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妊娠・出産 編

その後の彼ら

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「俺にも育児参加させて?」

「父親だしお願いしたいけど……」

「はいはい」

 私たちの会話に、正樹が割り込んでくる。

「僕は慎也の言い分もアリだと思ってる。何のために育休制度があんの。それに、うちの会社は大丈夫だって言ってるよね? 前から父さんと相談して、社内託児所とか子供のいる社員が働きやすいようにしてる。役員だけがブラックなんて言わせたくないよ?」

 もっともな事を言われ、私は口をつぐむ。

「……大丈夫?」

 不安げな私に、二人はビシッとサムズアップする。

「「大丈夫!」」

 頼もしく頷いてくれた彼らに、私は思わず破顔した。

「宜しくお願いします。お父さんたち」



**



 それから月日が経ち、私は翌年の春に正樹の子供を産んだ。

 男の子だ。

 お産はいつでもつらいけれど、初産で何をすべきか、どんな事が起こるかを体験した私は、今度は覚悟を持って妊娠・出産できた。

 文香のところでも大輝はすくすく育ち、俊希のいいお友達になってくれている。





 文香、未望ちゃんとは相変わらず女子会をし、シャーロットさんが来てくれる事もある。

 彼女はドイツ人で同じオタク趣味を持つ男性と意気投合し、ゴールインした。

 残念ながら身重だったのであちらでの挙式には駆けつけられなかったけれど、彼女らしく新婚旅行は日本を選んだ。
 オタクの聖地巡礼から、日本文化をじっくり味わう旅行をし、一緒に私たちとパーティーをしてお互いの結婚と出産を祝い合った。

 エディさんも無事にいい人を見つけられたらしく、良い交際ができているらしい。

 シャーロットさんいわく再婚に多少ビクついているものの、ほとんど覚悟は決まっているようだ。

 今度のお相手はまじめで品のいいお嬢さんらしく、彼女は彼の初婚の時に大失恋したそうだ。
 やっぱり、真剣に想ってくれている人は、そう簡単に諦めきれなかったそうで。

 女性不信期のエディさんにも根気強く話しかけ、彼も打ち解けていったらしい。

 クリスさんも奥さんとラブラブで、お互い子連れで飛行機旅行が大丈夫になったら、久賀城家、アボット家で会いたいねという話をしている。





 五十嵐さんは影で正樹がこっそり紹介した子会社で、うまくやっているらしい。

 時々相談のメッセージはあったものの、長期的な目線で見ていると、徐々に強くたくましく成長していた。

 一時はとてもしおらしくなっていたけれど、今は私のつよつよメンタルが乗り移ったようで、自信に溢れた雰囲気を発している。

 時々〝確認〟みたいに「こんな事があって、こんな対応をしたけど大丈夫だったかな」と相談がある。

 でも今の彼女はしっかりとした軸があるので、あまり心配していない。





 地元にも時々帰り、実家に俊希たち兄弟の顔を見せ、友達とも会っている。

 同級生の話をチラッとは聞いたけれど、以前の同窓会のあと、担任の先生にこってり絞られたそうだ。
 高校時代の担任の先生は、ダイエットを決意した私に『今より早い時なんてない』と教えてくれた人で、尊敬している人物だ。

『努力した人を笑うな。その笑いは成功者を嫉妬するゆえの醜い笑いだ。他人を笑って自分の機嫌を慰めているようでは、まだまだ大人とは言えない』

 先生は彼らにそう言ったらしい。

 今はもう、私の生活は子供と夫たち中心に回っているし、あの事はほぼどうでも良くなっている。
「自分の悪いところを自覚して治せたらいいね」と遠くから思っているのみだ。

 すべての人に説教して回って、責任を持つ必要はない。

 今の私の両手にあるのは、家族だけ。

 以前はがむしゃらに、「私のやり方はこう!」とドストレートに突き進んでいた。

 あれも悪くなったけれど、今の私の、守る者がいるゆえの強さも気に入っている。

 むしろ一番の問題を解決しない限り、私たち家族はまだ慎重に歩んでいかなければいけなかった。



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