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妊娠・出産 編
赤ちゃん、できたのかも
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「そっか。なら良かった」
安心して私は微笑む。
「私はまだまだ良くなりたい。もっと綺麗になりたいし、お金も貯めたい。人付き合いも上手になりたい。そういうの、自分より長けている人に聞きたいし、本当ならお金を払う価値がある話を、無料で教えてもらえるのはありがたいって思えるようになった」
「そうだね」
私は自分の生き方や考えを人に話しているだけで、それがお金を払う価値のあるものだと思っていない。
けれど、世の中誰が何に価値を見いだすかは分からない。
「あなたの言葉に価値があります」と言ってもらえたなら、私はそれを卑下せず「ありがとう」と受け取って誇りに思っておくべきなんだろう。
「折原さんが色んな事を言ったとして、その言葉が必要か不要かは私が決める。折原さんだって、自分の言う事を聞けなんて思ってないでしょ?」
「確かに」
一本取られたというように、私は笑う。
「ありがとう。私こそ逆に、五十嵐さんに色々気付かされた」
「そう? やった」
彼女は嬉しそうに笑う。
初めて会った時、彼女は見るからに守ってあげたくなるような、ゆるふわ系だった。
服装も可愛らしいアイテムを好んでいて、その中でチラリと色気を見せていた。
それも今は変わっていて、髪型もメイクも服装もナチュラルな女性に変わっていた。
きちんとメイクはしているし、服装にも気を遣っている。
けれどちょっとの崩れも許さない〝守られ女子!〟〝男ウケ!〟みたいな雰囲気は消えた。
街角で男性に声を掛けられても、自分を飾らず媚びず、「今忙しいです」と受け流せる、しなやかな強さを感じる。
「また次に会えるの、楽しみにしてる」
「うん、私も」
私たちは席から立ってそれぞれ会計し、カフェの前で別れた。
**
それから、私は十一月に入って文香とイタリアに行くなど、かなり優雅に過ごさせてもらった。
文香も私との時間をたっぷり取れて、満足してくれたようだ。
こんなに好いてもらっていて、ありがたい限りだ。
……勿論、旅行から帰ったあとは二人に「イタリア男にナンパされてない?」ってめちゃくちゃ確認されて、思う存分抱かれて立てなくなったけど……。
**
十一月末頃、私はトイレで呆然としていた。
その手には、妊娠検査薬。
えーと……。
しばしフリーズしながら、納得もしていた。
最近の微熱感。すっごい眠たくて、生理前かな? って思っていたけど、なかなかこない。
加えて部屋のディフューザーの香りをきつく感じていたのと、せっかくご飯を作っていても「うっ」となってしまう。
もしや……と思ってネット通販で妊娠検査薬を買って、恐る恐る試してみたんだけど……。
朝一番がいいっていうから、そわそわしながら起きて、これだ。
陽性の所にくっきりとピンクのラインがでている。
ぼんやりとしながら、「可燃ゴミだっけ」と思い出し、ノロノロと処理した。
手を洗ってパジャマ姿のまま、リビングに向かってソファに座る。
時刻は五時四十分すぎで、街はこれから夜明けを迎えようとしていた。
(……赤ちゃん、できたのかも)
いまだ実感が湧かない。
けど、どこかソワソワしている。
(病院行ってみないと分からないし)
けどきちんと使えば、妊娠検査薬の精度はかなり高いと書いてあった。
兆候があると分かった時に調べたら、順調にいけば来年の七月半ばには生まれるのでは……と分かった。
(七月か。私と同じ誕生日月だ)
男の子か女の子か分からないけれど、おそろいの服を着て誕生日パーティー、とか考えてニヤァ……としてしまった。
「はぁ……」
思わず溜め息をつき、これからの事を考える。
とりあえず、お酒とカフェインはやめよう。
つわりに注意しつつ栄養管理して、適度な運動も継続。無理なダイエットはしない。
本当はイタリアでまた増量してしまった。
もうそりゃあね、美食の国だからパスタやらリゾットやらピザやら誘惑が……。
安心して私は微笑む。
「私はまだまだ良くなりたい。もっと綺麗になりたいし、お金も貯めたい。人付き合いも上手になりたい。そういうの、自分より長けている人に聞きたいし、本当ならお金を払う価値がある話を、無料で教えてもらえるのはありがたいって思えるようになった」
「そうだね」
私は自分の生き方や考えを人に話しているだけで、それがお金を払う価値のあるものだと思っていない。
けれど、世の中誰が何に価値を見いだすかは分からない。
「あなたの言葉に価値があります」と言ってもらえたなら、私はそれを卑下せず「ありがとう」と受け取って誇りに思っておくべきなんだろう。
「折原さんが色んな事を言ったとして、その言葉が必要か不要かは私が決める。折原さんだって、自分の言う事を聞けなんて思ってないでしょ?」
「確かに」
一本取られたというように、私は笑う。
「ありがとう。私こそ逆に、五十嵐さんに色々気付かされた」
「そう? やった」
彼女は嬉しそうに笑う。
初めて会った時、彼女は見るからに守ってあげたくなるような、ゆるふわ系だった。
服装も可愛らしいアイテムを好んでいて、その中でチラリと色気を見せていた。
それも今は変わっていて、髪型もメイクも服装もナチュラルな女性に変わっていた。
きちんとメイクはしているし、服装にも気を遣っている。
けれどちょっとの崩れも許さない〝守られ女子!〟〝男ウケ!〟みたいな雰囲気は消えた。
街角で男性に声を掛けられても、自分を飾らず媚びず、「今忙しいです」と受け流せる、しなやかな強さを感じる。
「また次に会えるの、楽しみにしてる」
「うん、私も」
私たちは席から立ってそれぞれ会計し、カフェの前で別れた。
**
それから、私は十一月に入って文香とイタリアに行くなど、かなり優雅に過ごさせてもらった。
文香も私との時間をたっぷり取れて、満足してくれたようだ。
こんなに好いてもらっていて、ありがたい限りだ。
……勿論、旅行から帰ったあとは二人に「イタリア男にナンパされてない?」ってめちゃくちゃ確認されて、思う存分抱かれて立てなくなったけど……。
**
十一月末頃、私はトイレで呆然としていた。
その手には、妊娠検査薬。
えーと……。
しばしフリーズしながら、納得もしていた。
最近の微熱感。すっごい眠たくて、生理前かな? って思っていたけど、なかなかこない。
加えて部屋のディフューザーの香りをきつく感じていたのと、せっかくご飯を作っていても「うっ」となってしまう。
もしや……と思ってネット通販で妊娠検査薬を買って、恐る恐る試してみたんだけど……。
朝一番がいいっていうから、そわそわしながら起きて、これだ。
陽性の所にくっきりとピンクのラインがでている。
ぼんやりとしながら、「可燃ゴミだっけ」と思い出し、ノロノロと処理した。
手を洗ってパジャマ姿のまま、リビングに向かってソファに座る。
時刻は五時四十分すぎで、街はこれから夜明けを迎えようとしていた。
(……赤ちゃん、できたのかも)
いまだ実感が湧かない。
けど、どこかソワソワしている。
(病院行ってみないと分からないし)
けどきちんと使えば、妊娠検査薬の精度はかなり高いと書いてあった。
兆候があると分かった時に調べたら、順調にいけば来年の七月半ばには生まれるのでは……と分かった。
(七月か。私と同じ誕生日月だ)
男の子か女の子か分からないけれど、おそろいの服を着て誕生日パーティー、とか考えてニヤァ……としてしまった。
「はぁ……」
思わず溜め息をつき、これからの事を考える。
とりあえず、お酒とカフェインはやめよう。
つわりに注意しつつ栄養管理して、適度な運動も継続。無理なダイエットはしない。
本当はイタリアでまた増量してしまった。
もうそりゃあね、美食の国だからパスタやらリゾットやらピザやら誘惑が……。
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