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ハワイ 編
色男、どこに行くの?
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「うん」
目を閉じると、静かだなぁ……と感じた。
日本から離れてハワイの高級ホテルに来て、ベッドでごろん。
三人で過ごす空気も大好きだけれど、一人ずつとゆっくり時間を取れるのもありがたい。
結婚前にそれぞれの気持ちを確認したからこそ、より個人の時間を大切にしないと、と思っている。
「好きだよ」
微笑んで慎也にキスをすると、彼はとても幸せそうに笑う。
「……ちょっとお触りしたいな」
ムラッときたのか、慎也はそう言って私のお尻を撫でてきた。
「んもー」
夜に、って言ったのに。
仕方ないなぁ、と思いつつ受け入れてしまう私は、やっぱりエッチな事好きなのかな……?
分からないけれど、好きな人に求められるのは嬉しい。
そう思い、私は首筋に顔を埋めてくる慎也を抱き締めた。
**
「はー……」
部屋に着いた僕は、荷物を置いてからベッドに仰向けになった。
疲れたな……。
……いや、明後日には結婚式なのに、疲れたなんて言ってらんない。
衣装とかは持ってきていて、その他のものもバッチリ予約済みだ。
もう引き返せない所まできているのに、僕は自分が優美ちゃんと結婚式を挙げる現実をまだ受け入れられないでいた。
言ってしまえば、あんなに諦めていた自分が、本当に幸せになる日がくると思っていなかったというか。
……なんか、このまま考え込んでいたら、またネガティブループに嵌まりそうだ。
気分変えよう。
「……ちょっと、ビーチでも歩こうかな」
呟いて、脚を上げて反動をつけて起き上がる。
スーツケースを開けて着替えを出すと、ハーフパンツとサンダルという軽装になった。
そして、貴重品とカードキーを持って部屋を出る。
廊下に出ると、隣の部屋の前で少し立ち止まってしまった。
今は慎也と優美ちゃんのハネムーンで、二人は部屋の中にいる。
十日間の旅行の間、誰が優美ちゃんと同じベッドで寝るかという相談は、事前に話し合って三人とも納得していた。
いつもは三人で空間を共有し、ベッドだって三人で寝ている。
それなのに目の前には二人と僕を隔てる扉があって、何とも言えない気持ちになった。
でも、モヤモヤしていた気持ちは優美ちゃんにぶつけて、受け入れてもらった。
これからも話を聞いてくれると言ったけど、それは今じゃない。
それぐらい、空気を読まない僕だって分かる。
「お幸せにね」
呟いて、僕は廊下を進んでいった。
「まぶし……」
外に出ると容赦のない日差しが照りつけてきて、僕はサングラスを掛ける。
周りは観光客一色で、サングラスを掛けた外国人のカップルや家族が、思い思いにのんびりリゾートを楽しんでいる。
「周りの人たちは、僕が久賀城ホールディングスの御曹司だと知らないんだな」と思うと、急に気持ちが軽くなった。
ヤシの木がポツポツと生えている白砂のビーチを歩いていく。
パラソルとビーチチェアのセットもあるけど、焼きたい人が多いみたいで、砂の上に敷物を敷いて寝転んでいる。
波打ち際まで行ってみようと思ったけど、急に日本語で呼び止められた。
「色男、どこに行くの? 入水?」
辛辣な言葉を掛けてくる声に、思わず振り向く。
そこにはすでにワンピースにサングラス姿の文香ちゃんが、和人くんと一緒にくつろいでいた。
「……早くない?」
「とりあえず、雰囲気は楽しんでおこうと思って」
彼女はサングラスを外さず、真顔で返事をする。
「……座ります?」
和人くんが気を遣ってくれて、ビーチチェアを一つずれる。
「……ごめん」
何だか分からないけど、そのまま文香ちゃんたちと話す事になった。
彼女はしばらく黙って海を眺めていたけれど、ぽつんと呟く。
「まぁ、形だけでも結婚できて良かったじゃん」
「ありがと」
「優美たちは一緒じゃなかったの?」
目を閉じると、静かだなぁ……と感じた。
日本から離れてハワイの高級ホテルに来て、ベッドでごろん。
三人で過ごす空気も大好きだけれど、一人ずつとゆっくり時間を取れるのもありがたい。
結婚前にそれぞれの気持ちを確認したからこそ、より個人の時間を大切にしないと、と思っている。
「好きだよ」
微笑んで慎也にキスをすると、彼はとても幸せそうに笑う。
「……ちょっとお触りしたいな」
ムラッときたのか、慎也はそう言って私のお尻を撫でてきた。
「んもー」
夜に、って言ったのに。
仕方ないなぁ、と思いつつ受け入れてしまう私は、やっぱりエッチな事好きなのかな……?
分からないけれど、好きな人に求められるのは嬉しい。
そう思い、私は首筋に顔を埋めてくる慎也を抱き締めた。
**
「はー……」
部屋に着いた僕は、荷物を置いてからベッドに仰向けになった。
疲れたな……。
……いや、明後日には結婚式なのに、疲れたなんて言ってらんない。
衣装とかは持ってきていて、その他のものもバッチリ予約済みだ。
もう引き返せない所まできているのに、僕は自分が優美ちゃんと結婚式を挙げる現実をまだ受け入れられないでいた。
言ってしまえば、あんなに諦めていた自分が、本当に幸せになる日がくると思っていなかったというか。
……なんか、このまま考え込んでいたら、またネガティブループに嵌まりそうだ。
気分変えよう。
「……ちょっと、ビーチでも歩こうかな」
呟いて、脚を上げて反動をつけて起き上がる。
スーツケースを開けて着替えを出すと、ハーフパンツとサンダルという軽装になった。
そして、貴重品とカードキーを持って部屋を出る。
廊下に出ると、隣の部屋の前で少し立ち止まってしまった。
今は慎也と優美ちゃんのハネムーンで、二人は部屋の中にいる。
十日間の旅行の間、誰が優美ちゃんと同じベッドで寝るかという相談は、事前に話し合って三人とも納得していた。
いつもは三人で空間を共有し、ベッドだって三人で寝ている。
それなのに目の前には二人と僕を隔てる扉があって、何とも言えない気持ちになった。
でも、モヤモヤしていた気持ちは優美ちゃんにぶつけて、受け入れてもらった。
これからも話を聞いてくれると言ったけど、それは今じゃない。
それぐらい、空気を読まない僕だって分かる。
「お幸せにね」
呟いて、僕は廊下を進んでいった。
「まぶし……」
外に出ると容赦のない日差しが照りつけてきて、僕はサングラスを掛ける。
周りは観光客一色で、サングラスを掛けた外国人のカップルや家族が、思い思いにのんびりリゾートを楽しんでいる。
「周りの人たちは、僕が久賀城ホールディングスの御曹司だと知らないんだな」と思うと、急に気持ちが軽くなった。
ヤシの木がポツポツと生えている白砂のビーチを歩いていく。
パラソルとビーチチェアのセットもあるけど、焼きたい人が多いみたいで、砂の上に敷物を敷いて寝転んでいる。
波打ち際まで行ってみようと思ったけど、急に日本語で呼び止められた。
「色男、どこに行くの? 入水?」
辛辣な言葉を掛けてくる声に、思わず振り向く。
そこにはすでにワンピースにサングラス姿の文香ちゃんが、和人くんと一緒にくつろいでいた。
「……早くない?」
「とりあえず、雰囲気は楽しんでおこうと思って」
彼女はサングラスを外さず、真顔で返事をする。
「……座ります?」
和人くんが気を遣ってくれて、ビーチチェアを一つずれる。
「……ごめん」
何だか分からないけど、そのまま文香ちゃんたちと話す事になった。
彼女はしばらく黙って海を眺めていたけれど、ぽつんと呟く。
「まぁ、形だけでも結婚できて良かったじゃん」
「ありがと」
「優美たちは一緒じゃなかったの?」
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