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入籍 編

そして正樹とのデートへ

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「そんな優美には、ドクターフィッシュの刑にしようかな」

「あっ、知ってるそれ! 角質食べるやつでしょ。体験はした事ないけど、見てると何か……うはははは、って笑い
たくなる」

「優美ってさ、水族館の魚見て『美味しそう』ってなるタイプ? 俺そっちのタイプで、正樹にドン引きされたんだけど」

「あ、私も『美味しそう』のほうだわ。新鮮そうでいいよね」

 ポンポンと話題を変えつつ、私は慎也と水族館デートを楽しみ、最後にアトラクションを思いっきり楽しんでゆっくりマンションに帰る事にした。

 帰り、慎也は「今夜は一人で好きなつまみでも作って、祝杯を挙げる」と言って、自分の好きなワインやおつまみを買っていた。



**



「ただいまー」

 マンションに帰ると、ソファに座っていた正樹が「おかえり」と立ち上がった。

「もうそんな時間になったんだね。僕も着替えないと」

「私もすぐ着替えてメイク直してくる」

 十月に入り、前半はまだ三十度近くあって暑かったけれど、先日雨が降ってから一気に気温が落ちた。

 すぐに自分の部屋に入ると、服を脱いで念入りに汗拭きシートで拭う。
 涼しくなったとはいえ、動いたから念のため。
 綺麗な服に着替える前に、シャワーを入れないなら最低限身を清めねば。

 何となく気分的に〝礼儀〟な気がして、下着からすべて着替える事にした。

 黒いレースの膝丈Iラインワンピースに、黒のボレロ。服がオールブラックなので、ビビッドピンクのハンドバッグをチョイスする。

 服装は割とカチッとしているので、髪はあえてダウンスタイルにしてバランスを取る事にした。
 とはいえ、ロングヘアで食事はアレなので、ハーフアップにして食事の邪魔にならないようにする。

 爪は塗り直す時間がないのでそのまま。
 ちなみにベースの色がベージュグレーの大理石ネイルだ。

 三十分も掛からないで支度を終え、リビングに戻ると正樹はすでにビシッとスーツできめていた。うん、カッコイイ。

「じゃあ、行こうか。優美ちゃん」

「ん。行ってきます、慎也」

「いってら」

 手を振った私を引き寄せ、慎也はキスをする。

「あっ、もう! リップ塗ったのに!」

 リップ一つ塗るにしても、コンシーラーで輪郭を隠すところから二度塗りまで丁寧にやっている。
 ぶちゅっとキスをされて台無しにされては堪ったもんじゃない。

 けれど慎也はニヤッと笑い、「車の中で直しな」と言うだけだ。
 ……多分、正樹とのデートのちょっとした意趣返しだろう。

 面倒くさい男たちだけど、これが私の選んだ道だからしゃーない。

「行ってくるね」

 仕方ないなぁ、と苦笑いした私は、シューズクローゼットからヒールを出して履き、正樹と一緒に出た。



**



 エントランスまで行くと、すでにマンションの前には、正樹の運転手の大村さんが待機していた。

「どこまで行くの?」

 大村さんに挨拶をしてから後部座席に乗り込み、私は正樹に尋ねる。

「日本橋のホテル」

「ん、そっか」

 デートのつもりでいてね、と私が言ったから、相応の場所を予約してくれたんだろう。

 そのまま車は発進し、私は何となく無言になり、窓の外の景色を見る。
 正樹も特に何も言わず、少ししてからシートの上にのせていた私の手に、自分の手を重ねてきた。

 二人とも黙っていたけれど、先に口を開いたのは正樹だった。

「おめでとう」

「ん……。ありがとう」

 分かっていたのに、正樹にそう言われると切なくなる。

 色々、話そうと思っていた事はあったんだ。

 沢山心の中で考えていたけれど、いざ正樹にそう言われると頭から飛んでいってしまい、何だったっけ……と必死に思いだそうとする羽目になる。

 用意していた言葉が吹っ飛んだので、私は直球勝負をする事にした。

「正樹さ、今日区役所でちょっと落ち込んでた?」

 その問いに、正樹はすぐに答えない。
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