304 / 539
正樹と料理 編
正樹のヒヤヒヤクッキング
しおりを挟む
「手は軽く開いた状態ね。あちこち混ぜなくていいから、一定方向にシャカシャカまぜて、白く濁ったお水を捨てる。これを二回ぐらい繰り返して」
「オッケ」
慎也はキッチン用のスツールに腰掛け、私たちを見守っている。
「あんまり力を込めると、お米が割れちゃうからNGね。指を立てて優しく」
正樹から離れて様子を見ていると、コツを掴んだらできるらしく、言われた通りにお米を研ぎ終えた。
「じゃあ、炊飯器のお釜に移して、今は二合だから二のラインまでお水を入れて。最初はドバッと入らないように、計量カップを使うといいかも」
「うん」
正樹はウォーターサーバーと流しとを行き来し、言われた通りに水を入れる。
「そのあと三十分、お米をお水の中でねんねさせます」
「ねんね?」
「お水をたっぷり吸わせるの。冬場だとお水が冷たいから一時間って言われてるかな。そうしたら、もちもちツヤツヤお米になります。OK?」
「了解! これは多分覚えた!」
正樹がどや顔をするので、私はおかしくなってクスクス笑ってしまった。
いつも美味しいコーヒーを淹れてくれてるけど、お米係も兼任してくれてもいいな。
そのあと、三十分経つまで三人でラジオ体操をして、スクワットや床の上でできる運動をした。
いい感じに体が温まったあと、私と正樹は手を洗ってキッチンに戻り、炊飯器のスイッチを入れた。
「じゃあ、焼き魚です。冷蔵庫のお魚が入ってる場所はここ」
冷蔵庫を開け、私は正樹に魚コーナーを見せる。
「今日はもとから塩味のついている塩鮭ね。鮭は全部塩味ついてる訳じゃないから、パックを見て塩って書いてあるかチェック。他は、西京漬けとか外側に色々ついてる切り身もあるし、秋になったらサンマの塩焼きは自分でちょちょいと塩を振って下処理するとか、色々あるけれど、今はグリルの使い方から」
「ラジャ」
大きな鮭の切り身をパックから取り出し、調理バットの上にのせる。
「このまま焼いても間違いじゃないけど、切り身は加工されてから時間が経ってるので、ドリップと呼ばれるものが出てます。まぁ、ぶっちゃけ、出ちゃった体液」
身も蓋もない言い方に、向こうで慎也が「ぶふぉっ」と噴き出した。
「時間が経つごとに出ちゃうもんだけど、買って来たばっかりでも多少出てるので、キッチンペーパーとかで綺麗綺麗します」
私はペーパーを正樹に渡し、一切れは自分で実際にやってお手本を示す。
見よう見まねで、正樹も魚を綺麗に拭き取った。
「で、これは裏技で、魚でも肉でもそうなんだけど、お酒をちょっと掛けておくと身が柔らかくなります」
私は正樹に大さじと小さじの概念を説明し、小さじ一を塩鮭に馴染ませるミッションを頼む。
手が少し震えているのが初々しい。
その間に、冷蔵庫から玉子焼き用の卵を出し、味噌汁の具も出しておく。
「お魚は焼きたてで食べたいから、ご飯が炊き上がる時間を逆算しないとです。高速炊きだと、大体三十分ちょいぐらいで炊けるから、今はグリルにセットしておくだけ。タイマーを二十分にセットしておいて、鳴ったらグリル点火ね」
「分かった。結構頭使うね?」
「そうそう。甘く見られないんだよ。一品ずつ、かかる時間を計算して同時進行していかないとなの。よし、じゃあお味噌汁作ろっか。今日は豆腐とワカメとお葱のお味噌汁です」
いよいよ切り作業になり、向こう側で慎也が不安そうな顔をしている。
「ワカメは塩ワカメと、生ワカメがあります。生ワカメはそのまま切ればOK。今日は塩ワカメ」
「なんで塩味ついてるの?」
正樹が素朴な疑問をぶつけてくる。
「保存だよ。ベーコンもハムも、お肉をしょっぱくして保存してるでしょ」
「あっ、なる……」
「でも塩ワカメは真水で戻してからじゃないと、しょっぱくて食べられないからね」
そして私は正樹に「どれだけ使うでしょうか」ゲームをし、適正な量を教える。
「これ、三倍に増えんの!?」
「そう。だから袋一杯使ったら、鍋がワカメで圧死する。OK?」
「OK」
正樹は両手を広げ、三倍になった時のイメージを膨らませている。
「で、ボウルにお水を入れて、この中で五分ぐらい放置。塩で水気を吸われてるから、お水をあげてふやかすの。途中で二、三回ぐらいお水を替えて、塩分を薄めてあげる」
「分かった」
正樹はボウルの中でワカメをちゃぷちゃぷさせ、「大きくなれよ」と声を掛けた。
「よし! じゃあお葱切ってみようか!」
「イエーイ!」
急に正樹がハイテンションになり、スラリと三徳包丁を抜く。
本日のハイライトだ。
慎也は目元と口元をヒクヒクさせている。それほどか。
「とりあえず、葱のお尻の部分を……まぁー、十五センチぐらい切ってみようか」
「分かった!」
正樹は長葱をまな板の上に置き、右手を振り上げた。
「オッケ」
慎也はキッチン用のスツールに腰掛け、私たちを見守っている。
「あんまり力を込めると、お米が割れちゃうからNGね。指を立てて優しく」
正樹から離れて様子を見ていると、コツを掴んだらできるらしく、言われた通りにお米を研ぎ終えた。
「じゃあ、炊飯器のお釜に移して、今は二合だから二のラインまでお水を入れて。最初はドバッと入らないように、計量カップを使うといいかも」
「うん」
正樹はウォーターサーバーと流しとを行き来し、言われた通りに水を入れる。
「そのあと三十分、お米をお水の中でねんねさせます」
「ねんね?」
「お水をたっぷり吸わせるの。冬場だとお水が冷たいから一時間って言われてるかな。そうしたら、もちもちツヤツヤお米になります。OK?」
「了解! これは多分覚えた!」
正樹がどや顔をするので、私はおかしくなってクスクス笑ってしまった。
いつも美味しいコーヒーを淹れてくれてるけど、お米係も兼任してくれてもいいな。
そのあと、三十分経つまで三人でラジオ体操をして、スクワットや床の上でできる運動をした。
いい感じに体が温まったあと、私と正樹は手を洗ってキッチンに戻り、炊飯器のスイッチを入れた。
「じゃあ、焼き魚です。冷蔵庫のお魚が入ってる場所はここ」
冷蔵庫を開け、私は正樹に魚コーナーを見せる。
「今日はもとから塩味のついている塩鮭ね。鮭は全部塩味ついてる訳じゃないから、パックを見て塩って書いてあるかチェック。他は、西京漬けとか外側に色々ついてる切り身もあるし、秋になったらサンマの塩焼きは自分でちょちょいと塩を振って下処理するとか、色々あるけれど、今はグリルの使い方から」
「ラジャ」
大きな鮭の切り身をパックから取り出し、調理バットの上にのせる。
「このまま焼いても間違いじゃないけど、切り身は加工されてから時間が経ってるので、ドリップと呼ばれるものが出てます。まぁ、ぶっちゃけ、出ちゃった体液」
身も蓋もない言い方に、向こうで慎也が「ぶふぉっ」と噴き出した。
「時間が経つごとに出ちゃうもんだけど、買って来たばっかりでも多少出てるので、キッチンペーパーとかで綺麗綺麗します」
私はペーパーを正樹に渡し、一切れは自分で実際にやってお手本を示す。
見よう見まねで、正樹も魚を綺麗に拭き取った。
「で、これは裏技で、魚でも肉でもそうなんだけど、お酒をちょっと掛けておくと身が柔らかくなります」
私は正樹に大さじと小さじの概念を説明し、小さじ一を塩鮭に馴染ませるミッションを頼む。
手が少し震えているのが初々しい。
その間に、冷蔵庫から玉子焼き用の卵を出し、味噌汁の具も出しておく。
「お魚は焼きたてで食べたいから、ご飯が炊き上がる時間を逆算しないとです。高速炊きだと、大体三十分ちょいぐらいで炊けるから、今はグリルにセットしておくだけ。タイマーを二十分にセットしておいて、鳴ったらグリル点火ね」
「分かった。結構頭使うね?」
「そうそう。甘く見られないんだよ。一品ずつ、かかる時間を計算して同時進行していかないとなの。よし、じゃあお味噌汁作ろっか。今日は豆腐とワカメとお葱のお味噌汁です」
いよいよ切り作業になり、向こう側で慎也が不安そうな顔をしている。
「ワカメは塩ワカメと、生ワカメがあります。生ワカメはそのまま切ればOK。今日は塩ワカメ」
「なんで塩味ついてるの?」
正樹が素朴な疑問をぶつけてくる。
「保存だよ。ベーコンもハムも、お肉をしょっぱくして保存してるでしょ」
「あっ、なる……」
「でも塩ワカメは真水で戻してからじゃないと、しょっぱくて食べられないからね」
そして私は正樹に「どれだけ使うでしょうか」ゲームをし、適正な量を教える。
「これ、三倍に増えんの!?」
「そう。だから袋一杯使ったら、鍋がワカメで圧死する。OK?」
「OK」
正樹は両手を広げ、三倍になった時のイメージを膨らませている。
「で、ボウルにお水を入れて、この中で五分ぐらい放置。塩で水気を吸われてるから、お水をあげてふやかすの。途中で二、三回ぐらいお水を替えて、塩分を薄めてあげる」
「分かった」
正樹はボウルの中でワカメをちゃぷちゃぷさせ、「大きくなれよ」と声を掛けた。
「よし! じゃあお葱切ってみようか!」
「イエーイ!」
急に正樹がハイテンションになり、スラリと三徳包丁を抜く。
本日のハイライトだ。
慎也は目元と口元をヒクヒクさせている。それほどか。
「とりあえず、葱のお尻の部分を……まぁー、十五センチぐらい切ってみようか」
「分かった!」
正樹は長葱をまな板の上に置き、右手を振り上げた。
10
お気に入りに追加
1,852
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる