上 下
334 / 539
結婚式 編

結婚披露宴

しおりを挟む
 私と彼の家族も、親戚も、文香も和人くんも、学生時代の友達も、シャーロットさんたちも。

 皆、私と慎也の結婚を祝福してくれている。

 ――ありがとう。

 慎也と顔を見合わせ微笑み合い、私はチャペルの外まで出た。

 そのあと皆で集まって写真撮影をしたあと、いざ披露宴となった。



**



 披露宴の会場は、ホテルの宴会場の一番大きな場所を押さえた。

 そこには五百人以上が収容できるらしい。

 高砂の後ろにはクリーム色の壁に、ホテルの名前がプロジェクターで投影されている。
 あとからそこで私たちのなれそめ動画や、プロジェクションマッピングが投影されるそうだ。

 天井からはゴールドのシャンデリアが下がって、会場を照らしている。
 壁やカーペット、椅子のカバーなどはミッドナイトブルーで統一されていて、大人っぽい落ち着きがあった。

 ……というのは、事前に確認して知った情報だ。

 今、私と慎也は、披露宴前の準備をしなければならない。

 最初に着替えたのは、海外ハイブランドのドレスだ。
 パキッとした真っ赤なチューブトップドレスに、襟元から腰まで色とりどりの花が刺繍されているデザインだ。
 スカートにも、同様の刺繍が裾へ向かって広がるように施されている。

 文香が「優美はハッキリした色が似合うよ」と言ってくれ、彼女と一緒にカタログを沢山見た結果、このドレスに決めた。
 勿論、慎也と正樹にも確認してもらって、「絶対似合うよ!」と太鼓判を押してもらった。

 慎也もお色直しをして、普通丈のジャケットに濃紺のシャツ、ボルドーの蝶ネクタイとオシャレな雰囲気になっている。

 着替えた私たちは、スタッフに合図されて会場に入った。

 ドラマチックな音楽が流れるなか、割れんばかりの拍手に迎えられ、私たちは高砂席に向かう。

 それから司会による開宴の言葉、新郎新婦の紹介のあと、久賀城家側からは某企業のお偉いさん、私側からはE&Eフーズの部長がスピーチをしてくれた。
 そのあと乾杯になり、私たちもシャンパンで喉を潤した。
 
 美食家の慎也がこだわったフレンチコースが順番に運ばれ始める。
 皆がいる席を見ると、友達はご馳走を喜んでくれていた。

「美味しいね」

「ん。あんまり暇はないみたいだから、食べられる時に食べておかないと」

「あはは、本当に結婚式当日って戦場みたいだね」

 慎也とも和やかに話しながらしばし食事を楽しむ。
 けれど友達がしばしば写真撮影に訪れるので、食事の手を止めて撮影に応じる。

 やがてケーキ入刀になり、ウエディングケーキが運ばれてきた。

 ケーキは色んなデザインがあって悩んだ。
 タワーみたいに高いのも派手だけれど、どうせならオシャレで美味しい物がいいねという事になった。
 結局、三段構えでベリー系のフルーツでデコレーションされた物に決まったのだった。

 集まった女子たちは、ケーキを見て「可愛い~」と言って写真を撮っている。

 そしてまたドラマチックな音楽が流れるなか、私と慎也は二人でナイフを握って入刀し、ファーストバイトをした。

 文香が最前列でバッシャバシャと写真を撮ってる姿は、なかなか気合いが入っている。
 シャーロットさんも相当だ。

 この日のためのブランド物のワンピースも格好いいけど、構えている一眼レフが半端ない。

 ……いつから写真に目覚めたんだっけ。

 軽く混乱している間も時間は進み、私は次のお色直しのために中座する事になった。

「ああ、忙しい! ご飯食べたい!」

 廊下を速歩に進みながら、私は弱音を吐く。

「今夜の便、ファーストクラスのコース料理で我慢してくれ」

「おうよ!」





 再度入場する時は、私は和装になっていた。

 白無垢の上に、千代見草に鶴柄の色打ち掛け、髪型もアレンジして和風のヘアアクセサリーをつけている。

 慎也は紋付き袴で、和装の彼も格好いい。

 それからテーブルラウンドになるんだけど、話し合った結果、角テーブルに小さな酒樽を置いて、ミニ鏡開きをする。

 小さな樽は和風の絵柄がついているけれど、ミニサイズだからかとても可愛い。
 それに合わせた小さな木槌を慎也と握り、テーブルの人に声を掛けてもらってピコッと割る。

 蓋はあらかじめ切り込みが入っていて、マグネットで簡単に外れるようになっていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性欲のない義父は、愛娘にだけ欲情する

如月あこ
恋愛
「新しい家族が増えるの」と母は言った。  八歳の有希は、母が再婚するものだと思い込んだ――けれど。  内縁の夫として一緒に暮らすことになった片瀬慎一郎は、母を二人目の「偽装結婚」の相手に選んだだけだった。  慎一郎を怒らせないように、母や兄弟は慎一郎にほとんど関わらない。有希だけが唯一、慎一郎の炊事や洗濯などの世話を妬き続けた。  そしてそれから十年以上が過ぎて、兄弟たちは就職を機に家を出て行ってしまった。  物語は、有希が二十歳の誕生日を迎えた日から始まる――。  有希は『いつ頃から、恋をしていたのだろう』と淡い恋心を胸に秘める。慎一郎は『有希は大人の女性になった。彼女はいずれ嫁いで、自分の傍からいなくなってしまうのだ』と知る。  二十五歳の歳の差、養父娘ラブストーリー。

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

10のベッドシーン【R18】

日下奈緒
恋愛
男女の数だけベッドシーンがある。 この短編集は、ベッドシーンだけ切り取ったラブストーリーです。

勘違いで別れを告げた日から豹変した婚約者が毎晩迫ってきて困っています

Adria
恋愛
詩音は怪我をして実家の病院に診察に行った時に、婚約者のある噂を耳にした。その噂を聞いて、今まで彼が自分に触れなかった理由に気づく。 意を決して彼を解放してあげるつもりで別れを告げると、その日から穏やかだった彼はいなくなり、執着を剥き出しにしたSな彼になってしまった。 戸惑う反面、毎日激愛を注がれ次第に溺れていく―― イラスト:らぎ様

極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました

白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。 あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。 そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。 翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。 しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。 ********** ●早瀬 果歩(はやせ かほ) 25歳、OL 元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。 ●逢見 翔(おうみ しょう) 28歳、パイロット 世界を飛び回るエリートパイロット。 ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。 翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……? ●航(わたる) 1歳半 果歩と翔の息子。飛行機が好き。 ※表記年齢は初登場です ********** webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です! 完結しました!

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

処理中です...