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正樹と料理 編

三人を認める食事会

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「まぁ、ちょっとずつやってみようよ。まずは次の週末にでも、クッキングタイム作ろ」

「分かった。ふっふー、僕の眠っていたエプロンの封印を解かれる時が来た……」

「なにそれ。胸元に凄い怖い顔でも描いてありそう」

「何なら、エプロン越しに僕の乳首当ててもいいよ」

「アホか!」

 恥じらいながら言うので、思わず突っ込みを入れてまた三人で笑った。





 それから一週間は、正樹のファーストクッキングに何がいいかな、と考えながらゆっくり過ごした。

 会社はもう行かなくていいし、結婚式の準備も着々と進んでいる。

 慎也を夫としての顔合わせの食事会は、婚約指輪をお店に決めに行った辺りで済ませていた。
 けれど先日の事を受け、お母さんから「正樹さんも含めてもう一度食事会をできない?」と言われた。

 土曜日に食事会をして、日曜日に正樹のファーストクッキングの予定だ。

 働かないで悠々自適に過ごすのって、とても罪悪観があるんだけど、「今は休み時!」と自分に言い聞かせた。

 いずれ子供ができたら、育児だ。
 出産も、慎也の子供を一人産めばいい訳ではなく、正樹の子供も平等に、だ。
 最終的に何人……という話はしていないけれど、どちらかの子供を多く……だと、不平等とかになるのかな。

 二人は「子供を産んでくれただけで十分」って言ってくれるだろうし、私の体に負担を掛けないのが一番と言ってくれるはず。
 そして、折原家も久賀城家の家族も、無駄に「子供を産め」と言う人たちじゃない。

 頑張って四人かな……と思うけど、周りには「その気がなかったのにできちゃった」っていう人もいるし、本当に子供はタイミングだと思う。

 うん、あまり深く考えないようにしよう。

 とにかく、いずれ来る子育てに備えて、今は人生の休暇中だ。

 平日は文香と会って、結婚式の予定についてあれこれ相談に乗ってもらう。

 これまでに決定した物についても、彼女に意見をもらって滅茶苦茶センスのいい引き出物など紹介してもらった。

 文香がフレンドハネムーンと言ってたのは割と本気みたいで、私たちが新婚旅行から帰って落ち着いた頃、自由な時間を利用して長期旅行に行こうと誘われていた。

 多分、二人は「いいよ」って言ってくれそうだけど……、うーん。

 今までモリモリ働いてたから、やっぱり「いいのかなぁ~?」とも思ってしまう。
 まぁ、周りが許してくれるなら、今は甘えておこう。

 あとになってから私しかできない事で、どんどんお返しをしていけたらいい。……のかな。





 そんなこんなで、食事会当日となった。

 翌日はゆっくり休めるよう、土曜日のランチになり、場所は東京駅近くにある個室懐石だ。

「こんにちは。玲奈さん」

「こんにちは、恵美さん」

 母親同士がにこやかに挨拶をして、お祖母ちゃんも隣でニコニコしている。
 相変わらず可愛い未望ちゃんに、健はデレデレしていた。

 どことなく久賀城家の皆さんは、表情が固く緊張しているように思えた。
 やっぱり、息子が二人とも……となると、ばつが悪いんだろう。

 それでも、うちの家族は久賀城家に対して「分かっていながら黙っていたなんて……」とか言わないと信じている。
 私も、その辺りは念を押した。
 お母さんもお祖母ちゃんも「分かってる」と言ってくれ、今日の食事会については、問題ない……と思いたいけど。

 やがて席に全員が座り、飲み物をオーダーした。

 さて……、というタイミングで、玲奈さんが頭を下げた。

「このたびは、誠に申し訳ございません」

 謝罪を受け、全員が微かに身を強ばらせる。

「私たち家族は、先に息子たちと優美さんから、三人で結婚生活を送っていくという報告を聞いていました。その当時は折原さんのご家族には伏せておくという話でしたので、私たちもついそれに合わせて黙ってしまいました」

 着物姿の麗美さんは、もう一度頭を下げる。
 そのスラリとした座り姿には、覚悟が備わっているように見えた。

「いくら愛し合っているからとはいえ、よそさまの大切なお嬢さんを、息子たちが普通とは異なる愛し方をする事について、気が引ける思いをしていたのも事実です。今は三人が選んだ道を全力で応援したいと思っています」

 母親ばかり謝らせるのはいけないと思ったのか、正樹が玲奈さんの前に手をかざし、口を開く前に会釈をする。

「すべては、僕が人間として未熟で至らないところに原因があります。本来なら慎也と優美さんの二人で幸せになるところ、僕が挟まってしまった事により、事態がややこしくなってしまいました」

 隣に座っているお母さんが、微かに息を吸い何か言いかける。
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