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妊娠・出産 編

子供ができた

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 また体重計に乗って「びゃっ!」と変な声を出したけど、今は優先順位を変えないと。

 医者から「痩せなさい」と言われるならともかく、まだ適正体重内だ。
 変な見栄や自分のトラウマからくる「痩せないと」の気持ちで、赤ちゃんに負担を掛ける訳にいかない。

 そんな事を考えながらボーッとしてると、上から物音が聞こえて、上半身裸に下はスウェット姿の慎也が下りてきた。

「どーした? 休日なのに早起きじゃん」

 遅れて、二階から正樹が顔を覗かせ、あくびをしながら下りてくる。

 こいつも慎也と同じ格好をしてる。
 代謝がいいからか知らないけど、こいつらは寝る時に裸族に近い格好をしている。

「眠れなかった?」

 慎也は私の隣に腰掛け、頭を撫でてチュッと頬にキスをする。

 ……眠いなら無理しなくていいのに。
 ……いや、起こしちゃったのは私のせいか。

 正樹も反対側に座り、いつもの狛犬ポジションになる。

 私は前を向いたまま少し考え、息をつく。

 そして両側にいる二人の手を握って告げた。

「子供ができた」

「「えっ!?」」

「……かもしれない」

「あれはつわりか」という症状があるので、妊娠検査薬が絶対ではないとしても、九割以上は妊娠している……と思う。

 けど、定かではないので「かもしれない」をつけた。

 二人はしばらく沈黙している。

 あれ? と思って半ばビビりながら慎也を見ると、目をまん丸にして固まっていた。
 反対側を見ると、正樹も目を見開き、めちゃめちゃ目を潤ませていた。

「……嬉しくない?」

 まあ、私も最初に気付いた時はしばらくフリーズしてしまったから、二人がすぐに受け入れられないのも分かる。

「嬉しいよ! ……でもごめん。色んな感情が湧き起こって、これからするべき事とかいろいろ考えて、すぐ反応できなかった。ごめん」

 慎也が弾かれたように言い、遠慮がちに私を抱き締めてきた。

「……ありがとう」

 そう言われて、私はにっこり笑った。

 うん。こうやって言ってもらえるの嬉しい。

 ――と、反対側からグスッと洟を啜る音が聞こえてきた。

 えっ? となって正樹を見ると、ボロ泣きしていた。

「~~~~、正樹。もぉ……」

 私は慎也に微笑んでから正樹を抱き締め、トントンと背中を叩く。

「……ごめん。……でも嬉しくて」

 そんな彼が愛しくて、私は笑いながら慎也を振り返る。
 すると彼も笑顔を見せ、一度立って正樹の隣に座り、私よりも強めの力で兄の背中を叩いた。

「正樹、ありがと」

「うん、おめでと、慎也」

「いや、まだ生まれてないし、おめでたは優美だから」

 慎也は笑いながら正樹の背中をトントンと叩く。

「……はぁ」

 正樹は手で涙を拭い、私に笑いかける。

「ホント、おめでとう」

「ありがとう」

 笑い返すと、正樹は噛み締めるようにもう一度微笑み、息をつく。

「……ホントは僕さ、慎也との間に先に子供が生まれて、祝福できるかな? って少し不安に思ってた」

 その気持ちは理解できるので、私も慎也も頷く。

「……でも、嬉しいねぇ。だいっすきな奥さんとさ、だいっすきな弟との間に子供ができたんだよ? 百パーセント『おめでとう!』って手放しじゃない、ちょっと複雑な気持ちではあるけど、嫌々じゃなくて、素直に『おめでとう』と言える自分がいるんだ」

「ん……」

 私は正樹に抱きつき、慎也も彼の肩を組む。

「僕さ、一応結婚経験者ではあるけど、子供はできなかったじゃん? だから、妻に子供ができるっていう経験は初めてなんだよね」

「うん、そうだね」

 正樹の腕を組み、私は頷く。

「うまく言えないけど嬉しいよ。これが僕の子供だったらもっと嬉しいか分からない。けど、慎也と優美ちゃんの子供だってだけでも、すっごい嬉しいんだ。これが、身内に幸せが訪れた喜びなのかな」

 私たちは彼のこれまでをよく分かっているからこそ、何度も頷き理解を示す。

「もし本当に妊娠しているとして、この子が生まれたら久賀城さんになるから、正樹も父親なんだからね?」

「そうだね」

 彼は嬉しそうに笑い、私のお腹をそっと撫でてくる。
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