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番外編 2 タワマン事件簿
どーしてこうなったのか
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「なんだよそれ」
料理しながら彼が軽やかに笑う。
いつもの光景だけれど、私一人が心に闇を抱えている。
窓の外はいつの間にか、夜空と夜景に支配されている
黒い鏡のようなそれを見て、焦点をずらしてキッチンにいる慎也を見る。
……ねぇ、何であんな返事をしたの?
慎也の事だから、何かあるんだと信じたい。
でも、一言言ってくれてもいいじゃない。
心の中で慎也に話しかけながらぼんやりしていると、正樹が抱き寄せてきた。
「大丈夫?」
「……何が?」
チュッと頬にキスをされ、私は微笑む。
「何かちょっと機嫌悪い?」
「……ううん。大丈夫」
横を見ると、俊希はスヤスヤ眠っている。
父親二人、帰ってきてすぐ俊希のところに来たけれど、眠っていたからエア甘やかしをして我慢していた。
あーあ。夜になったらストレス発散に、マンション内のジム行こうかな。プールでもいいし。
溜め息をついたあと、何となく慎也と同じ空間にいるのが息苦しくて、私は俊希を抱っこして自分の部屋に向かった。
**
「ちょっとジム行ってくるね」
「おー、付き合うか?」
「いい」
慎也の声を背中に、私はジムセットをバッグに入れて家を出る。
エレベーターに乗って共有スペースまで行くと、それぞれ夕食後のまったりタイムだからか人はいなかった。
このマンションには展望室や先日のパーティールームがある他、私が喜ぶ施設としてはジムとプール、温泉がある。
まあ、慎也と正樹いわくこういう施設って、高い管理費を出してまでそのマンションに住む価値があるかどうからしい。
私たちみたいに若年層なら、トレーナーを招いてジムで鍛えられるのは天国だ。
けどご年配の方は管理費を払っても使わないなら無用の長物なので、似たような高層マンションであっても、それぞれの特色で選んで買うのだそうだ。
トレーニングウェアは着てきたので、私は夜景を見下ろしながら準備体操をして、ランニングマシンで走り始める。
どーしてこうなったのか。
もともとマンションの住人と交流はなかったけど、さやかさんに誘われてパーティーに行ってみようかって気持ちになった。
けど、さやかさんは関係ない訳で。
そもそも、さやかさんは美香さんに注意してと言っていた。
でも噂を鵜呑みにするのもいけないから、直接お会いして判断しようかってなったのはこっちだ。
考えながら、私はマシンのプログラムに沿って本気走りになっていく。
あー、駄目だ。気を抜くと泣いちゃう。
頭、真っ白にしてとにかく体を動かそう。
決めたあとは、マシンの傾斜を上げて三十分走った。
そのあとは筋トレマシーンであらゆる筋肉に負荷を与える。
ジムに来てから一時間経とうとした時、「あれ?」と人の声がした。
ん?
そちらに視線を向けると、パーティーで少し話した三笠さんが立っていた。
彼もトレーニングウェアを着ていて、ジムを利用するために来たんだろう。
「こんばんは」
「あ、こんばんは。お疲れ様です」
私は背中を鍛えるラットプルマシンに座っていたけれど、持ち手をゆっくり上げ、ふー……と息をつく。
マシンの重りの位置を戻し、座った所や持ち手の汗をタオルで拭いた。
「優美さん、結構エグい負荷かけてますね」
「あはは、慣れです」
「旦那さんは一緒じゃないんですか?」
「あー……。いや、なんでも行動が一緒っていう訳じゃないんで。子供じゃないですし」
正直、今は慎也の事を思いだしたくないけれど、仕方がない。
私はタオルで汗を拭きつつ笑う。
「もうトレーニングは結構やってます? 一緒にやりませんか?」
「いえ、一通りやったのでこれからプールに行って流す予定です」
料理しながら彼が軽やかに笑う。
いつもの光景だけれど、私一人が心に闇を抱えている。
窓の外はいつの間にか、夜空と夜景に支配されている
黒い鏡のようなそれを見て、焦点をずらしてキッチンにいる慎也を見る。
……ねぇ、何であんな返事をしたの?
慎也の事だから、何かあるんだと信じたい。
でも、一言言ってくれてもいいじゃない。
心の中で慎也に話しかけながらぼんやりしていると、正樹が抱き寄せてきた。
「大丈夫?」
「……何が?」
チュッと頬にキスをされ、私は微笑む。
「何かちょっと機嫌悪い?」
「……ううん。大丈夫」
横を見ると、俊希はスヤスヤ眠っている。
父親二人、帰ってきてすぐ俊希のところに来たけれど、眠っていたからエア甘やかしをして我慢していた。
あーあ。夜になったらストレス発散に、マンション内のジム行こうかな。プールでもいいし。
溜め息をついたあと、何となく慎也と同じ空間にいるのが息苦しくて、私は俊希を抱っこして自分の部屋に向かった。
**
「ちょっとジム行ってくるね」
「おー、付き合うか?」
「いい」
慎也の声を背中に、私はジムセットをバッグに入れて家を出る。
エレベーターに乗って共有スペースまで行くと、それぞれ夕食後のまったりタイムだからか人はいなかった。
このマンションには展望室や先日のパーティールームがある他、私が喜ぶ施設としてはジムとプール、温泉がある。
まあ、慎也と正樹いわくこういう施設って、高い管理費を出してまでそのマンションに住む価値があるかどうからしい。
私たちみたいに若年層なら、トレーナーを招いてジムで鍛えられるのは天国だ。
けどご年配の方は管理費を払っても使わないなら無用の長物なので、似たような高層マンションであっても、それぞれの特色で選んで買うのだそうだ。
トレーニングウェアは着てきたので、私は夜景を見下ろしながら準備体操をして、ランニングマシンで走り始める。
どーしてこうなったのか。
もともとマンションの住人と交流はなかったけど、さやかさんに誘われてパーティーに行ってみようかって気持ちになった。
けど、さやかさんは関係ない訳で。
そもそも、さやかさんは美香さんに注意してと言っていた。
でも噂を鵜呑みにするのもいけないから、直接お会いして判断しようかってなったのはこっちだ。
考えながら、私はマシンのプログラムに沿って本気走りになっていく。
あー、駄目だ。気を抜くと泣いちゃう。
頭、真っ白にしてとにかく体を動かそう。
決めたあとは、マシンの傾斜を上げて三十分走った。
そのあとは筋トレマシーンであらゆる筋肉に負荷を与える。
ジムに来てから一時間経とうとした時、「あれ?」と人の声がした。
ん?
そちらに視線を向けると、パーティーで少し話した三笠さんが立っていた。
彼もトレーニングウェアを着ていて、ジムを利用するために来たんだろう。
「こんばんは」
「あ、こんばんは。お疲れ様です」
私は背中を鍛えるラットプルマシンに座っていたけれど、持ち手をゆっくり上げ、ふー……と息をつく。
マシンの重りの位置を戻し、座った所や持ち手の汗をタオルで拭いた。
「優美さん、結構エグい負荷かけてますね」
「あはは、慣れです」
「旦那さんは一緒じゃないんですか?」
「あー……。いや、なんでも行動が一緒っていう訳じゃないんで。子供じゃないですし」
正直、今は慎也の事を思いだしたくないけれど、仕方がない。
私はタオルで汗を拭きつつ笑う。
「もうトレーニングは結構やってます? 一緒にやりませんか?」
「いえ、一通りやったのでこれからプールに行って流す予定です」
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