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ハワイ 編
今日から三人の日に戻るよ
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過去は変えられないし、今を一生懸命生きようとしている彼に、過去を思い出させて鞭打つような、最低な事はしたくない。
「……ごめん」
謝ると、正樹は微笑んで私の額にキスをする。
「僕は、これから優美ちゃんを愛して、愛されて、幸せになりながら〝禊〟をしていく」
「……禊?」
修行僧みたいな事を言う彼を、私は不可解な顔で見た。
「色んな女に〝最低〟って言われた僕だけど、人並みに幸せになる事で、少しはまともになれたって周りに伝えられたらと思う。過去は変えられないけれど、大人でも変わる事はできると信じてる。昔の僕を知っている人たちには、『何を今さら』って言われるかもしれないけど、これから少しずつ成長していきたい。いつか子供が生まれた時、子供が誇ってくれる父親になりたい」
前向きな言葉を口にした彼を、私は思いきり抱き締めた。
愛しいなぁ。
正樹のこの、純粋なところが何より好きだ。
彼は自分の事を「純粋じゃない」と言うだろうけど、私はずっと彼の奥に傷付いた子供がいると感じていた。
明るく無邪気に、そして時に残酷に振る舞うのも、彼の中にいる子供がさせていると思っていた。
沢山傷付いてひねくれてはいるものの、心を開いてくれたあとは、素直に言う事を聞いてくれる。
だから結婚前に私に心の奥底まで見せて、あとは這い上がっていくのみと決めたのだろう。
「そうだね。何度でもやり直せる。四十歳になっても、六十歳になっても、正樹がその気になれば変われるよ」
微笑んだ私は、背伸びをして彼にキスをした。
「ありがとう。……だから、優美ちゃんがたとえどんな事を言っても、僕は受け入れる」
けれど彼の言葉を聞き、私は首を横に振る。
「そうじゃないの。正樹の過去を踏み台にして、私の嫉妬や我が儘を正当化させるのは間違えてる。昨晩は最中だったし、気持ちが高ぶっていた。確かに心の奥底では正樹の過去に嫉妬して、あんな反応をしてしまった。へたしたら折角の新婚初夜だったのに、最悪な雰囲気にもなりかねなかった。私こそごめんなさい。反省してる」
正樹は謝り合いになるのを避けて、無言で私を抱き締める。
そんな彼の気持ちを汲み、私は苦笑いした。
「……お互い様でいこう。私たちは敵じゃないけれど、ぶつかってしまう時もある。それぞれの過去があって、理屈では分かっていても本能的に昇華しきれない感情もあると思う。それが漏れてしまう時があっても、長引かせず、意地を張らず、解決したら『ごめんなさい』を言って〝次〟にいけるようにしよう。そして、『どっちか一方が悪い』は避けよう。もう夫婦になったから」
「うん」
正樹は私の額に自分のそれをつけ、目を閉じて返事をする。
私たちはしばらく、その体勢のまま波の音を聞いていた。
やがて彼は体を離し、また私の手を握ってゆっくり歩き始めた。
その日の夜も、正樹とたっぷり愛し合った。
声が出なくなるまで喘がされ、使える穴は全部……みたいな感じで、朝までフルコースで愛されて、翌朝起きたのも遅い時間だった。
正樹と結婚式を挙げて二日間、慎也は隣の部屋に泊まっていたはずなのに一回も姿を見せなかった。
気を遣っているんだろうなと思うと申し訳なかったけれど、慎也との結婚直後は正樹が遠慮してくれていた。
「……よし、今日から三人の日に戻るよ」
ベッドに寝たままムニャムニャと言い、両腕を伸ばして伸びをすると、二度寝していた正樹が抱き締めてきた。
「三人で仲良くしようね」
「ん」
微笑み合ったあと、私たちは朝の身支度をして朝食レストランに向かった。
**
その日でマウイ島とはお別れで、私たちはアボットさんたち一家とお別れし、四十分もかからないフライトでハワイ島に向かった。
ハワイ島でのホテルは、やっぱり世界的に有名なラグジュアリーホテルだ。
家族たちの分もお金を出してくれているので、一体この新婚旅行に幾ら掛かっているのか怖くて聞けない。
申し訳ないなと思う分、謝るよりもきちんと楽しんで「ありがとう」を言いたい。
そして、帰国してから自分たちにできる事でお返しをしようと、折原家の家族と話し合っていた。
ホテルはオアフ島ほど高層ビルではなく、背の高いヤシの木が届く高さの建物だ。
都会的な洗練されたホテルというより、海沿いの自然を生かした作りになっている。
「新婚初夜、楽しんだ?」
三人で部屋に入ると、慎也が悪戯っぽく笑って尋ねてくる。
「……ごめん」
謝ると、正樹は微笑んで私の額にキスをする。
「僕は、これから優美ちゃんを愛して、愛されて、幸せになりながら〝禊〟をしていく」
「……禊?」
修行僧みたいな事を言う彼を、私は不可解な顔で見た。
「色んな女に〝最低〟って言われた僕だけど、人並みに幸せになる事で、少しはまともになれたって周りに伝えられたらと思う。過去は変えられないけれど、大人でも変わる事はできると信じてる。昔の僕を知っている人たちには、『何を今さら』って言われるかもしれないけど、これから少しずつ成長していきたい。いつか子供が生まれた時、子供が誇ってくれる父親になりたい」
前向きな言葉を口にした彼を、私は思いきり抱き締めた。
愛しいなぁ。
正樹のこの、純粋なところが何より好きだ。
彼は自分の事を「純粋じゃない」と言うだろうけど、私はずっと彼の奥に傷付いた子供がいると感じていた。
明るく無邪気に、そして時に残酷に振る舞うのも、彼の中にいる子供がさせていると思っていた。
沢山傷付いてひねくれてはいるものの、心を開いてくれたあとは、素直に言う事を聞いてくれる。
だから結婚前に私に心の奥底まで見せて、あとは這い上がっていくのみと決めたのだろう。
「そうだね。何度でもやり直せる。四十歳になっても、六十歳になっても、正樹がその気になれば変われるよ」
微笑んだ私は、背伸びをして彼にキスをした。
「ありがとう。……だから、優美ちゃんがたとえどんな事を言っても、僕は受け入れる」
けれど彼の言葉を聞き、私は首を横に振る。
「そうじゃないの。正樹の過去を踏み台にして、私の嫉妬や我が儘を正当化させるのは間違えてる。昨晩は最中だったし、気持ちが高ぶっていた。確かに心の奥底では正樹の過去に嫉妬して、あんな反応をしてしまった。へたしたら折角の新婚初夜だったのに、最悪な雰囲気にもなりかねなかった。私こそごめんなさい。反省してる」
正樹は謝り合いになるのを避けて、無言で私を抱き締める。
そんな彼の気持ちを汲み、私は苦笑いした。
「……お互い様でいこう。私たちは敵じゃないけれど、ぶつかってしまう時もある。それぞれの過去があって、理屈では分かっていても本能的に昇華しきれない感情もあると思う。それが漏れてしまう時があっても、長引かせず、意地を張らず、解決したら『ごめんなさい』を言って〝次〟にいけるようにしよう。そして、『どっちか一方が悪い』は避けよう。もう夫婦になったから」
「うん」
正樹は私の額に自分のそれをつけ、目を閉じて返事をする。
私たちはしばらく、その体勢のまま波の音を聞いていた。
やがて彼は体を離し、また私の手を握ってゆっくり歩き始めた。
その日の夜も、正樹とたっぷり愛し合った。
声が出なくなるまで喘がされ、使える穴は全部……みたいな感じで、朝までフルコースで愛されて、翌朝起きたのも遅い時間だった。
正樹と結婚式を挙げて二日間、慎也は隣の部屋に泊まっていたはずなのに一回も姿を見せなかった。
気を遣っているんだろうなと思うと申し訳なかったけれど、慎也との結婚直後は正樹が遠慮してくれていた。
「……よし、今日から三人の日に戻るよ」
ベッドに寝たままムニャムニャと言い、両腕を伸ばして伸びをすると、二度寝していた正樹が抱き締めてきた。
「三人で仲良くしようね」
「ん」
微笑み合ったあと、私たちは朝の身支度をして朝食レストランに向かった。
**
その日でマウイ島とはお別れで、私たちはアボットさんたち一家とお別れし、四十分もかからないフライトでハワイ島に向かった。
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家族たちの分もお金を出してくれているので、一体この新婚旅行に幾ら掛かっているのか怖くて聞けない。
申し訳ないなと思う分、謝るよりもきちんと楽しんで「ありがとう」を言いたい。
そして、帰国してから自分たちにできる事でお返しをしようと、折原家の家族と話し合っていた。
ホテルはオアフ島ほど高層ビルではなく、背の高いヤシの木が届く高さの建物だ。
都会的な洗練されたホテルというより、海沿いの自然を生かした作りになっている。
「新婚初夜、楽しんだ?」
三人で部屋に入ると、慎也が悪戯っぽく笑って尋ねてくる。
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