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ハワイ 編
もっと慎也を構ってあげて!
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文香と女子トークしながら、私は初めて二人に出会った時、慎也にバナナを使ったヴィーガンスイーツを教えてもらったのを思い出していた。
砂糖、牛乳不使用のバナナアイスは、あのあと調べて見たらネットですぐにレシピが見つかった。
作るのも簡単だったし、食べてみたらとっても美味しかったので、しばらくハマって甘い物が欲しくなった時はあればっかり食べていた。
懐かしいなぁ……。
「ねぇ、慎……」
昔の事を思い出して彼に話しかけようとしたら、正樹がアイスをスプーンですくって、慎也に「はい、あーん」とやっていた。
「ちょ……っ?」
目をまん丸にしている私の前で、正樹が裏声をだす。
「おいちい? あなた」
「おいちーい!」
……なに、この茶番……。
真顔で固まっている私の前で、二人が泣き崩れる。
「って優美とやるんだろ? 俺~! 新婚旅行なんだから!」
「優美ちゃん、もっと慎也を構ってあげて!」
「ごめんごめんごめんごめんごめんごめん!!」
フツーに文香と遊んでる感覚だったけど、そこまで追い詰めてるとは思わなかった!
「は、はい! 慎也、あーん」
私は自分のスプーンでアイスをすくい、慎也に差しだす。
彼は少しだけ私をジトォ……とした目で見たあと、素直にアイスを食べてくれた。うう……。
「ごめん。普通に優美と遊んでたつもりだったけど、新婚旅行だったよね」
文香はそう言って、スプーンを口に運ぶ。
う……、何だか……。
たじろいだ私に、文香はヒラヒラと手を振る。
「別に気にしなくていいって。結婚式に参加するつもりでついてきたけど、本来は新婚旅行だから、私が邪魔者なのは分かってる」
えぇと……、うーん……。
すっかり板挟みになってしまった私は、そのあとアイスを食べ終わるまでチベットスナギツネみたいな顔で沈黙していた。
文香たちと別れたあと、二人は私の両側で歩いていた。
「ごめんな? 別に喧嘩させるつもりじゃなかった」
歩きながら、慎也が謝ってくれた。
「いや、いいのいいの。文香のあれは怒ってない」
「まぁまぁ、今回のハワイは僕らが主役なんだからさ。新婚旅行が終わったら、文香ちゃんと旅行行くんでしょ? その時にたっぷりイチャイチャしなよ。僕らは僕らで、いま遠慮したら駄目だと思うし」
「んー、そうだね……」
正樹の言うとおりだ。
言う通りなんだけど……、ちょっとショボンとしてしまう。
「文香ちゃんも分かってると思うよ。ああいう性格だから『あっ、ごめんねー?』とか素直に言えないけど、あとから反省はしてると思う」
「おや、文香の肩を持ってくれてありがとう」
ちょっと珍しいなと思って正樹を見ると、何か知らないけどまたしょっぱい顔をしていた。
「適当に回って満足したら、ビーチを歩いて戻ろう。明日は移動だし、二人とも万全にしておいたほうがいいと思う」
慎也に言われ、私と正樹は「そうだね」と頷く。
新婚旅行に出たからいい、じゃなくて、私たちにはまだ二度目の結婚式がある。
今はそっちに集中しなきゃいけないんだ。
考え直した私は、今夜慎也に求められる事を考えて、じんわりと頬を染めた。
そのあと、努めて平静を装い二人とウィンドウショッピングを楽しむ。
ビーチをゆっくり歩いたあと、ホテルに戻った。
**
ディナーはホテル近くのシーフードレストランで、ロブスターなどを食べながら迫力のあるファイアーダンスや、思いのほかめっちゃ腰を動かすフラダンスを見た。
私が想像していたゆったりとしたフラダンスもあったけれど、激しい腰遣いを見ると「カッコイイ!」と思う感情が強かった。
「いやぁ、いいもの見たなぁ……」
部屋に戻ったあと、私はダンサーさんの真似をして腰を振ってみる。
「……誘ってんの?」
踊ってみる事に集中していたからか、耳元でボソッと言われて思わず「わぁっ!」と叫んでしまった。
「……と……」
けれど後ろから抱き締められ、「びっくりしたな、もう」と言おうと思ったのが、スンッと収まる。
砂糖、牛乳不使用のバナナアイスは、あのあと調べて見たらネットですぐにレシピが見つかった。
作るのも簡単だったし、食べてみたらとっても美味しかったので、しばらくハマって甘い物が欲しくなった時はあればっかり食べていた。
懐かしいなぁ……。
「ねぇ、慎……」
昔の事を思い出して彼に話しかけようとしたら、正樹がアイスをスプーンですくって、慎也に「はい、あーん」とやっていた。
「ちょ……っ?」
目をまん丸にしている私の前で、正樹が裏声をだす。
「おいちい? あなた」
「おいちーい!」
……なに、この茶番……。
真顔で固まっている私の前で、二人が泣き崩れる。
「って優美とやるんだろ? 俺~! 新婚旅行なんだから!」
「優美ちゃん、もっと慎也を構ってあげて!」
「ごめんごめんごめんごめんごめんごめん!!」
フツーに文香と遊んでる感覚だったけど、そこまで追い詰めてるとは思わなかった!
「は、はい! 慎也、あーん」
私は自分のスプーンでアイスをすくい、慎也に差しだす。
彼は少しだけ私をジトォ……とした目で見たあと、素直にアイスを食べてくれた。うう……。
「ごめん。普通に優美と遊んでたつもりだったけど、新婚旅行だったよね」
文香はそう言って、スプーンを口に運ぶ。
う……、何だか……。
たじろいだ私に、文香はヒラヒラと手を振る。
「別に気にしなくていいって。結婚式に参加するつもりでついてきたけど、本来は新婚旅行だから、私が邪魔者なのは分かってる」
えぇと……、うーん……。
すっかり板挟みになってしまった私は、そのあとアイスを食べ終わるまでチベットスナギツネみたいな顔で沈黙していた。
文香たちと別れたあと、二人は私の両側で歩いていた。
「ごめんな? 別に喧嘩させるつもりじゃなかった」
歩きながら、慎也が謝ってくれた。
「いや、いいのいいの。文香のあれは怒ってない」
「まぁまぁ、今回のハワイは僕らが主役なんだからさ。新婚旅行が終わったら、文香ちゃんと旅行行くんでしょ? その時にたっぷりイチャイチャしなよ。僕らは僕らで、いま遠慮したら駄目だと思うし」
「んー、そうだね……」
正樹の言うとおりだ。
言う通りなんだけど……、ちょっとショボンとしてしまう。
「文香ちゃんも分かってると思うよ。ああいう性格だから『あっ、ごめんねー?』とか素直に言えないけど、あとから反省はしてると思う」
「おや、文香の肩を持ってくれてありがとう」
ちょっと珍しいなと思って正樹を見ると、何か知らないけどまたしょっぱい顔をしていた。
「適当に回って満足したら、ビーチを歩いて戻ろう。明日は移動だし、二人とも万全にしておいたほうがいいと思う」
慎也に言われ、私と正樹は「そうだね」と頷く。
新婚旅行に出たからいい、じゃなくて、私たちにはまだ二度目の結婚式がある。
今はそっちに集中しなきゃいけないんだ。
考え直した私は、今夜慎也に求められる事を考えて、じんわりと頬を染めた。
そのあと、努めて平静を装い二人とウィンドウショッピングを楽しむ。
ビーチをゆっくり歩いたあと、ホテルに戻った。
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私が想像していたゆったりとしたフラダンスもあったけれど、激しい腰遣いを見ると「カッコイイ!」と思う感情が強かった。
「いやぁ、いいもの見たなぁ……」
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「……誘ってんの?」
踊ってみる事に集中していたからか、耳元でボソッと言われて思わず「わぁっ!」と叫んでしまった。
「……と……」
けれど後ろから抱き締められ、「びっくりしたな、もう」と言おうと思ったのが、スンッと収まる。
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