279 / 539
同窓会 編
しんどくなったら甘やかしてほしい
しおりを挟む
ベッドの上で胡座をかいたまま、さらに念入りに上半身のストレッチをし始めた。
「優美、気持ちは落ち着いた?」
慎也に尋ねられ、苦笑いする。
さっきの独り言、聞かれてたの恥ずかしいな……。
「お陰様で」
「なら良かった」
慎也も私の頭をよしよしと撫で、ついでに額にキスをしてきた。
「……ここで俺が、優美のクラスメイトを悪く言うのは、また別なんだろうな」
溜め息混じりに彼が言う。
「かもね。悪く言ってもらって、一緒に不満をシェアできたらスッキリすると思う。けど、二人は私と話が弾むからこそ、不満が相乗効果で大きくなるのが怖い」
「確かに、そうだな」
本当に、気持ちはありがたい。
文香にも何かあると聞いてもらってるし、お互い「悪くないよ」と言い合って最後は満足してる。
けれど、話が合うこその弊害もある。
「分かるー!」ってなるから、恨み辛みが倍増して燃え上がっていく。
本当なら一人で抱えて、ある程度落ち着かせる事ができるものなのに、人と不満を共有すると、どんどん調子づいてしまう。
本来〝三〟ぐらいだった不満が、気がつけば〝七〟にも〝八〟にも膨れ上がる。
「この人は私の気持ちを分かってくれる」という信頼感から、愚痴を話すと気持ちいい。
けれどその気持ちよさに甘えて愚痴を膨らませれば、私も佐藤さんたちと似たような存在になるだろう。
どれだけこちらに正義があっても、やりすぎはよくない。
だから、自分の中で「ここまで」と決めたあとは、自分自身の傷として抱えたいと思っている。
その塩梅が、難しいんだけどね……。
なので私はこう提案した。
「あのね、しんどくなったら甘やかしてほしい」
「ん、どんだけでも」
「ネガティブはあんまり吐きすぎると無限ループになって心身共に良くないから、つらくなった時は、ひたすら褒めて甘やかしてほしい」
「僕にも任せて! 慎也と二人で、ダブル効果で思いっきり甘やかしてあげるから」
「ありがと! モヤモヤすると思うけど、ぎゅーってしてもらって、甘やかしてもらったらきっとすぐ治るから、あとは心配しないで」
そう言って、私はニカッと笑った。
ありがたいなぁ。
こういう風に褒めてくれる二人や文香、和人くんがいる私は果報者だ。
いなくても、自分にご褒美とかして、自分の機嫌ぐらい自分でとれる。
けどそれに〝人〟がプラスされると、最強の効果があるんだろう。
「優美ちゃん、腹減ってない?」
「ん? んー、言われてみれば」
同窓会は皆で料理をつつく感じだったので、一人分をしっかり食べた感じではない。
「せっかくだから、ラブホ飯食べてからチェックアウトしようか」
「あ、いいね」
「まだ早朝だし、二度寝しないなら露天風呂楽しむのもアリだな」
「だね。朝から露天風呂は、贅沢な気持ちになれるから嬉しい」
そのあと、三人で露天風呂に入ってじっくり語り合ったあと、フードメニューを広げた。
さすが二十四時間対応で、色んなメニューがあって美味しそうだ。
朝でなかったら冒涜的にぶ厚い牛タンとか、ステーキとか頼んじゃってたかもしれない。
……いや、いつもとてもいいお肉を食べさせてもらってるんだけど、場所が変わると何でも美味しそうに見えるというか。
結局、正樹は焼き魚セット、慎也はなめろう丼セット、私は雑炊にした。
本当は高級食パンを使った洋風セットや、パンケーキセットとかも気になったけれど、なるべくヘルシーに……。
二人と暮らすようになって沢山美味しい物を食べるようになったので、今さら感はあるけれど……。
そしてチェックアウト後、私は正樹が運転する車で実家に向かう事になった。
「やっば……。すっごい罪悪感……」
「いいじゃん。恋人がいるなら、ほとんどの人が通る道だよ」
時刻は午前十時を過ぎていて、勿論家族は起きている。
「だって小っ恥ずかしいんだもん~~」
「ラブホ二回目だろ?」
「お泊まりは初めてだよ」
「……そうか。初めてか……」
慎也がニヤニヤしだす。
「いや、それは置いておいて。昨晩も言ったけど俺がきちんと説明するよ。婚約者とラブホ行くのは、普通の事だろ?」
「ん……うん……」
決まり悪く頷くと、運転席から正樹が明るく言う。
「優美、気持ちは落ち着いた?」
慎也に尋ねられ、苦笑いする。
さっきの独り言、聞かれてたの恥ずかしいな……。
「お陰様で」
「なら良かった」
慎也も私の頭をよしよしと撫で、ついでに額にキスをしてきた。
「……ここで俺が、優美のクラスメイトを悪く言うのは、また別なんだろうな」
溜め息混じりに彼が言う。
「かもね。悪く言ってもらって、一緒に不満をシェアできたらスッキリすると思う。けど、二人は私と話が弾むからこそ、不満が相乗効果で大きくなるのが怖い」
「確かに、そうだな」
本当に、気持ちはありがたい。
文香にも何かあると聞いてもらってるし、お互い「悪くないよ」と言い合って最後は満足してる。
けれど、話が合うこその弊害もある。
「分かるー!」ってなるから、恨み辛みが倍増して燃え上がっていく。
本当なら一人で抱えて、ある程度落ち着かせる事ができるものなのに、人と不満を共有すると、どんどん調子づいてしまう。
本来〝三〟ぐらいだった不満が、気がつけば〝七〟にも〝八〟にも膨れ上がる。
「この人は私の気持ちを分かってくれる」という信頼感から、愚痴を話すと気持ちいい。
けれどその気持ちよさに甘えて愚痴を膨らませれば、私も佐藤さんたちと似たような存在になるだろう。
どれだけこちらに正義があっても、やりすぎはよくない。
だから、自分の中で「ここまで」と決めたあとは、自分自身の傷として抱えたいと思っている。
その塩梅が、難しいんだけどね……。
なので私はこう提案した。
「あのね、しんどくなったら甘やかしてほしい」
「ん、どんだけでも」
「ネガティブはあんまり吐きすぎると無限ループになって心身共に良くないから、つらくなった時は、ひたすら褒めて甘やかしてほしい」
「僕にも任せて! 慎也と二人で、ダブル効果で思いっきり甘やかしてあげるから」
「ありがと! モヤモヤすると思うけど、ぎゅーってしてもらって、甘やかしてもらったらきっとすぐ治るから、あとは心配しないで」
そう言って、私はニカッと笑った。
ありがたいなぁ。
こういう風に褒めてくれる二人や文香、和人くんがいる私は果報者だ。
いなくても、自分にご褒美とかして、自分の機嫌ぐらい自分でとれる。
けどそれに〝人〟がプラスされると、最強の効果があるんだろう。
「優美ちゃん、腹減ってない?」
「ん? んー、言われてみれば」
同窓会は皆で料理をつつく感じだったので、一人分をしっかり食べた感じではない。
「せっかくだから、ラブホ飯食べてからチェックアウトしようか」
「あ、いいね」
「まだ早朝だし、二度寝しないなら露天風呂楽しむのもアリだな」
「だね。朝から露天風呂は、贅沢な気持ちになれるから嬉しい」
そのあと、三人で露天風呂に入ってじっくり語り合ったあと、フードメニューを広げた。
さすが二十四時間対応で、色んなメニューがあって美味しそうだ。
朝でなかったら冒涜的にぶ厚い牛タンとか、ステーキとか頼んじゃってたかもしれない。
……いや、いつもとてもいいお肉を食べさせてもらってるんだけど、場所が変わると何でも美味しそうに見えるというか。
結局、正樹は焼き魚セット、慎也はなめろう丼セット、私は雑炊にした。
本当は高級食パンを使った洋風セットや、パンケーキセットとかも気になったけれど、なるべくヘルシーに……。
二人と暮らすようになって沢山美味しい物を食べるようになったので、今さら感はあるけれど……。
そしてチェックアウト後、私は正樹が運転する車で実家に向かう事になった。
「やっば……。すっごい罪悪感……」
「いいじゃん。恋人がいるなら、ほとんどの人が通る道だよ」
時刻は午前十時を過ぎていて、勿論家族は起きている。
「だって小っ恥ずかしいんだもん~~」
「ラブホ二回目だろ?」
「お泊まりは初めてだよ」
「……そうか。初めてか……」
慎也がニヤニヤしだす。
「いや、それは置いておいて。昨晩も言ったけど俺がきちんと説明するよ。婚約者とラブホ行くのは、普通の事だろ?」
「ん……うん……」
決まり悪く頷くと、運転席から正樹が明るく言う。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,767
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる