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折原家への挨拶 編

二人と真剣に付き合ってるの

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 お祖母ちゃん、認めてくれたのはありがたいけど、パスが大雑把だ。

 とりあえず沈黙が怖いので、私は時間を稼ぐために正樹を紹介する事にした。

「えっと、……正樹は慎也より四つ上で、今は久賀城ホールディングスの副社長さんをしてるの」

「優美は慎也さんとお泊まりしたのよね? 何で正樹さんも一緒にいるの? はい、お茶どうぞ」

 正樹にお茶を出しながら、お母さんが鋭い一発を入れてきた。

 ……私のライフはもうゼロよ!

 心の中で涙を流してボケつつ、私は必死に言い訳を考える。

 …………いや、そうじゃない。

〝言い訳〟しちゃいけないんだ。

 隠したら駄目だってお祖母ちゃんが思ったから、正樹はここに連れてこられた。
 怒られるのを覚悟して、きちんと言わなきゃ。

 私は深呼吸をして、肩に入っていた余計な力を抜く。

 そのタイミングで、向かいに座っていた二人と目が合った。

 二人は相当困っている顔をしていたけれど、私の表情を見た途端、彼らの顔つきが変わる。

「お義母さん。一つ謝らなければいけない事があります」

 私から言おうと思っていたのに、先に口を開いたのは慎也だった。

「……なに?」

 謝らなければいけない事、と言われても、お母さんは不安そうな表情を見せなかった。
 だからなのか、お祖父ちゃんとお父さんも動揺を見せない。

 皆、私が初めての朝帰りをした日に、正樹が現れた事で何かしらの予感は抱いていたのかもしれない。

 慎也は真剣な表情でソファから下り、床の上に正座をする。
 同じタイミングで正樹も同様にした。
 私も、二人を見てすぐに床に正座する。

「何なの」

 三人していきなり正座なので、お母さんは面食らっている。

 慎也はチラッと確認するように私を見たあと、口を開いた。

「俺は真剣に優美さんと将来を考え、彼女を愛しています。それは変えようのない事実だと誓います」

 最初に、彼が前置きをする。
 慎也だけに荷物を持たせられないと、私も口を開く。

「あのね、私……、二人と真剣に付き合ってるの」

 思い切って告げたあと、私はギュッと目を閉じた。
 そして、早口に続ける。

「途中から正樹に目移りしたとか、そんなんじゃないの。最初から三人で付き合ってた。でも、正樹は前に離婚していとか事情があって、正式な相手じゃなくていいって言った。でも、結婚するから慎也のほうが大切とかじゃなくて、私は二人を平等に愛するって決めてる」

 言ってから俯くと、正樹が口を開く。
 彼の声は、とても穏やかで落ち着いていた。

「もしお叱りを受けるのなら、僕だけにお願いします。本来なら優美さんと会社の後輩だった慎也が、普通に幸せになるはずでした。僕がいたから二人は気を遣ってくれたんです。僕は優美さんを愛していますし、弟も大事です。こんな状態なら結婚させられないとお思いなら、僕がいなくなれば一番スムーズにいくと思っています」

「正樹!」

 この期に及んで、自分さえいなければと考えている正樹を、私は一喝する。

 けれど彼は真剣な表情で、一歩も引かないという雰囲気を発していた。

「とりあえず、三人とも座りなさい」

 黙っていたお父さんが口を開き、三人ともハッとして少し戸惑う。

「そのまま正座してたら、土下座でもするんでしょう? 自分の娘と婿さんになる人に、そんな事されたくないわよ。いいから普通に座りなさい」

 お母さんに言われ、私はおずおずとソファに座り直す。
 二人も、頭を下げてから座り直した。

「三人で付き合っているって……、ええと……、〝そういう事〟も三人で? 今日の朝帰りはそういう事?」

 きっつ……。
 親にこういう事聞かれるの、きっつ……。

 泣きたくなりながら、私はコクンと頷く。

 お母さんは溜め息をついたあと、現実的な質問をしてきた。

「避妊とかきちんとしてるの? 体に負担が掛かる事はしてない?」

 そして、まともに心配されて余計に居たたまれなくなった。

「そういうのはちゃんとしてる。……慎也と結婚するつもりだから、最初の子供は慎也との間に作るつもり。三人で色々決めているし、二人は凄くしっかりしてる。……こういう事をしておきながらなんだけど、三人とも真剣なの」

 またお母さんは溜め息をつき、沈黙が落ちる。
 その時、お祖母ちゃんが助け船を出してくれた。

「三人とも、結婚しようと思うぐらい大人よ? 何が良くて悪い事か分かっている。それに優美がちゃんとした子だっていう事は、私たちが一番分かっているでしょう? 私は、優美が選んだ人と幸せになる人生を応援するわ」

「そうね……」

 お母さんが頷く。
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