256 / 539
送別会 編
好きです!
しおりを挟む
特定の有名人が好きとか、ファンクラブに入っている人は、他人事でも一大事なんだと思う。
ファンってのはその人を推してエネルギーをもらっている人だから、推しに何かあったら落ち込むのは分かる。
けど、ファンじゃない人がゴシップを聞いて、分かったような口を利くのは「暇だなー」と思ってしまう。
噂話が好きな人って、面白おかしく話を膨らませて、そこに自分たちの意見をのせて、さもいい事、凄い事を言っている気持ちになる。
インスタントな感覚で共感して、自分たちの正しさを確認し合い、簡単に気持ちよくなる。
私はそういうの、まったく興味ないから、根本的に彼女たちと合わないんだろう。
〝他人〟にばかり興味がありすぎる人は、自分を磨く時間を損している、というのが私の持論だ。
そうやって他人の話で盛り上がっている限り、自分が話題の中心人物にならないのを分かっていない。
彼らはネットやテレビ、聞いた話を、何番煎じになるか分からないまでしゃべり倒す。
味のなくなったお茶でお喋りできるのはある意味凄いと思うけど、結局はいつまでもテレビを見て感想を言う脇役のままだ。
私なら、自分が体験した事を話題にしていきたい。
そして慎也や正樹、文香たちみたいに、直接関わる人の話だけを聞く。
文香の知り合いとか二次的な存在には、直接会う機会がない限り興味がない。
文香が何か迷惑を被っているとかなら、話は聞くけどね。
彼女の友達の友達になると、文香はまったく関わっていない訳だから、単なる噂話になる。
だから「それって意味あるの?」と思ってしまう。
まず彼女はそんな話をしないから、例に挙げるだけ「すまん」なんだけど。
あっという間に終わる人生を〝自分〟中心に生きていかないと、〝他人〟ばかり気に掛けて過ごしてしまう。
それはあまりに勿体ない。
彼女たちが、それにいつか気づければいいけど。
……とは思うものの、あとは知らん。
五十嵐さんは特例だけど、私は見るもの全部救うほど心が広くない。
そんな一悶着はあったものの、二時間の飲み放題を終えて私は帰ろうとしていた。
――と。
「折原さん」
「はい?」
ビルから外に出ると、二十三歳の後輩くんが私を見て真剣な顔をしている。
彼の近くにいる同僚は、ソワソワした様子でこちらを見ていた。
「俺、ずっと折原さんに憧れてました! 美人で性格良くて、それなのに男並みに仕事ができて、『敵わねぇ』って思って、それでもいつか抜かしたいって思ってました! さっきの佐藤さんへの言葉も痺れたっす!」
「ありがとう! これからも会社のために頑張って! 困ったら筋トレしろよ!」
グッとサムズアップすると、彼は「そうじゃないっす」と肩を落とす。
「好きです!」
後輩くんが、往来の真ん中で公開告白をしてきた。
あららららら……。
そんな風に思った事は一度もなかったので、お姉さんびっくりである。
「すみません! 折原さんが最近退勤後に指輪つけてるのも知ってます。だから、困らせるつもりはないんです。ただ、伝えておきたかったんです。本当に憧れてたので」
……うん。
なるほど。
「ありがとう! 気持ちはしっかり受け取った! これからも君の活躍、楽しみにしてる。いつかばったり会った時に『凄いね! 成長したね!』って言える男になって!」
「はい!」
そのあと、ビルから出て来た課長に、私は最後の挨拶をする。
「さっき、すみませんでした」
「いや、折原もずっと文句が溜まってただろうし、最後ぐらいガス抜きさせてやりたいと思った。あれぐらい言わないと、佐藤たちも気付かないだろ。本来なら俺の役目かもしれないが、すまん」
「いえ! 課長が『一言いおうか?』と言ってくださった時、私が現状維持でとお願いしたんですから、それは言いっこなしです」
「そうか? すまんな」
困った様に笑い、課長は私の頭をポンポンしてくる。
「じゃあ、課長、今までありがとうございました!」
頭を下げると、スーツを着ていても隠しきれない大胸筋の持ち主は、爽やかな笑みを浮かべた。
「お疲れさん!」
そのあと、彼は小声でポソッと呟いた。
「結婚もおめでとさん。結婚式、楽しみにしてるな」
「はい!」
遅れて出てきた部長にも挨拶をし、私は他の皆にも挨拶をして帰路についた。
いつぞやみたいに、正樹とバッタリ……なんてないだろうけど、ちょっと周りを気にしてしまう。
ファンってのはその人を推してエネルギーをもらっている人だから、推しに何かあったら落ち込むのは分かる。
けど、ファンじゃない人がゴシップを聞いて、分かったような口を利くのは「暇だなー」と思ってしまう。
噂話が好きな人って、面白おかしく話を膨らませて、そこに自分たちの意見をのせて、さもいい事、凄い事を言っている気持ちになる。
インスタントな感覚で共感して、自分たちの正しさを確認し合い、簡単に気持ちよくなる。
私はそういうの、まったく興味ないから、根本的に彼女たちと合わないんだろう。
〝他人〟にばかり興味がありすぎる人は、自分を磨く時間を損している、というのが私の持論だ。
そうやって他人の話で盛り上がっている限り、自分が話題の中心人物にならないのを分かっていない。
彼らはネットやテレビ、聞いた話を、何番煎じになるか分からないまでしゃべり倒す。
味のなくなったお茶でお喋りできるのはある意味凄いと思うけど、結局はいつまでもテレビを見て感想を言う脇役のままだ。
私なら、自分が体験した事を話題にしていきたい。
そして慎也や正樹、文香たちみたいに、直接関わる人の話だけを聞く。
文香の知り合いとか二次的な存在には、直接会う機会がない限り興味がない。
文香が何か迷惑を被っているとかなら、話は聞くけどね。
彼女の友達の友達になると、文香はまったく関わっていない訳だから、単なる噂話になる。
だから「それって意味あるの?」と思ってしまう。
まず彼女はそんな話をしないから、例に挙げるだけ「すまん」なんだけど。
あっという間に終わる人生を〝自分〟中心に生きていかないと、〝他人〟ばかり気に掛けて過ごしてしまう。
それはあまりに勿体ない。
彼女たちが、それにいつか気づければいいけど。
……とは思うものの、あとは知らん。
五十嵐さんは特例だけど、私は見るもの全部救うほど心が広くない。
そんな一悶着はあったものの、二時間の飲み放題を終えて私は帰ろうとしていた。
――と。
「折原さん」
「はい?」
ビルから外に出ると、二十三歳の後輩くんが私を見て真剣な顔をしている。
彼の近くにいる同僚は、ソワソワした様子でこちらを見ていた。
「俺、ずっと折原さんに憧れてました! 美人で性格良くて、それなのに男並みに仕事ができて、『敵わねぇ』って思って、それでもいつか抜かしたいって思ってました! さっきの佐藤さんへの言葉も痺れたっす!」
「ありがとう! これからも会社のために頑張って! 困ったら筋トレしろよ!」
グッとサムズアップすると、彼は「そうじゃないっす」と肩を落とす。
「好きです!」
後輩くんが、往来の真ん中で公開告白をしてきた。
あららららら……。
そんな風に思った事は一度もなかったので、お姉さんびっくりである。
「すみません! 折原さんが最近退勤後に指輪つけてるのも知ってます。だから、困らせるつもりはないんです。ただ、伝えておきたかったんです。本当に憧れてたので」
……うん。
なるほど。
「ありがとう! 気持ちはしっかり受け取った! これからも君の活躍、楽しみにしてる。いつかばったり会った時に『凄いね! 成長したね!』って言える男になって!」
「はい!」
そのあと、ビルから出て来た課長に、私は最後の挨拶をする。
「さっき、すみませんでした」
「いや、折原もずっと文句が溜まってただろうし、最後ぐらいガス抜きさせてやりたいと思った。あれぐらい言わないと、佐藤たちも気付かないだろ。本来なら俺の役目かもしれないが、すまん」
「いえ! 課長が『一言いおうか?』と言ってくださった時、私が現状維持でとお願いしたんですから、それは言いっこなしです」
「そうか? すまんな」
困った様に笑い、課長は私の頭をポンポンしてくる。
「じゃあ、課長、今までありがとうございました!」
頭を下げると、スーツを着ていても隠しきれない大胸筋の持ち主は、爽やかな笑みを浮かべた。
「お疲れさん!」
そのあと、彼は小声でポソッと呟いた。
「結婚もおめでとさん。結婚式、楽しみにしてるな」
「はい!」
遅れて出てきた部長にも挨拶をし、私は他の皆にも挨拶をして帰路についた。
いつぞやみたいに、正樹とバッタリ……なんてないだろうけど、ちょっと周りを気にしてしまう。
10
お気に入りに追加
1,819
あなたにおすすめの小説
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
【R-18・短編】部長と私の秘め事
臣桜
恋愛
彼氏にフラれた上村朱里は、酔い潰れていた所を上司の速見尊に拾われ、家まで送られる。タクシーの中で元彼との気が進まないセックスの話などをしていると、部長が自分としてみるか?と言い……。
かなり前に企画で書いたものです。急いで一日ぐらいで書いたので、本当はもっと続きそうなのですがぶつ切りされています。いつか続きを連載版で書きたいですが……、いつになるやら。
ムーンライトノベルズ様にも転載しています。
表紙はニジジャーニーで生成しました
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
サディストの飼主さんに飼われてるマゾの日記。
風
恋愛
サディストの飼主さんに飼われてるマゾヒストのペット日記。
飼主さんが大好きです。
グロ表現、
性的表現もあります。
行為は「鬼畜系」なので苦手な人は見ないでください。
基本的に苦痛系のみですが
飼主さんとペットの関係は甘々です。
マゾ目線Only。
フィクションです。
※ノンフィクションの方にアップしてたけど、混乱させそうなので別にしました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる