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妊娠・出産 編
そろそろ封印解除できる?
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皆でワイワイ楽しんで、ご馳走があらかたなくなった頃、本日のメインイベントとなる。
「この日のために取り寄せた風呂敷なのよ」
玲奈さんがニコニコして、綺麗な翡翠色の七宝柄の風呂敷を取りだした。
そして慣れた手つきで一升餅を包み、おっちゃんこしてる俊希の胸の前で結んだ。
「よし! 俊希、立ってみようか! たっち!」
「俊希、頑張れ!」
「君ならできる!」
周りを総勢十四人の大人に囲まれ、俊希はキョトンとしている。
……可愛い……。
しばし私たちは記念撮影をしたり雑談しながら〝その時〟を待っていた。
やがて俊希はハイハイしたのち、開脚した状態で両手をつき、うんしょ、うんしょと立とうとする。
「頑張れ!」
「俊希、もうちょっと!」
皆声を掛け、励ましてくれる。
当の本人は分かっているのかいないのか、マイペースに重たい餅と格闘し、お尻を上げては尻餅をついている。
うう、頑張ってる……。じーんときちゃう……。
正確にはあと数日でだけど、もう一歳になるんだなぁ。
日々慌ただしくて、この一年あっという間だった。
前は家事をちゃんとやらないととか、トレーニングしないととか焦っていたけど、今は俊希を一番に考えて生きている。
健康に幸せに生きてくれるなら、私はどうなってもいいや。
そう思ってじんわり涙を滲ませている先、とうとう俊希が一升餅を背負ったまま立ちあがった。
「おーっ!」
慎也が興奮した声を出し、スマホの動画をアップにしている。
その隣で正樹は連写し、皆も囲み撮影みたいになっていた。
かくいう私も、めっちゃ写真を撮った。
「おめでとう~!」
私はめちゃくちゃ高速で拍手をし、写真を撮った皆も拍手してくれる。
そんな感じで、ほんのちょっぴり早い俊希の誕生日祝いは終わった。
皆でまた協力して片付けをしてくれ、立つ鳥跡を濁さずで帰っていく。
俊希も大勢に囲まれて疲れたみたいで、さっきおっぱいを飲んでから健やかに眠っていた。
私たち三人はテレビもつけずに、麦茶を飲みながらソファに座ってぼんやりしている。
「一年って早いね」
「そうだな。仕事に子供に家の事に……ってやってたら、あっという間だった」
「僕はだいぶ予習できたから、いつでも来い! って感じかな」
「あはは、確かに実体験つきのいい予習だったよね。手伝ってくれてありがとう」
正樹の肩に頭を寄せると、彼が肩を抱いてくる。
しばしそのままでいたけれど、正樹が「ねぇ」と耳元で囁いてきた。
「ん?」
顔を上げると、どこか気まずそうな、けれど真剣な顔をした彼がいる。
「空気読まなかったらごめん」
「なーに言ってんの。正樹が空気読まないの、いつもの事じゃん」
冗談めかして彼の太腿をポンと叩きつつ、私はある予感を抱く。
しばし彼は言葉を迷わせたあと、ためらいがちに切りだす。
「ずっと夜、ご無沙汰だったけど、そろそろ封印解除できる? 忙しくて、俊希が大事でそっち中心なのは分かってるんだ。優美ちゃんだって疲れてるだろうし、日々のあれこれでそういう気にならないのも分かる。……ただ、可能性というか、こっちは求めてるよっていう意味で伝えたかった」
正樹が言うとおり、ずっとエッチなしの生活を送ってきた。
相変わらず三人とも仲が良くて、当たり前のようにチュッチュとキスしていたし、ボディタッチも多かった。
出産前におかずを使ってのセルフ行為を許可すると言ったけど、結局彼らが性欲をどう処理しているのか分からないままだった。
それに気を回して悩む余裕がないぐらい、私は俊希で毎日が一杯だった。
でも、二人とも我慢してくれていたのは確かなんだ。
私も出産直後はその気になれなかったのは確かでも、最近ではムラムラする事もある。
けど妊娠からずっとできなかったのもあり、二人にどう伝えたらいいのか分からなくてタイミングを逃したままだった。
しばらくエッチから遠ざかっていると、どうやって誘っていたのか分からなくなって、戸惑っていた。
私は照れながら微笑み、慎也と正樹の手を握り、指を絡める。
「……ずっと待っていてくれてありがとう」
まず謝ろうと思ったけれど、先に口から出たのは感謝だった。
「妊娠してから不安定な時期もあったし、我が儘も言ったと思う。八つ当たりしちゃった時もあったと思う。でも二人とも、本当に理想の旦那様をしてくれた。私はとても恵まれた母親をやれていると思う。それは、二人にふかーく愛されているからだと理解してる」
感謝を口にすると、二人とも無言でキュッと手を握り返してくれる。
「この日のために取り寄せた風呂敷なのよ」
玲奈さんがニコニコして、綺麗な翡翠色の七宝柄の風呂敷を取りだした。
そして慣れた手つきで一升餅を包み、おっちゃんこしてる俊希の胸の前で結んだ。
「よし! 俊希、立ってみようか! たっち!」
「俊希、頑張れ!」
「君ならできる!」
周りを総勢十四人の大人に囲まれ、俊希はキョトンとしている。
……可愛い……。
しばし私たちは記念撮影をしたり雑談しながら〝その時〟を待っていた。
やがて俊希はハイハイしたのち、開脚した状態で両手をつき、うんしょ、うんしょと立とうとする。
「頑張れ!」
「俊希、もうちょっと!」
皆声を掛け、励ましてくれる。
当の本人は分かっているのかいないのか、マイペースに重たい餅と格闘し、お尻を上げては尻餅をついている。
うう、頑張ってる……。じーんときちゃう……。
正確にはあと数日でだけど、もう一歳になるんだなぁ。
日々慌ただしくて、この一年あっという間だった。
前は家事をちゃんとやらないととか、トレーニングしないととか焦っていたけど、今は俊希を一番に考えて生きている。
健康に幸せに生きてくれるなら、私はどうなってもいいや。
そう思ってじんわり涙を滲ませている先、とうとう俊希が一升餅を背負ったまま立ちあがった。
「おーっ!」
慎也が興奮した声を出し、スマホの動画をアップにしている。
その隣で正樹は連写し、皆も囲み撮影みたいになっていた。
かくいう私も、めっちゃ写真を撮った。
「おめでとう~!」
私はめちゃくちゃ高速で拍手をし、写真を撮った皆も拍手してくれる。
そんな感じで、ほんのちょっぴり早い俊希の誕生日祝いは終わった。
皆でまた協力して片付けをしてくれ、立つ鳥跡を濁さずで帰っていく。
俊希も大勢に囲まれて疲れたみたいで、さっきおっぱいを飲んでから健やかに眠っていた。
私たち三人はテレビもつけずに、麦茶を飲みながらソファに座ってぼんやりしている。
「一年って早いね」
「そうだな。仕事に子供に家の事に……ってやってたら、あっという間だった」
「僕はだいぶ予習できたから、いつでも来い! って感じかな」
「あはは、確かに実体験つきのいい予習だったよね。手伝ってくれてありがとう」
正樹の肩に頭を寄せると、彼が肩を抱いてくる。
しばしそのままでいたけれど、正樹が「ねぇ」と耳元で囁いてきた。
「ん?」
顔を上げると、どこか気まずそうな、けれど真剣な顔をした彼がいる。
「空気読まなかったらごめん」
「なーに言ってんの。正樹が空気読まないの、いつもの事じゃん」
冗談めかして彼の太腿をポンと叩きつつ、私はある予感を抱く。
しばし彼は言葉を迷わせたあと、ためらいがちに切りだす。
「ずっと夜、ご無沙汰だったけど、そろそろ封印解除できる? 忙しくて、俊希が大事でそっち中心なのは分かってるんだ。優美ちゃんだって疲れてるだろうし、日々のあれこれでそういう気にならないのも分かる。……ただ、可能性というか、こっちは求めてるよっていう意味で伝えたかった」
正樹が言うとおり、ずっとエッチなしの生活を送ってきた。
相変わらず三人とも仲が良くて、当たり前のようにチュッチュとキスしていたし、ボディタッチも多かった。
出産前におかずを使ってのセルフ行為を許可すると言ったけど、結局彼らが性欲をどう処理しているのか分からないままだった。
それに気を回して悩む余裕がないぐらい、私は俊希で毎日が一杯だった。
でも、二人とも我慢してくれていたのは確かなんだ。
私も出産直後はその気になれなかったのは確かでも、最近ではムラムラする事もある。
けど妊娠からずっとできなかったのもあり、二人にどう伝えたらいいのか分からなくてタイミングを逃したままだった。
しばらくエッチから遠ざかっていると、どうやって誘っていたのか分からなくなって、戸惑っていた。
私は照れながら微笑み、慎也と正樹の手を握り、指を絡める。
「……ずっと待っていてくれてありがとう」
まず謝ろうと思ったけれど、先に口から出たのは感謝だった。
「妊娠してから不安定な時期もあったし、我が儘も言ったと思う。八つ当たりしちゃった時もあったと思う。でも二人とも、本当に理想の旦那様をしてくれた。私はとても恵まれた母親をやれていると思う。それは、二人にふかーく愛されているからだと理解してる」
感謝を口にすると、二人とも無言でキュッと手を握り返してくれる。
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