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番外編 2 タワマン事件簿
パーティー開始
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「……会費分は食うか」
文香がボソッと囁いてくる。
「だな」
私もコクリと頷いた。
やがて十二時になり、人が集まった頃に美香さんが挨拶をした。
「皆さん、今日はお忙しいなかお運びいただきありがとうございます! 恒例となった交流会ですが、嬉しい事に今日はお初の顔ぶれもあります。どうぞお料理と一緒に楽しく過ごし、交流を深めてください」
短い挨拶のあと、全員が上品に拍手をし、飲める人はシャンパンで乾杯となる。
俊希は卒乳したけれど、大輝くんはまだミルクだ。
私一人だけ飲む訳にもいかないので、「初めてのパーティーで酔っ払うのは避けたいから」と言って一緒にノンアルコールのシードルを飲む事にした。
シードルを飲みながらじわりとテーブルに近づき、どれから口を付けるか物色する。
ちなみにそれぞれの息子は、料理を取りに行く間夫婦のどちらかが見ているというルールだ。
取り皿も紙の皿ではなく、普通の陶器の皿だ。
業者さんが持ってきた物らしく、パーティーが終わったら食器もろとも回収らしい。
あとから自分たちで洗わなくて済むのは楽だ。
(とりあえず、サラダから……と)
以前ほど食に対して神経質になっていないけれど、一応野菜から食べるとかは気を遣ってはいる。
トングでシーザーサラダをとっていると、女性が近づいてきて文香に声を掛けた。
「あの……、Famさんですか?」
文香は顔出しインフルエンサーだ。
「どうも~」
文香はかるーく挨拶をしながら、お皿にカナッペやテリーヌを適量のせている。
「あの、ファンなんです! いつも投稿にいいねさせて頂いているんですが……」
そのあとは他の奥様も混じって、ファンの集いみたいになった。
有名人は大変だなぁ、と思いつつ、私は邪魔にならないように横に立ってサラダを食べ始める。
チラッと慎也と正樹を見ると、早くも別の奥様たちに囲まれて質問攻めになっていた。
おおー……。
和人くんは少し離れた場所で大輝くんを見ていたので、彼の所に避難しようとした。
と、思ったら。
「久賀城さんですよね?」
「はい?」
男性に声を掛けられ、私は振り向く。
目の前には、三十代後半の男性が二人立っている。
「初めまして。僕は三十三階に住んでいます、三笠祐二と言います」
爽やかに笑った彼は、見るからにエリートっぽい雰囲気のイケメンだ。
全身から自信が溢れていて、自分の魅力を分かっている感じだ。
でもどことなく、遊び人っぽい雰囲気もあった。
ただの偏見だけど、金のネックレスを覗かせてる男性は、あまりタイプじゃない。
「ご丁寧にどうも。久賀城優美です」
挨拶をすると、もう一人の男性が微笑みかけてくる。
「俺は三十一階の成宮圭です。こちらが妻の清花(せいか)です」
「ども!」
三十代後半の成宮さんは、むちっとした体型の陽キャという印象だ。
彼ら二人はしばし世間話をしていたけれど、成宮さんが照れながら本題を切りだした。
「久賀城さんって夫婦揃ってスタイルがいいけど、何か特別なトレーニングでもしてる? 俺、見ての通り最近どんどん腹が出てきちゃって……。お勧めダイエットがあったら教えてほしいな」
あー、なるほど!
一気に警戒を解いた私は、うんうんと頷いて失礼のないように彼を見る。
「一番はウォーキングがやりやすいと思いますけどね」
「そうなんですけど。仕事から帰ってくると、疲れてなかなか外に出られなくて。マンション内にあるジムも、人に会うと思うと恥ずかしくて……」
分かる。
私もかつては怠惰の権化だったので、気持ちは分かる。
「なるほど。では、エレベーターを使うところ、数フロア分を階段にするとか。家の中でもヨガマットを敷いて、プランクとかマウンテンクライマーとか、その場でできるトレーニングはありますよ。某ジムみたいに、ビフォーアフターでテッテレー♪ って劇的には変わりませんが、食事をローカロリーの和食を中心にして、ちょっとした時に腹筋に力を入れるとか、その場で足踏み、音楽に合わせて手を振るとか、そういうのでいいのなら、数年掛けて緩やかに絞れると思います」
「やっぱり見た目スッキリしたって思われるようになるには、負荷を掛けるか時間を掛けるかなんですね」
「そうですね。楽して痩せようとしても、そうはいきませんし」
カラカラと笑うと、成宮さんは恥ずかしそうに笑い返す。
文香がボソッと囁いてくる。
「だな」
私もコクリと頷いた。
やがて十二時になり、人が集まった頃に美香さんが挨拶をした。
「皆さん、今日はお忙しいなかお運びいただきありがとうございます! 恒例となった交流会ですが、嬉しい事に今日はお初の顔ぶれもあります。どうぞお料理と一緒に楽しく過ごし、交流を深めてください」
短い挨拶のあと、全員が上品に拍手をし、飲める人はシャンパンで乾杯となる。
俊希は卒乳したけれど、大輝くんはまだミルクだ。
私一人だけ飲む訳にもいかないので、「初めてのパーティーで酔っ払うのは避けたいから」と言って一緒にノンアルコールのシードルを飲む事にした。
シードルを飲みながらじわりとテーブルに近づき、どれから口を付けるか物色する。
ちなみにそれぞれの息子は、料理を取りに行く間夫婦のどちらかが見ているというルールだ。
取り皿も紙の皿ではなく、普通の陶器の皿だ。
業者さんが持ってきた物らしく、パーティーが終わったら食器もろとも回収らしい。
あとから自分たちで洗わなくて済むのは楽だ。
(とりあえず、サラダから……と)
以前ほど食に対して神経質になっていないけれど、一応野菜から食べるとかは気を遣ってはいる。
トングでシーザーサラダをとっていると、女性が近づいてきて文香に声を掛けた。
「あの……、Famさんですか?」
文香は顔出しインフルエンサーだ。
「どうも~」
文香はかるーく挨拶をしながら、お皿にカナッペやテリーヌを適量のせている。
「あの、ファンなんです! いつも投稿にいいねさせて頂いているんですが……」
そのあとは他の奥様も混じって、ファンの集いみたいになった。
有名人は大変だなぁ、と思いつつ、私は邪魔にならないように横に立ってサラダを食べ始める。
チラッと慎也と正樹を見ると、早くも別の奥様たちに囲まれて質問攻めになっていた。
おおー……。
和人くんは少し離れた場所で大輝くんを見ていたので、彼の所に避難しようとした。
と、思ったら。
「久賀城さんですよね?」
「はい?」
男性に声を掛けられ、私は振り向く。
目の前には、三十代後半の男性が二人立っている。
「初めまして。僕は三十三階に住んでいます、三笠祐二と言います」
爽やかに笑った彼は、見るからにエリートっぽい雰囲気のイケメンだ。
全身から自信が溢れていて、自分の魅力を分かっている感じだ。
でもどことなく、遊び人っぽい雰囲気もあった。
ただの偏見だけど、金のネックレスを覗かせてる男性は、あまりタイプじゃない。
「ご丁寧にどうも。久賀城優美です」
挨拶をすると、もう一人の男性が微笑みかけてくる。
「俺は三十一階の成宮圭です。こちらが妻の清花(せいか)です」
「ども!」
三十代後半の成宮さんは、むちっとした体型の陽キャという印象だ。
彼ら二人はしばし世間話をしていたけれど、成宮さんが照れながら本題を切りだした。
「久賀城さんって夫婦揃ってスタイルがいいけど、何か特別なトレーニングでもしてる? 俺、見ての通り最近どんどん腹が出てきちゃって……。お勧めダイエットがあったら教えてほしいな」
あー、なるほど!
一気に警戒を解いた私は、うんうんと頷いて失礼のないように彼を見る。
「一番はウォーキングがやりやすいと思いますけどね」
「そうなんですけど。仕事から帰ってくると、疲れてなかなか外に出られなくて。マンション内にあるジムも、人に会うと思うと恥ずかしくて……」
分かる。
私もかつては怠惰の権化だったので、気持ちは分かる。
「なるほど。では、エレベーターを使うところ、数フロア分を階段にするとか。家の中でもヨガマットを敷いて、プランクとかマウンテンクライマーとか、その場でできるトレーニングはありますよ。某ジムみたいに、ビフォーアフターでテッテレー♪ って劇的には変わりませんが、食事をローカロリーの和食を中心にして、ちょっとした時に腹筋に力を入れるとか、その場で足踏み、音楽に合わせて手を振るとか、そういうのでいいのなら、数年掛けて緩やかに絞れると思います」
「やっぱり見た目スッキリしたって思われるようになるには、負荷を掛けるか時間を掛けるかなんですね」
「そうですね。楽して痩せようとしても、そうはいきませんし」
カラカラと笑うと、成宮さんは恥ずかしそうに笑い返す。
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