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正樹と料理 編
〝持てる者〟の悩み
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やがて魚が焼けてご飯も炊けて、慎也も参加して盛り付けになる。
「正樹、お疲れさん。やればできるじゃん」
食卓テーブルにつき、私たちは正樹が作ったご飯を美味しく食べる。
彼はいつもの覇気がなく、どこかぼんやりして自分が作った物を口にしている。
「……慎也、こんな大変な事ずーっとしてたんだなぁ」
「今さらだろ。それに、趣味の一つだから特に大変とも思わないよ。疲れてる時はサボりたいけど、自分の舌に合ったもんを作るのは好きだし」
微笑んで返事をし、慎也は玉子焼きを食べて「んまいよ」とサムズアップする。
正樹は食事を進めながらも、浮かない顔だ。
その理由を話したのは、食事を終えてコーヒータイムになった時だ。
「僕さぁ、大体の事はうまくやれる自信があったんだよね。そりゃあ、料理はノータッチだったし、学生時代の家庭科は何とか誤魔化して及第点もらってた感じだった」
「……そういえば、家庭科の授業で正樹が作ったぬいぐるみ、なかなかな感じだったな……。こう、深淵の者っていう感じで」
それはそれで、ちょっと見てみたい。
「ここまで苦手になったのって、何だろう? って考えてみたら、やっぱり受験とかに大きく響かないからだね。音楽や絵画とかは校内コンクールもあるから、親も教室に通わせてくれて、そこそこいいセンいくようになったんだ」
正樹が言う〝そこそこいいセン〟は、一般人から見ればかなりのものなんだろう。
「結構大きい賞を取ったりしてたよな」
慎也が相槌を打ったけれど、正樹は受賞とかに興味はないようだった。
「僕、ある程度の事は八割以上できちゃうんだよね。だから達成感がなくて、賞とかもらうくせに喜ばないから、友達には嫌われてた。本当に才能のある人に負けたら、『ああ、あの人凄いなぁ、本物だ』って思って対抗意識も燃やさない」
正樹の言葉に、慎也も同意する。
「俺も概ね同じ感じだったかな」
「お前らに私が描いた、父の日母の日の絵、友達の肖像画を見せてやりたい……」
私はボソッと呟く。
そりゃあもう、私の小学生の時の絵は、何でか知らないけど鼻の穴にフォーカスしていて、友達にも先生にも家族にも、鼻の穴について突っ込まれていた。
ついでにあの、鼻の下の人中もくっきりで、どんだけ鼻が好きなのかと今になってもネタにされる。
「まぁ、それはともかく、〝持てる者〟の悩みは二人を見てたら大体分かるよ」
脱線したのを元に戻すと、正樹が物憂げに溜め息をつく。
「僕、今まで〝できない事〟で悩んだ事なかったんだけどなぁ。『できないならいいや』って切り捨てて、長所をどんどん伸ばしてたし」
そしてチラッと慎也を見て、恥ずかしそうに言う。
「今日、改めて僕は慎也より劣ってるって痛感したよ。驕ってた訳じゃないけど、自分がここまで使えない男だと思わなかった」
慎也は困った様に苦笑いし、首を傾げる。
「人間だから、苦手な事ぐらいあってもいいだろ。使えないなんて言うなよ」
「んー、でも、何かやだ」
正樹は珍しく子供っぽく不機嫌な表情を見せている。
唇を引き結んで少し悩んだあと、溜め息混じりに言った。
「慎也と二人して優美ちゃんの夫になるのに、家事の中でも大切な料理が壊滅的っていうのが、いかにヤバくて不利なのか思い知った」
私は思わず笑う。
「料理が苦手なんて今さらじゃん。それで嫌いになるとかあり得ないからね? 慎也と張り合う必要もないし、悔しいって思うなら、さっきも言ったけど少しずつ練習すればいいでしょ」
ポンポンと彼の肩を叩いても、珍しく機嫌を直さない。
「……子供ができてさぁ、『パパって使えない』って言われたらショックで寝込むかも……。慎也も優美ちゃんも出かけてる時、子供たちに栄養のある物を食べさせられなくて、ひもじい思いをさせたら……」
「ちょ、ま、ま!」
あまりに考えが飛躍して、私はストップをかける。
「正樹が!? まだ起こってもいない事で悩んでる!?」
「……あ、突っ込むところそこなの?」
やはりいつもと比べて正樹の反応が薄い。
こりゃあ、真剣に悩んでるな……。
「正樹、まず落ち着いて。私のおっぱいでも触りなさい」
とりあえず、と思って私は正樹の手を掴み、ぱふんと胸を包ませる。
あっけに取られた彼は、条件反射でもみもみと手を動かした。
ちなみに休日は胸をなるべく休ませたいと思っていて、総レースのノンパッドのブラをつけている。
なので普段のガチッとした補正力がなく、生乳に近い揉み心地だ。
「……気持ちいい……」
「正樹、ずるい」
背中側から慎也の恨めしそうな声が聞こえる。
「ほら、赤ちゃんも柔らかい物を握ると安心するって言うでしょ? おっぱいセラピーって効果あるんじゃないかな? と思って」
ついでなので慎也の手も握り、反対側の胸を揉ませる。
「正樹、お疲れさん。やればできるじゃん」
食卓テーブルにつき、私たちは正樹が作ったご飯を美味しく食べる。
彼はいつもの覇気がなく、どこかぼんやりして自分が作った物を口にしている。
「……慎也、こんな大変な事ずーっとしてたんだなぁ」
「今さらだろ。それに、趣味の一つだから特に大変とも思わないよ。疲れてる時はサボりたいけど、自分の舌に合ったもんを作るのは好きだし」
微笑んで返事をし、慎也は玉子焼きを食べて「んまいよ」とサムズアップする。
正樹は食事を進めながらも、浮かない顔だ。
その理由を話したのは、食事を終えてコーヒータイムになった時だ。
「僕さぁ、大体の事はうまくやれる自信があったんだよね。そりゃあ、料理はノータッチだったし、学生時代の家庭科は何とか誤魔化して及第点もらってた感じだった」
「……そういえば、家庭科の授業で正樹が作ったぬいぐるみ、なかなかな感じだったな……。こう、深淵の者っていう感じで」
それはそれで、ちょっと見てみたい。
「ここまで苦手になったのって、何だろう? って考えてみたら、やっぱり受験とかに大きく響かないからだね。音楽や絵画とかは校内コンクールもあるから、親も教室に通わせてくれて、そこそこいいセンいくようになったんだ」
正樹が言う〝そこそこいいセン〟は、一般人から見ればかなりのものなんだろう。
「結構大きい賞を取ったりしてたよな」
慎也が相槌を打ったけれど、正樹は受賞とかに興味はないようだった。
「僕、ある程度の事は八割以上できちゃうんだよね。だから達成感がなくて、賞とかもらうくせに喜ばないから、友達には嫌われてた。本当に才能のある人に負けたら、『ああ、あの人凄いなぁ、本物だ』って思って対抗意識も燃やさない」
正樹の言葉に、慎也も同意する。
「俺も概ね同じ感じだったかな」
「お前らに私が描いた、父の日母の日の絵、友達の肖像画を見せてやりたい……」
私はボソッと呟く。
そりゃあもう、私の小学生の時の絵は、何でか知らないけど鼻の穴にフォーカスしていて、友達にも先生にも家族にも、鼻の穴について突っ込まれていた。
ついでにあの、鼻の下の人中もくっきりで、どんだけ鼻が好きなのかと今になってもネタにされる。
「まぁ、それはともかく、〝持てる者〟の悩みは二人を見てたら大体分かるよ」
脱線したのを元に戻すと、正樹が物憂げに溜め息をつく。
「僕、今まで〝できない事〟で悩んだ事なかったんだけどなぁ。『できないならいいや』って切り捨てて、長所をどんどん伸ばしてたし」
そしてチラッと慎也を見て、恥ずかしそうに言う。
「今日、改めて僕は慎也より劣ってるって痛感したよ。驕ってた訳じゃないけど、自分がここまで使えない男だと思わなかった」
慎也は困った様に苦笑いし、首を傾げる。
「人間だから、苦手な事ぐらいあってもいいだろ。使えないなんて言うなよ」
「んー、でも、何かやだ」
正樹は珍しく子供っぽく不機嫌な表情を見せている。
唇を引き結んで少し悩んだあと、溜め息混じりに言った。
「慎也と二人して優美ちゃんの夫になるのに、家事の中でも大切な料理が壊滅的っていうのが、いかにヤバくて不利なのか思い知った」
私は思わず笑う。
「料理が苦手なんて今さらじゃん。それで嫌いになるとかあり得ないからね? 慎也と張り合う必要もないし、悔しいって思うなら、さっきも言ったけど少しずつ練習すればいいでしょ」
ポンポンと彼の肩を叩いても、珍しく機嫌を直さない。
「……子供ができてさぁ、『パパって使えない』って言われたらショックで寝込むかも……。慎也も優美ちゃんも出かけてる時、子供たちに栄養のある物を食べさせられなくて、ひもじい思いをさせたら……」
「ちょ、ま、ま!」
あまりに考えが飛躍して、私はストップをかける。
「正樹が!? まだ起こってもいない事で悩んでる!?」
「……あ、突っ込むところそこなの?」
やはりいつもと比べて正樹の反応が薄い。
こりゃあ、真剣に悩んでるな……。
「正樹、まず落ち着いて。私のおっぱいでも触りなさい」
とりあえず、と思って私は正樹の手を掴み、ぱふんと胸を包ませる。
あっけに取られた彼は、条件反射でもみもみと手を動かした。
ちなみに休日は胸をなるべく休ませたいと思っていて、総レースのノンパッドのブラをつけている。
なので普段のガチッとした補正力がなく、生乳に近い揉み心地だ。
「……気持ちいい……」
「正樹、ずるい」
背中側から慎也の恨めしそうな声が聞こえる。
「ほら、赤ちゃんも柔らかい物を握ると安心するって言うでしょ? おっぱいセラピーって効果あるんじゃないかな? と思って」
ついでなので慎也の手も握り、反対側の胸を揉ませる。
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