上 下
344 / 539
ハワイ 編

もっと慎也を構ってあげて!

しおりを挟む
 文香と女子トークしながら、私は初めて二人に出会った時、慎也にバナナを使ったヴィーガンスイーツを教えてもらったのを思い出していた。

 砂糖、牛乳不使用のバナナアイスは、あのあと調べて見たらネットですぐにレシピが見つかった。
 作るのも簡単だったし、食べてみたらとっても美味しかったので、しばらくハマって甘い物が欲しくなった時はあればっかり食べていた。

 懐かしいなぁ……。

「ねぇ、慎……」

 昔の事を思い出して彼に話しかけようとしたら、正樹がアイスをスプーンですくって、慎也に「はい、あーん」とやっていた。

「ちょ……っ?」

 目をまん丸にしている私の前で、正樹が裏声をだす。

「おいちい? あなた」

「おいちーい!」

 ……なに、この茶番……。

 真顔で固まっている私の前で、二人が泣き崩れる。

「って優美とやるんだろ? 俺~! 新婚旅行なんだから!」

「優美ちゃん、もっと慎也を構ってあげて!」

「ごめんごめんごめんごめんごめんごめん!!」

 フツーに文香と遊んでる感覚だったけど、そこまで追い詰めてるとは思わなかった!

「は、はい! 慎也、あーん」

 私は自分のスプーンでアイスをすくい、慎也に差しだす。
 彼は少しだけ私をジトォ……とした目で見たあと、素直にアイスを食べてくれた。うう……。

「ごめん。普通に優美と遊んでたつもりだったけど、新婚旅行だったよね」

 文香はそう言って、スプーンを口に運ぶ。

 う……、何だか……。

 たじろいだ私に、文香はヒラヒラと手を振る。

「別に気にしなくていいって。結婚式に参加するつもりでついてきたけど、本来は新婚旅行だから、私が邪魔者なのは分かってる」

 えぇと……、うーん……。

 すっかり板挟みになってしまった私は、そのあとアイスを食べ終わるまでチベットスナギツネみたいな顔で沈黙していた。





 文香たちと別れたあと、二人は私の両側で歩いていた。

「ごめんな? 別に喧嘩させるつもりじゃなかった」

 歩きながら、慎也が謝ってくれた。

「いや、いいのいいの。文香のあれは怒ってない」

「まぁまぁ、今回のハワイは僕らが主役なんだからさ。新婚旅行が終わったら、文香ちゃんと旅行行くんでしょ? その時にたっぷりイチャイチャしなよ。僕らは僕らで、いま遠慮したら駄目だと思うし」

「んー、そうだね……」

 正樹の言うとおりだ。
 言う通りなんだけど……、ちょっとショボンとしてしまう。

「文香ちゃんも分かってると思うよ。ああいう性格だから『あっ、ごめんねー?』とか素直に言えないけど、あとから反省はしてると思う」

「おや、文香の肩を持ってくれてありがとう」

 ちょっと珍しいなと思って正樹を見ると、何か知らないけどまたしょっぱい顔をしていた。

「適当に回って満足したら、ビーチを歩いて戻ろう。明日は移動だし、二人とも万全にしておいたほうがいいと思う」

 慎也に言われ、私と正樹は「そうだね」と頷く。

 新婚旅行に出たからいい、じゃなくて、私たちにはまだ二度目の結婚式がある。
 今はそっちに集中しなきゃいけないんだ。

 考え直した私は、今夜慎也に求められる事を考えて、じんわりと頬を染めた。

 そのあと、努めて平静を装い二人とウィンドウショッピングを楽しむ。
 ビーチをゆっくり歩いたあと、ホテルに戻った。



**



 ディナーはホテル近くのシーフードレストランで、ロブスターなどを食べながら迫力のあるファイアーダンスや、思いのほかめっちゃ腰を動かすフラダンスを見た。

 私が想像していたゆったりとしたフラダンスもあったけれど、激しい腰遣いを見ると「カッコイイ!」と思う感情が強かった。

「いやぁ、いいもの見たなぁ……」

 部屋に戻ったあと、私はダンサーさんの真似をして腰を振ってみる。

「……誘ってんの?」

 踊ってみる事に集中していたからか、耳元でボソッと言われて思わず「わぁっ!」と叫んでしまった。

「……と……」

 けれど後ろから抱き締められ、「びっくりしたな、もう」と言おうと思ったのが、スンッと収まる。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話

水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。 相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。 義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。 陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。 しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。

処理中です...