりに会おうかという事で、彼女も呼んでいた。

「こんにちは！　その後どう？」

「ぼちぼち」

　大阪の商人のような返事をして、彼女は「これお土産」と言って買ったばかりのスムージーをテーブルに置いた。

　私たちは文香が買って来てくれたケーキと、五十嵐さんのスムージーでお茶にする。
　子供たちは、キャンディチーズとバナナでおやつタイムにした。

「環境変わって、少しは落ち着いた？　突き飛ばし事件とか強盗とか、気が休まらなかったでしょ」

　文香に尋ねられ、私は頷く。