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ハワイ 編
三人で支え合っていく
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その負い目と、久賀城家の長男でありながら「失敗してしまった」という意識から、正樹は自分を必要以上に責めてしまった。
「一緒に幸せになろう。三人で一緒なら、怖くないから」
私は微笑み、正樹の髪を撫でる。
彼は一瞬目を見開き、クシャッと笑った。
「そうだね、三人一緒なら怖くない」
幸せになるのが怖いっていうのも、普通の人ならあまり分からない感覚なんだろう。
けれど正樹はずっと、自分に向かってクズ、駄目人間、異常者……等々、言い聞かせ、決めつけてきた。
自分を駄目な人間と思い続け、自己肯定感は地の底まで沈んだ。
けれど表向きは久賀城家の長男で副社長だし、皆に好かれる人気者みたいなキャラだから、そんな自分に目を向けずにいたんだろう。
自覚すれば足が止まってしまう。
「本当は自分は可哀想な存在で、ボロボロに傷付いている」なんて認めてしまったら、仕事も私生活も突っ走っていた勢いがなくなってしまう。
それを恐れて、正樹は満身創痍になりながら、表向き笑顔で活躍し続けた。
私は、過去が過去だから、正樹の気持ちが分かる。
どう考えても自分を褒められなかったし、価値のある存在と思えなかった。
私なんかが、初恋の美形兄弟の隣に立って許されると思わなかった。
自分は太っていて醜くて、汗っかきで高体温で、皆に迷惑を掛けるだけの存在と思い込んでいた。
私を望む人なんて絶対にいないし、好きになってくれる人もいない。
そんな自分は幸せになれないし、痩せなきゃ幸せになる資格がないと思い込んでいた。
……だから、正樹の気持ちが痛いほど分かる。
だからこそ今、暑苦しいまでの熱気で「そんな事ないよ!」と彼を励ましている。
彼を救えれば、過去に傷付いていた自分も救われるんじゃ……と思う気持ちもある。
自分の未来を閉ざそうとする愚かさが分かっているから、手の届く範囲で皆を励まして幸せにしていきたい。
慎也と正樹は家族になるからいいとして、それ以外の人にあれこれお節介を焼くのは、少々やり過ぎだという自覚はある。
プロのカウンセラーは、求められていないのに、他人に声を掛けて助けようとしないだろう。
時々、自分のやっている事に疑問を持ってしまう時もあるけれど、「余計なお世話」と言われない限りは、周りを気に掛けていきたいと思ってる。
どん底から這い上がって目が覚めたからこそ、今まで迷惑を掛けた人もそうじゃない人にも、感謝して皆幸せになってもらいたいと願っていた。
それが自分を痛め続けた私を、心配してくれた人たちへの贖罪だ。
思わず感傷的になっていた私に、横から慎也がチュッとキスをしてきた。
「そんなに気負わなくても、幸せになれるから心配すんな。幸せってのは、考え方一つでジャンジャンボーナス的に感じられるもんだから」
慎也に頭をよしよしされ、私は「そうだね!」と頷く。
「明日、いい式にしろよ。一番前で見守ってるから」
私の肩を離した慎也が、数歩離れた所で笑う。
彼の姿を見て、「強いな」と感じた。
慎也だって「優美を独り占めしたい」と言ってくれている。
二人とも、想いの強さは同じだ。
そんな中、慎也は他人を祝福する強さがある。
正樹は自暴自棄になって「自分は幸せにならなくていい」と思っていた。
けど今は前向きになってくれた以上、素直に幸せを求めてほしいと願っていた。
余裕のない状態で、誰かの幸せを望むのは難しい。
だから、今は必要以上に大人ぶらなくていい。
年上だからとかも関係ない。
その時その時、心に余裕のある人が支えて、先を歩いていけばいい。
私たち三人に上下関係はないし、三人で支え合っていく。
慎也の言葉を聞いて、正樹は微笑んだ。
「……ありがと。緊張してるけど、楽しむよ。こんなにいい所で一番好きな子と式を挙げられるなら、一生心に残る思い出にしないと」
彼は私の肩を組んだまま、慎也に握手を求める。
入籍からグラグラ揺れていた正樹だけど、自分の式を前に落ち着いてくれて良かった。
二人は私を妻にして幸せにする、と思っているだろう。
けれど私は色んな事情を抱えた二人を、自分が幸せにしたいと思っていた。
「明日、またご馳走だね! 楽しみ!」
「たんと食えよ。優美が幸せなら、俺は何でもいい」
慎也は晴れ渡った青空に似合う、爽やかな笑みを浮かべた。
「僕も!」
正樹は私の手を握って挙げると、クルリとダンスのように私の体を回した。
「あはは!」
音楽も何もないけれど、私は正樹に手に掴まってクルクルと何度も回る。
そのあとは慎也とも謎のダンスを踊り、まるで王子様が二人いるように思えた。
**
「一緒に幸せになろう。三人で一緒なら、怖くないから」
私は微笑み、正樹の髪を撫でる。
彼は一瞬目を見開き、クシャッと笑った。
「そうだね、三人一緒なら怖くない」
幸せになるのが怖いっていうのも、普通の人ならあまり分からない感覚なんだろう。
けれど正樹はずっと、自分に向かってクズ、駄目人間、異常者……等々、言い聞かせ、決めつけてきた。
自分を駄目な人間と思い続け、自己肯定感は地の底まで沈んだ。
けれど表向きは久賀城家の長男で副社長だし、皆に好かれる人気者みたいなキャラだから、そんな自分に目を向けずにいたんだろう。
自覚すれば足が止まってしまう。
「本当は自分は可哀想な存在で、ボロボロに傷付いている」なんて認めてしまったら、仕事も私生活も突っ走っていた勢いがなくなってしまう。
それを恐れて、正樹は満身創痍になりながら、表向き笑顔で活躍し続けた。
私は、過去が過去だから、正樹の気持ちが分かる。
どう考えても自分を褒められなかったし、価値のある存在と思えなかった。
私なんかが、初恋の美形兄弟の隣に立って許されると思わなかった。
自分は太っていて醜くて、汗っかきで高体温で、皆に迷惑を掛けるだけの存在と思い込んでいた。
私を望む人なんて絶対にいないし、好きになってくれる人もいない。
そんな自分は幸せになれないし、痩せなきゃ幸せになる資格がないと思い込んでいた。
……だから、正樹の気持ちが痛いほど分かる。
だからこそ今、暑苦しいまでの熱気で「そんな事ないよ!」と彼を励ましている。
彼を救えれば、過去に傷付いていた自分も救われるんじゃ……と思う気持ちもある。
自分の未来を閉ざそうとする愚かさが分かっているから、手の届く範囲で皆を励まして幸せにしていきたい。
慎也と正樹は家族になるからいいとして、それ以外の人にあれこれお節介を焼くのは、少々やり過ぎだという自覚はある。
プロのカウンセラーは、求められていないのに、他人に声を掛けて助けようとしないだろう。
時々、自分のやっている事に疑問を持ってしまう時もあるけれど、「余計なお世話」と言われない限りは、周りを気に掛けていきたいと思ってる。
どん底から這い上がって目が覚めたからこそ、今まで迷惑を掛けた人もそうじゃない人にも、感謝して皆幸せになってもらいたいと願っていた。
それが自分を痛め続けた私を、心配してくれた人たちへの贖罪だ。
思わず感傷的になっていた私に、横から慎也がチュッとキスをしてきた。
「そんなに気負わなくても、幸せになれるから心配すんな。幸せってのは、考え方一つでジャンジャンボーナス的に感じられるもんだから」
慎也に頭をよしよしされ、私は「そうだね!」と頷く。
「明日、いい式にしろよ。一番前で見守ってるから」
私の肩を離した慎也が、数歩離れた所で笑う。
彼の姿を見て、「強いな」と感じた。
慎也だって「優美を独り占めしたい」と言ってくれている。
二人とも、想いの強さは同じだ。
そんな中、慎也は他人を祝福する強さがある。
正樹は自暴自棄になって「自分は幸せにならなくていい」と思っていた。
けど今は前向きになってくれた以上、素直に幸せを求めてほしいと願っていた。
余裕のない状態で、誰かの幸せを望むのは難しい。
だから、今は必要以上に大人ぶらなくていい。
年上だからとかも関係ない。
その時その時、心に余裕のある人が支えて、先を歩いていけばいい。
私たち三人に上下関係はないし、三人で支え合っていく。
慎也の言葉を聞いて、正樹は微笑んだ。
「……ありがと。緊張してるけど、楽しむよ。こんなにいい所で一番好きな子と式を挙げられるなら、一生心に残る思い出にしないと」
彼は私の肩を組んだまま、慎也に握手を求める。
入籍からグラグラ揺れていた正樹だけど、自分の式を前に落ち着いてくれて良かった。
二人は私を妻にして幸せにする、と思っているだろう。
けれど私は色んな事情を抱えた二人を、自分が幸せにしたいと思っていた。
「明日、またご馳走だね! 楽しみ!」
「たんと食えよ。優美が幸せなら、俺は何でもいい」
慎也は晴れ渡った青空に似合う、爽やかな笑みを浮かべた。
「僕も!」
正樹は私の手を握って挙げると、クルリとダンスのように私の体を回した。
「あはは!」
音楽も何もないけれど、私は正樹に手に掴まってクルクルと何度も回る。
そのあとは慎也とも謎のダンスを踊り、まるで王子様が二人いるように思えた。
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